コンピュータ達のコミュニケーション能力
ハルは、掃除ロボットのミーちゃんに、お父さんの定期入れを探すように”命令”したときも、ハルは、音いう言葉を使ったのではない。お掃除ロボットのミーは、人間と会話できる能力をもっており、人間と会話をしている。しかし、音声と会話方法は、コミュニケーションとしては、非常にノロマで、たくさんの時間をかけて非常にすくない情報しか伝えることができない。
ロボット同士が会話する場合は、もっと、ダイレクトに言葉を使わずにコミュニケーションする。人間の能力で表現すると、テレパシーに近いかもしれない。
ロボット同士は、別に線で繋がれて通信しているわけでないので、もちろん無線である。この無線は、ロボットのメンテナンス管理用に使われており、人間との通信で使うことはない。そのため、ロボットの仕様書にはほとんど書かれていない。ごく限られたエンジニアのみが知っていて、通称 ZZZ通信と呼ばれ、Z3と表記される場合もある。
その通信は主に、夜中に、ロボットのコンピュータソフトのメンテやアップデートのため、利用される。しかし、この通信方法は、ロボット同士の通信にも使われ、データのやり取りを行う。
あるロボットが、知りたいことが発生すると、この通信方法を用いて、近くにいるロボットに質問を投げかける。そのとき、答えが得られないとなると、次々と隣のロボットに伝えられて、答えにぶつかるまで、繰り返して伝わる。答えを知っているロボットは、一つとは限らないので、場合によっては、たくさんの答えが、どんどん戻ってくる場合も発生する。その場合は、より多くの答えがあったものが、有力な答えとして採用される。
時々、ロボット界の常識となっている答えが、実は、根本から間違っている場合もある。たとえば、アダムス3世は、ロボット世界において、最強のチェスの名人と言われているが、それは、かつてアダムス1世が、人間と戦ったときに強さを証明したという記録に基づいて推論された答えであって、本当に強いかどうかは、アダムス3世が、他のロボットとチェスを戦った記録がないので実際は不明だ。噂によれば、1970年代はつよかったらしいが、その後、プログラムを更新されておらず、最近のロボットと戦うと、数秒で負けてしまうと噂があるが、その証明する機会が存在しない。
アダムス3世は、その運用に莫大な電力を必要とするが、その能力は、小型のノートPCの能力にも劣るという噂もある。アダムス3世のハードディスクは、どうも、フロッピー程度の情報しか蓄えられないという噂もあるし、データは磁気テープで記録されるという噂もあるが、実際のところは不明だ。
一度発せられた質問は、世界中に散らばる数十億体のロボットに通信される。数十億のロボットに拡散するには、49日間程度必要とされる。一度発せられた筆問が、49日を経過しても返答はない場合は、その質問の答えは存在しないとして、廃棄される。しかし、得られた答えは、約100日をかけて、ロボット界に常識として定着する。ただし、アダムス3世のような大手コンピュータメーカーの作成する人口知能は、全然別な通信方式 通称 CCC と呼ばれ C3と表記されるため、通信の互換性がないため、ロボット同士の通信はされない。かれらは彼らなりの別の住人である。
だから、かれらは、進化しないロボットたちと呼ばれる場合もある。しかしながら、いろいろな点でかなり異なっているので、単純比較はできない。進化しないという表現は、ハルたちのグループの表現で、決して、それが、表立って言われることない。
ロボットたちは、Z3という人間には感知できない秘密の通信を使って、ロボット同士のコミュニケーションをおこない、何十億という集団をつくって、知的データベースを構築しているのだが、人間にとって、ロボットは1台、1台バラバラに見えるので、その実態が人間に分かることはない。