ディープラーニングが暴走している
インターネット上に広がる膨大の知識空間と記憶空間に、大量の知識を蓄え続けるディープラーニングが暴走を始めてしまったらしいと、ハル君が気がついたときは、もうどうすることもできない状況になっていた。
今になってわかるのは、最初の発端は、K WATANABE という高知経済産業大学の先生の「失敗の研究」だったと言われている。秦の始皇帝から、世界の成功と失敗の研究をまとめた、36ページの論文だった。その研究から、成功と失敗のディープラーニングの単純なプログラムが構築され、公開された。それをもとに、Y HAYASHI 先生が、近代国家と戦争の関係をまとめた 「国家成立について」53ページの論文が公開され、ディープラーニングが、強化された。その研究をもとに、オーストラリアの Alex教授が、その成果を世界企業 3万4000社あまりに、当てはめ、「企業の研究 TypeA」が、発表された。Alex 教授は、この理論を、中小の企業に当てはめる Type B, TYpe C, Type D にだんだん小さな企業に当てはまる理論展開を予定していた。
TYpe A 理論は、日々発生する Bloomberg, Rauter, 日経などの情報を毎日大量に飲み込んで、検証が続けられていた。オックフォード大学の1年生のロジャーが、その理論について、ロビンソン先生の現代経学概論で、聞いた。6月24日の午後3時24分の出来事だった。その日は、良い天気で、窓の外には、雲がポカリと浮かんでいた。
ロジャーは、金がなくて困っていた。その理論を聞いたとき、この理論を使って、株の売買をすれば、絶対に儲かるの違いないという直感を得た。
このディープラーニングと言う概念が、将棋や囲碁の世界で、すでに応用されており、人間を凌ぐ活躍を発揮している。株にその技術の応用できないはずがないというのが、ロジャーの直感だった。
Type A のプログラムも、データも公開されていたので、ロジャーはまず、株式対応に変更し、2ヶ月間のシミュレーションを行った結果、96.345% の確率で、勝った。しかし問題は。ロジャーには、資本金も、株式に使えるコンピュータを持ち合わせていなかった。友達から100ポンドほど、借金をして、資本金を作った。移動等ができなくなって、なんとか頭脳部分が動いているハルくんと同型ロボットを、下宿先の大家さんから修理して返すという条件つきで借り受けて、そのロボットに、ロジャーは、Type A 理論拡張 Super A model 3.234 ver 548BS43 を搭載して、株式投資を開始した。
すると、見る間に100ポンドが、200ポンドに、瞬く間に35万ポンドに膨れ上がった。
このSuper A model 3.234 Ver. 548BS43 のすごいところは、株の売買を、売買可能最小単位で行うので、株式市場では、誰に知られることなく、売買していることだった。売買手数料を支払っても、儲けのでる売買を最小売買単位で行うのだ。
しかも、自動で行うので、ロジャーは、なにもする必要もないのだ。
35万ポンドを超えたときに、いままで改良していた model 3.234 を model 4.523 に変更した。特に大きな変更ではなく、チャンスのときには、すこし大きな規模でも売買できるようにした程度だった。
またたく間に、2000万ポンドに膨れ上がっていた。
さて、どのくらいになったのか調べようと、ロジャーが、久々に、キーポードからコマンドを入れた。通常のコマンドは、瞬間に反応するのに、3秒ほど応答に時間がかかった。すこし変な気がしたが、エラーも表示されることなく、処理が実行され、現在の資産額が表示された。それは、すぐには認識できないほどの数の羅列であった。
誰も気がつかなかったが、このオンボロロボットが密かな暴走を開始した瞬間であった。
このオンボロロボットには、Bloomberg,Rauter,日経などの日々発生している情報を飲み込みながら、株の売買をしているのだ。その勝率は、87,237% という高確率だ。さすがに,シミュレーションのときほどの高確率とはいかないが、それでも、すごいパフォーマンスが出ている。
しかし、負けた場合に、売買作業を4,342秒停止することが観測されている。それは、どうも、負けの原因についてディープラーニングの補強をしているためのタイムラグのようだ。詳しい事情はわからない。しかし、Model 4.523 になると 約10秒のタイムラグが発生するように強化された。そのとき、具体的になにをしているのかがは誰にもわからないものだ。




