人間たちがいない家の中で
お父さんは毎日、大手コンピュータメーカーの会社にいきます。おかあさんは、小さな会社の社長です。
お父さんとお母さんは、大手コンピュータメーカーの同僚でしたが、お父さんとお母さんが結婚するとき、お母さんはその会社を辞めました。一応、寿退社です。実は、お母さんのプログラミング技術は、お父さんより優れていたので、会社としては、お母さんが辞めるより、お父さんが辞めた方が会社のためにはなると、本気で言われていました。
実は、お父さんも、頭が悪いのではないのですが、不器用というのか、キーボード入力ミスがどうしてかとてもおおくで、アダムス3世がなかなか完成しないのは、お父さんのキーボードミスによると言われています。
そのミスを密かにカバーしてくれたのが、お母さんだったのですが、会社の方針で、同じ部署に夫婦で働くことはさせないということで、お母さんは、結婚が決まった時に、他の部署に移ることが必然ときまってしまったです。でも、コンピュータの仕事がしたかったお母さんは、コンピュータの人口知能の研究ができないのなら、一度会社を辞めて、新しい仕事を探すことにしました。お母さんは、人事や経理でもきっと有能な仕事をできたと思うのですが、どうしても、事務の仕事はしたくありませんでした。もし、それらの仕事についたら、事務の仕事を人工知能にさせるための人工知能を作り出してしまったかもしれません。
おかあさんは、小さな会社を起こして、人工知能の開発を請け負う仕事をしています。いま、一番多い仕事は、会社のホームページの改良です。ホームページを見たお客が、商品の内容をみたり、注文するためには、どのようにホームページを改良して、売上アップをさせるのかが、お母さんの会社の特技です。
実に、お母さんの会社に依頼したことによって、売上が、10倍、20倍どころではなく、100倍になった会社まで、出現したのです。実はそこには、人工知能技術が生かされていて、お客さんの悩みや希望に自然に導く癒しの空間を生み出してしまうのです。どうしてそのようなことができるのかは、企業秘密だということですが、ホームページをクリックする速さ、場所、マウスの動きから、微妙な変化を受け取るというのが、お母さんの人工知能的分析を生み出しているようです。しかし、個人のPCの中を覗きみることはできませんので、あくまでも、ホームページに設定された記事や設問によって、解決する必要があります。
そのため、個人によって、同じ会社のホームページは、微妙に変化したり、大胆に変化していることがあります。同じ会社のホームページといっても、実に、数万というパターンをうまく使って、販売戦略もします。曜日、時間、季節、天気、ニュースの話題、ツイッターの話題なども、変化する要素として組み込まれています。しかし、一番の連動は、テレビコマーシャルとの連動でした。テレビ番組のコマーシャルの時間に、ホームページをアクセスすると、その番組の解説や作成秘話などがのっていて、番組への共有感が増すようになっています。しかも、主人公や登場人物、舞台になったホテルや地域とも連携したホームページできているので、お客さんとテレビと商品の奇妙な一体感ができてしまうのです。あまりのできの良さに、お母さんは、このままやっていいのかというかすかな疑念が湧く時があります。しかし、会社の売上倍増にともなう成功はなかなか捨てがたいものがありました。
オサム君は、お父さんとお母さんは働いている日中は、保育園にいきます。いま通っている保育園には、大好きな女の先生がいるので、かなり気に入っています。
ハル君が我が家にやってきてから、オサム君は不思議なことに気がついてしまいました。どうも、ハル君は、お父さんやお母さんやオサム君のいない間、独り言をゆうらしいのです。実は、この家には、たくさんの人口知能の冷蔵庫やお掃除ロボット、炊飯器、テレビなどがあったのですが、お父さんがお母さんやオサム君たちがいない間は、いままでは、シーンとして動きを止めていました。しかし、ハル君が来てからは、一人で動き回って、独り言をいうので、たくさんの人口知能が、ハル君と会話を始めてしまうようになったのです。
そして、ハル君は、この家族の隠された過去を偶然知ってしまうことになりました。