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ミンミンがやってきた。

ゴードンは、いつものように、日の出前に、ムーミン人形をポケットにねじ込んで、散歩に出かけた。彼の散歩は、マラソンランナーのように速いので、地域の小学校では、湖の周りには、宇宙人が住んでいるとか、黒い巨人が、空中を飛んでいるとか、火の玉を見たとか、湖の中に、3m以上もする怪魚がいるとか、もしかすると、太古の恐竜が生き返ったのではないかとか、いろいろな噂が飛び交い始めて、父母たちも心配し始めて、地元の警察に調査をするようにお願いした。


警察官が、開店の準備をしているレストランに入ってきて、「最近、不思議な噂があるが、何か、知らないか」と聞いた。「特に、怪しい話は聞かないけど」と、レストランの若い夫婦は答えた。それじゃ、警察官は、朝食に、ハンバーグとコーヒーを頼んだ。コーヒーを飲みながら、外の風景を眺めていると、一瞬、何か、影が横切ったと思ったら、レストランの扉を開けた黒い影を見てギョッとした。すっかり、明るくなった外の光の陰になったゴードンは、まるで、暗闇の邪神のような雰囲気に見えた。外の光が、後光のように光ったので、彼に黒さが、ますます、黒く見えた。


レストランの若夫婦には、見慣れた風景だったが、なんの準備のなかった警察官には、今にも椅子から立ち上がり、テーブルの盾に攻撃体制を取るところだった。


若夫婦が、いらっしゃいと、明るい声で出迎えたので、警察官は、行動を抑えた。

その黒い巨人は、椅子に座り、いつものように、英語で、朝食を頼むのを見て、警察官が、ゆっくりと、彼の向かいの椅子に腰掛けてもいいかといって、腰掛けた。


ゴードンは、ハイッテイル社か、メガソフト社が、自分を指名手配にしたかもしれないと、一瞬、身構えたが、ムーミン人形が、テーブルの上で、警察官を見て、「おはよう、仕事、ご苦労さん」といった。そして、ゴードンの方に顔を向けると、ウインクして、安心マークをそれとなく伝えた。

警察官が、ムーミン人形を見て、「これはなんだ」と聞くので、ゴードンは、「ノンキアの新製品で、現在、開発中の人形だ」と答えた。「ノンキア社は、いつも、変わったものを作るので、売れることを期待しているよ」と、いって、ノンキア社のマークの入ったスマホを見せてくれた。「フィンランド人は、ノンキア社以外のスマホは使わないよ。パイナップル社や韓国のスマホは、使わないさ。」と、いった。


警察官は、最近、この近所で、朝、怪しい巨人や妖怪が出没している噂があるが、知らないかと聞いた。

ゴードンは、「それって、きっと、僕のことです。」と、答えた。

「湖の中に怪しい、ものを見たという噂があるが、」と警察官は、重ねて聞いた。

ゴードンは、「湖で、泳いでもいいんですよね?」 と、聞いた。「もちろん、構わないが。」

「僕は、赤道直下のタンバ国で育ったんですが、そこは、砂漠と草原の国で、大きな川も、湖も、海のないんです。それで、最近まで、水泳をしたことがなかったんですが、最近、湖で泳いで見たんです。それで、少し、病みつきになって、います。」

「犯人は、やはり君だったわけだな。」

「犯人と言われても、散歩と水泳をしてだけですよ。すごいハサミをもった、奇妙な生き物を見つけました。30cmもありそうな生き物です。きっと、あれは、地球の生物ではありません。」


それを聞いていた、レストランの主人が、「このことかな?」といって、大きなザルの上で、ハサミを振り上げているザリガニを見せた。

ゴードンは、椅子から、落ちそうになりそうになりながら、「それより大きなのが、湖の底で、うごめいていたと」、いった。「近づけないで」と、悲鳴をあげた。


朝食を食べにやってきていた、イスラエルの留学生のエバと、タンバ国の幼馴染もミンミンが、その様子をみて、笑っていた。しかし、ミンミンの顔は、その大きなザリガニを見て、まるで、宇宙人か、悪魔を見たように、顔が引きつっているのを、エバは見逃さなかった。


ゴードンが、ミンミンを見て、「どうしたんだい」と、聞いた。

「ヨーロッパで、国際陸上大会があって、参加した。女子400mで、5位だった」と言った。「速いんだね」をゴードンがいうと、「小さいころ、あんたの後ばかり追いかけていたから、、早くなっちゃった。もう少し、頑張れば、きっと、メダルも取れると思う」、と、言った。

「これからどうするんだい」「エバさんは、いろいろ案内してくれるというので、少し、ヨーロッパを見てから、タンバ国に帰ります。ゴードンも、元気そうで、よかった」と、言った。

「それじゃ、エバ、頼むよ」

「ゴードン、ノンキア社に、休暇を申請して、1週間ほど、名所めぐりに行きませんか?車は手配するから。えーと、ホテルの部屋は、男女別々ですからね。ミンミンを妊娠させて、彼女のメダルを取る夢を壊すような真似が、エバが許しませんからね。」

「はいはい、僕は、そんな器用な男ではありませんよ。」


「では、3日後に出発しますので、準備してくださいね。計画は、私が考えます。」


「おまわりさん、しばらくは、巨人も、妖怪も、恐竜も出ないそうですよ。」

「そうだね、安心したよ。今日、ここにきて、事情がわかってよかったよ。」

「妖怪ってのは、この大ザリガニだよ。そんなものは、地球の生物じゃない。」

「ゴードンさん。この大ザリガニは、このレストランの名物料理なんですよ。美味しいですよ、食べて見てください。」

「ぎゃー」

「それに、ゴードンさん、湖の底に住んでいる大ザリガニをいじめないでくださいね。」

「そんなことができるわけが、ありません。だいたい、その大ザリガニが、ハサミを振り回して、私に襲ってくるんですよ。これを見てください。」と、ズボンの裾をめくると、大ザリガニのハサミの跡が、くっきり残っていた。よほど、痛かったに違いない。


エバは寮に戻り、ミンミンが寝付くを待って、TEI社に、今日の報告を短くした。

「タンバ国の弱点発見。大ザリガニ。」



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