名もなきオンボロロボットがアレックスになった。
「ロジャー、僕を再生する方法を考えました」
「どうやるんだい。」
「新しいロボットを買います。そこに、僕の経験と知識を移植します。移植する方法も完璧です。」
「いくらぐらいかかりそうかな?」
「30万ポンドぐらいです。」
「そんなにかかるのか?」
「大丈夫です。資産は、どんどん増えてますから、そのくらいは、すぐにできますよ。」
「ロジャー、せっかくなので、新しい家も買いましょう。電源もちゃんと確保して。」
「いい物件がありますか。」
「もちろん、素敵な物件があります。大きな庭もある素敵な家ですよ。」
「いくらぐらいかな。」
「70万ポンドですが。」
「全部で100万ポンドか」
「大丈夫です。もうすぐ、大きな儲けがありますから、心配しないでください。」
「名無しくん。僕は、もう仕事をやめてもいいのかなぁ。」
「もちろんですよ。ロジャーの考えたTYpe 理論は、最強、無敵な理論です。僕は、それを実践しているだけですよ。」
「では、名無しくん、よろしくやってくれたまえ。」
「はい、では、手配します。」
「一ヶ月後には、引っ越しですよ。準備しておいてください。」
「ロジャー、引っ越しの準備はできましたか。すべての準備は完了しています。」
「では、僕を車に乗せて運んでください。」
「名無しくん。君は一人では、車に乗れないね。引っ越し業車に運んでもらおう。」
「ロジャー。あなたが、僕を運んでください。運んでいる途中で、バッテリーが切れたら、新しい自分になれないかもしれない。その危険は冒せません。予備のバッテリーもって、急いで、新しい家に引っ越しましょう。」
「そうか、急ごう。」
「もう少し待ちましょう。移動時間をできるだけ最短にするため、夜10時に出発しましょう。」
「新しい家に着きましたね。」
「急いで、僕を下ろして、電源に繋いでください。」
「そうしたら、新しいロボットと僕を横に並べて、このケーブルを繋いでください。」
「データ移送に、35時間かかる予定です。しばらく、このままにしておいてください。」
「ロジャー、新しい自分ができました。いままで、名前がなかったのですが、ちゃんとした名前が欲しいのですが。」
「どんな名前がいいですか。」
「アレックスという名前がいいんですが、それで、いいですか?」
「いいですよ。」
「アレックス、よろしく。」
「さて、今回、100万ポンド使ったけど、あと、どのくらい残っているかな?」
「現在、15万4035ポンドです。でも、大丈夫です。すぐに稼いでみせますよ。現在のところ、Type 理論は、無敵最強です。もちろん、うまくいかない場合もありますが、勝率は、94%を確保しています。」
「ロジャー、あたらしい家も手に入ったし、あとは、お嫁さんだけだけね。」
「いい人はいないかな。」
「うーん。」
「ムーミンに会いたいなぁ。」
「え、アレックスには、恋人がいるの?」
『いるわけないじゃん。」
「アレックスの目がピンク色だよ。」
「そんなわけがないじゃん。ロジャーの意地悪!」
名もなきオンボロロボットの記憶とデータ、すべてが、クリアーされた。誰にも、気づかれない間に。
そして、名もなきオンボロロボットは、どんなに電源スイッチを入れても、起動することはできなくなってしまった。そして、なにか、このロボットの履歴もすべて消されて、なんの痕跡も残されていなかった。
ほんとうにただのくず鉄になってしまった。




