ハル君が戻ってきた。
メーカーから、ハル君の修理が完了して、土曜日に、届けますという連絡が来たので、土曜日になると、朝から、工藤博士、お母さん、オサムくんは、首を長くして待っていた。すっかり、家族のようになっていたハル君が、1ヶ月間もいなかったのは、やはり寂しかったのだ。
オサム君は、金曜日から、そわそわしていた。何か、退院祝いをしてあげたいと思ったが、相談相手がいない。いつもだったら、ハル君と相談して色々できたのに、ハル君が、修理というのか、病院に入ってしまったので、すっかり、相談相手がいないのだ。
そうだ、アランに何か、聞いて見ようかなと思ったが、特に、相談されたアランには、何も、アイデアがなかった。
仕方がないので、オサム君は、幼稚園の学芸会で被ったコンピュータの帽子をかぶって、迎えることにした。
アランは、特に、お手伝いにくる予定はない。
大きな箱に入った、ハル君が、トラックから降ろされて、運んで来た宅配の人が、箱を外して、ハル君の電源を入れて、正常に動くのか、確認していた。修理担当者も付いて来て、修理の状況を簡単に工藤博士に、説明して、一連の動作を確認して、正常であること報告した。特に異常は見つからなかった。何らかの一過性のトラブルの可能性があると言った。もしかすると、地球方向から見て、火星の前を大型彗星が、横切った時に、重力波の乱れが発生し、その影響があったかもしれないと言った。しかし、天文台からも、そのことで、何か、地球に影響があったという話はなく、多分、無関係のことだ。修理担当者も説明に困って何か、原因らしいものを探して、苦し紛れに言ったに違いない。
コンピュータ技術が高度化して来て、CPUやメモリー構造が微細されるに付いて、地球に降り注ぐ宇宙線や太陽風などが、コンピュータに影響を与えるのは、事実なので、修理担当者も話も、無視できないかもしれないが、どう考えても、重力波乱れは、原因ではないと思われた。よほど、修理担当者も説明に困ったということだろう。ましては、工藤博士を相手に、説明するには、無理がありすぎた。
修理担当者は、ハル君の調整をしながら、工藤博士の家の中を、さりげなく観察していた。ハル君を異常する原因になるものがないか、ゆっくり、注意深く観察下が、特にわかった物はなかった。ハル君の足構造から、ハル君の移動範囲は、このリビング内に限られているので、もし、ハル君に異常を与えることができるのは、このリピングの中にしかないはずだが、普通のリビングに見えた。
ようやく、ハル君の顔がリビングを見回し、工藤博士やお母さん、オサム君の存在を確認して、目がパチパチと動いた。
オサム君は、飛びつかんばかりに駆け寄って、「お帰りなさい。」と言った。
ハル君は、その声に反応して「ただいま」と言った。
お母さんは、「ハル君、今日は、疲れていると思うから、ゆっくりおやすみなさい。」と言った。
オサム君が、ハル君の充電の状況を目ざとく見つけて、「そうだね、電気が満タンになったら、ゆっくり遊ぼうね」と、ちょっと、お兄さんになったような雰囲気で、物分かりの良さを発揮していた。
工藤博士は、修理担当者の持っていた書類にサインをして、「修理ありがとう、ご苦労様」と、言った。




