今回もイギリス政府は、後手後手だったね。
ロジャーも新しい家にも慣れて、なんだか、劣等生の学生から、急に青年実業家の雰囲気が漂ってきた。
今なら、どんなことも、絶対、うまくいくというそんな気分に満ち溢れていた。
なんといっても、貧乏学生だったのに、急に、大金持ちになってしまったのだ。
アレックスが考えた1日10ポンドだけかせぐアルファー10というマシンを製造して販売したところ、現在、12万台を売り上げるヒット商品になっている。
しかし、このアイデアもそろそろ限界にしている。本来12万台も売れてはいけないマシンなのだ。1台あたり10ポンドしか稼がないといっても、12万台もあると、1日あたり120万ポンドをかせぐことになり、いくら大きな株式市場といえども、その影響は無視でいない大きさになってしまった。
当初は、子供おもちゃとして考えられていたので、親が子供のおこずかいをあげるつもりで買っていたのだが、かならず10ポンド稼ぐというので、口コミで広がってしまった。
ミニType 理論で動いているので、本来なら、10ポンドどころではなく、もっと、たくさん稼げるのだが、10ポンドを稼ぐと自動停止するようになっている。どんなチャンスがきても、1日10ポンド以上は稼がないというのが鉄則だ。この規則は、このマシンの最大の生命線であった。どんな暴落でも、10ポンドはかならず稼ぐようにもなっている。
ミニType 理論では、常に売り買いと、ほとんど同時におこなっており、株が高くなっている時も、安くなっている時も、複数の売りと買いを行っているので、大儲けをできないのだが、売りと買いの差額分を、収益にするので、10ポンドの儲けがでないということはないようになっている。その勝率は99.9%と言われ、1000日に1回程度は、稼げない日がある程度と言われているが、それも、理論値であって、まだ、統計的に実証されているわけではない。
アルファー10の成功をみて、アルファー100、アルファー1000も構想されたが、アルファー10の限界も見えてきたので、アルファー100は、100台のみ限定、アルファー1000が、10台のみの限定として、売り出す方針が決定していたが、イギリス政府からアルファー10には、違法性の疑いがあるので、調査を開始するというニュースが流れたので、販売を見合わせることにした。
イギリス政府は、こどものおもちゃとして馬鹿にしていたアルファー10の株式理論を徹底的に研究するための研究所を立ちあげたようだ。もし、この理論がそのまま活用できるのなら、無限の財源を確保できることになる。
しかし、それは、ネズミ講とおなじで、儲け続けるためには、株式市場の無限の拡大が必要で、はやり、台数にも限りがある製品である。イギリス政府の研究もすこし遅すぎたかもしれない。
個人投資家をミセス WATANABE と呼ばれているが、このアファルー10も、これだけの量になると、株価への影響も無視できなくなってきており、10ポンド投資家と呼ばれるようにもなった。




