街ですと!
村長さん宅のリビングの椅子に座る。
いつかの、お茶が出てきた。 ルキアは初めてのようでおっかなびっくり飲んでいたのが面白かった。
「おぬしら、街に行かんか?」
村長さんが切り出した。
「街とは?」
「この村から南に3日ほど行ったところに街がある。 おぬしらもここにきて1ヶ月、こんな辺鄙な村に長々と縛りつける道理はない。 おぬしらはこの世界がどういうものなのかを知る必要がある。 ただ、これはおぬしらを追い出すためではない。 いつでも好きなときに、好きなだけ戻ってくればいい。」
「なぜ、今日この話を?」
「昔、この村に住んでいて街に出て行ったやつから30年ぶりくらいに手紙が来ての。 町でギルドマスターをやっているらしい。名前はバンじゃ、手紙も書いておこう。」
この際、どうやって手紙が届いたのかは聞かないようにしよう・・・・ そう、ここはファンタジーな世界なんだ、ファンタジー、ファンタジー、ファンタ。
ファンタグレープ飲みたい・・・
「モリト、どうしたの?」
ルキアが覗き込んで聞いてくる。
ご、ごめんよちょっと考え事をしてたんだよ。
「どうするルキア? 行ってみる? 僕は結構興味があるんだけど・・・。」
「俺はモリトが行きたいなら行く。」
「決まったようじゃな。 路銀と紹介用の手紙を準備しておこう。 出発はいつがよいかの?」
「お金持ってたんですか!?」
「若いころ、いろいろとあっての。 念の為貯めておったんじゃ。」
若いころ何やってたんだろ・・・。 でも波乱の人生だから何やっててもおかしくないけど・・・。
「出発はいつでも大丈夫です。 準備ができ次第知らせてください。」
「わかった。 まずは宴の準備じゃ。 皆につたえよ、宴の用意をせい、とな。」
「また宴ですか。」
僕は苦笑いをしながら言う。
「みな、宴は好きだからの。 それにこういう時でないと宴はできないからな。」
木原 森人 町へ行くことになりました。