オサム君が始めに気がついた。
おかあさんは、家にあるロボットたちにはあまり、興味がないように見えます。
特にお父さんのように、ロボットに話しかけたりしません。また、ロボットの問いかけにもあまり真剣に受け答えをしているように見えません。
実は、お母さんは、人工知能の専門家でもあるので、ロボットたちが、どのように言葉を繰り出し、聞いて理解しているのかという仕組みを理解しているので、ロボットの会話という感じには受け取れないのです。絶対音感を持った音楽家が、様々な声や音を、音階で聞いてしまうように、ロボットの会話の発生や聞き取りをデジタルのように感じて、人間は喋っているように聞くことができなくなってしまったようなのです。
おかあさんは、人間と会話することが大好きで、かなり、つまらないとも思えるクイズ番組や推理ドラマをよく見ます。明らかにつまらないと思うものものまでよく見ます。同時に、コマーシャルは、仕事柄読む見ます。多くの人には、ドラマとコーシャルは、別々のものですが、コマーシャルとホームページの関係が会社の売上に大きな影響を与えることを気がついてしまったので、研究対象にもなっています。
おしゃべりも大好きですが、日常生活でよく登場する言葉にも、常時注意をしていて、テレビが日常生活にどのような影響を与えているのかも、密かに研究しています。
新しい言葉や、用語、商品名、CMに登場する人物の名前など、どのように人間の意識に定着して、購入する気になるのかも密かに研究しています。
新しい商品が発売されて、どのくらいの回数のコマーシャルが必要かも、およそ、統計が出ています。実は、同じコマーシャルを、何百回と見なければ、商品購入までにはならないのです。ではいかに、何百回のCMを流すには、どうしたらいいのかもちゃんと研究済みなのです。
お父さんは、相変わらず、アダムス3世とハル君を相手に、いろいろな質問をぶつけて、どちらが、かしこいのか判断しようとしています。人口知能の知能指数をはかるテストを開発しようとしているからです。
人口知能は数学的ロジックは得意なので、論理的ではない会話や、おとぎ話に出てくるような難題を、人口知能がどのように切り抜けるかが、人工知能指数のテスト問題になると考えているので、いくつか試作品作成しては、アダムス3世とハル君に試しています。
ある時、お父さんとお母さんが出かけて、オサム君が一人の時に、ハル君がオサム君に声をかけました。
「お名前は」
「クドウ オサムです」
「オサム君は何歳ですか?」
「5歳です」
「好きな食べ物は何ですか?」
「イチゴとバナナです。」
「パパとママでどちらが好きですか?」
「ママです」
「嫌いな食べ物は何ですか?」
「納豆が嫌いです。」
「1と3で、どっちが好きですか?」
「???? 1かな? でも、3も、嫌いではありません。」
「そうですか?」
ハル君の会話はここで、一旦、終わりました。
いろいろ聞いたことを、データ保存しているようです。
「ねえ。ハル君、ミチコ先生の家にも、ハル君みたいなロボットがいて、アキちゃんというんだって。」
「秋元美知子先生のところのアキちゃんだね。アキちゃんは、15歳の女の子の設定なんだ。」
「ふーん、知っているんだ。」
「ねえ。お母さん、ハル君がね、ミチコ先生のアキちゃんのことよく知っているんだって。不思議だよね。アキちゃん一度もこの家に来たことがないのに。」




