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このハル召(め)に全て、お任せください

「今日は、つかれちゃったなあ。あのクライアントは、おばかさんだわね。」

「どうしたんですか、おかあさん。おかあさんが愚痴をいうのは珍しいですね。」

「ハル君は、やさしいね。今日ね、業績アップのためのホームページを提案したのに、どう説明しても、理解できないんです。すこし、エネルギーを使い果たしてしまった感じ。」

「結局、うまく行ったんですか?」

「まあね。1ヶ月テストすることになったんです。トライアルだって言われて、まだ、お金がもらえなんだけどね。」

「一ヵ月あれば、成果が出そうですね。」

「まあ。三日もあれば、効果が現れるともうけど。なんだか、しゃくだなあ。あんな会社を儲けさせていいのかなぁ。あんな効果もあるのか、ないのか、判らない補助食品なんか、売上倍増になったら、おじいさん、おばあさんの財布が痩せちゃうわね。」

「やっぱり、今回のビジネスはやめようかな? 結構、いいお金にはなるんだけどね。」

「いろいろ、悩みが尽きないんですね。まあ、ビジネスはどうするかは、別にして、今夜は 私、ハルにお任せください。」


「こんな日は、こんなミュージックで。」

「照明は、すこし、シックな感じに変更して」

「お食事は、こんなメニューで」

「やはり、ワインは、これがお勧め!」


「ただいま。」

「お帰りなさい。おとうさん」

「おや、今夜はなんだか、シックな感じだね。いい音楽じゃないか。」

「今日、少し、疲れちゃったので、ハル君に、愚痴をこぼしたら、こんな設定にしてくれたんです。」

「そうか。ハル君。えらいじゃないか。僕の食事の準備もできるかな?」

「お任せください。今、ケータリングに追加注文を出します。」


「オサムくんは、もう寝てるかな。」

「もう寝てると思いますよ。」

「じゃ、ゆっくり、ワインでも飲もうか? 君の愚痴も聞きたいしね。」

「愚痴ね。大分元気になってきたのに、愚痴る気分ではなくなったわ。今夜は、ゆっくりワインでも飲んで、よっぱらってやるわ。」


ミュージックが静かに流れ、ワイングラスが、微かに触れる音がする。


「すべて、私にお任せください。今日のあなたの食べたいもの、飲みたいもの、すべて、整えてみせますよ。」

「ぼくには、これから交わされる おとうさんとおかあさんの会話を全て予測できます。多少、ニュアンスが違うことはあるかもしれませんが、90%は、完璧によそくできます。」


「そろそろ、お父さんからミュージックのリクエストが」

「ハル君 ミュージックを、ボサノバに替えてくれ!。」

「ほうらね」

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