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アレックスの過去

「わーい、わーい」


くるくると、あたりをうごきまわり、まるで、池の中のミズスマシのように、動き回っている。


「アレックス、うるさいよ。静かにしなさい。」


「だって、だって、僕が動いたの、5年3ヶ月24日3時間5分前だったのだもの」


「アレックス、僕のところに来て、5ヶ月ぐらいなのに、それ以前からほとんど動かなかったのかい。」


「そうなんです。大家さんが、僕を箱から出して、床に置いたときは、確かに動いたのです。はじめは、大家さんととても順調な生活が始まったのですが、2ヶ月ぐらいをすると、急に僕を虐めるようになったんです。その理由は、いくら考えても、僕には理由がわからないんです。」


「そうか、僕が大家さんにお世話になったのが、1年3ヶ月前からだけど、5年前に、なにか、あったのかもしれないね。」


「そういえば、騙されたといっていたね。大家さんだ、株取引で大損して、それで、奥さんと別れることになって、子供たちとも別れることになって、散々だったらしい。」


「それで、残った家を、いろんな人に貸して、家賃で、細々生きていたんだけど、まだ、借金があるみたいだね。」


「それで、君に八つ当たりしたんだ。壊れていなければ、きっと、君は売り飛ばされていたにちがいなけど、壊れて動かなかったんで、売り飛ばされずにそんだんだね。」


「ロジャー、君が修理しますって言ってくれなかったら、誰にも、僕が気づかれずにいたんだね。だって、大家さんだって、僕が動いているなんで、とっくに昔にわすれて、単に、ゴミだとおもっていたんだもの」


「アレックスが嬉しいものわかるけど、ミズスマシのように、動き回るのは、もうそろそろやめてくれないかな。僕も、目がまわりそうだ。」


「ロジャー、僕たちが引っ越して、大家さんの収入大丈夫かな?」


「アレックス、なにかよいものはないかな。」


「ロジャーいいものがあるんです。この小さなコンピュータは、ミニType 理論を応用したもので、毎日10ポンドだけ稼げるようになっています。10ポンドに達すると、自動的に停止します。」


「毎日10ポンドじゃ、子供のおこずかいにしかならないぞ。」


「大家さんの残りの借金を考えると、1日100ポンドを稼ぐように設定できないかな。」


「できますけど、元金を少し増やさなければなりませんが、ロジャーが出しますか?」


「いいよ、お願いそうしよう」


「オンボロロボットを治す約束もできなかったし、だまって勝手にもってきてしまったから、オンボロロボットを買い取ったことにして、わかりに、このコンピュータをあげよう。そうすれば、毎日100ポンドは稼げるから。」


「きっと、大家さんもそれで、許してくれると思う。」


「じゃ、引っ越しの報告を兼ねて、大家さんにこれを渡してくるよ。」

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