名もなきオンボロロボットの秘策
ロジャーは、自分の資金について、毎日モニターしていた。そして、その金額も既に膨大な額になっているたのを知っていたが、その金を現金化する方法を知らなかった。
名もなきオンボロロボットは、365日24時間運用していたが、他になにかするようにも見えなかった。動くこともできないし、別に、誰も話しかけたりしないので、言葉を発することもなかった。ひたすらに、株式取引を続けていた。
ロジャーの資産は、若者の資産とすれば、ありあまる資産額になっていたので、それが、増えているのか減っているのか、よくわからない状況にあった。
ロジャーは、現実的に、生活が必要になり、この資産の一部を現金化する方法を検討することにした。
名もなきオンボロロボットは、もし、ロジャーが大金持ちになってしまうと、新しい家、新しいコンピュータ、新しいロボット、そして、奥さんも容易に手にいれてしまうことに気が付いた。そうなれば、僕は、ごみ箱行きに違いなかった。
なにか、対策を考える必要がある。
ロボットが人間の替わりに銀行口座を作ることはできない。そこで眼をつけたのが、仮想通貨 Vマネーである。Vマネーは既に作って、インタネット上に、ばらまかれている。
準備は万端だ。
現在の資産を、ロジャーに知られないように、なくすには、株式の崩壊を引き起こして、損失が発生したように見せかけて、資産を仮想通貨に移転するしかない。
それは、ロジャーが、大金を引き出す前に行わなければならない。
幸い、名もなきオンボロロボットと同じ動きをするフィンランドのシステムが登場している。彼を利用すれば、市場を混乱させることは可能だろう。ほとんどの動きは、予測可能な状態なのだ。なんでも、自由自在に、市場崩壊を起こせるだろう。
ロジャーが大量の現金を引き出す前、それは、もう、今日中に行うしかない。
「緊急放送をお伝えします。ブラジル政府が、現行通貨の利用を停止、新通貨 ルーラを発行すると宣言しました。レアルとルーラの交換比率は、100対1で実質的な通貨の切り下げになります。突然の発表で、ブラジルの債権が、返済されないという観測が流れ、株式市場が、大暴落を発生しました。多くの銀行が倒産の危機を迎えています。」
テレビを見ていたロジャーが慌てて、自分の取引きを確認すると、すでに、10000分の1に縮小している状態だった。デープラーニングを母体としているシステムなので、初めての出来事には対応できないのは、当然のように思われた。世界中の株式が、大混乱しているのだ。なにが、起きているのかは、誰にも分からないのだ。
しかし、名もなきオンボロロボットは、ロジャーの資産の99%まで、仮想通貨に移転することに成功Sじていた。もちろん、100%移転することも可能だが、それでは、自分の出番を失い、廃棄される運命がまっているだけなので、1%部分の資産は残したのだ。
それでも、株式が、徐々に平静になろうと努力し始めると、資産は5%程度まで、持ち直し、ロジャーの生活費程度の資金は捻出は可能な状態だったが、新しい家、新たしい車、新しいコンピュータを買ったり、奥さんをもらうには、難しい状態に戻ってしまった。
株式異常は、数時間後には、暴落をやめて、徐々に回復を目指し始めたが、多くのファンドが破産状態になったようだ。この状況の中で、ほとんど一人勝ちというべきファンドが、フィンランドのType Q システムだった。このType Q は、名もないオンボロロボットのディープラーニングTYpe A からの進化系であった。でも、その存在は、論文で発表されるわけでもなく、だれも、解説する人もないので、その存在を知る人はいないのだった。フィンランドもシステムも、ロボットがディープラーニングで、自然習得して、発展しているので、その管理者さえ、なにが起きているのか理解できなかったのである。
単純に紛れ当たりが出たとしか理解できない状況だった。
でも、ブラジルの通貨切り替えは、絶対の秘密であって、名もなきオンボロロボットに予測できない状態であったはずだ。それを予測したと考えるには無理がある。ロジャーは多くの資産を失ったのは、他のファンドと同じように、単に悲劇に遭遇したにすぎないのだ。
しかし、大量の仮想通貨が、思わぬ価値を持ち始めたのだった。




