ミスタートムの大統領最後の日の朝
朝日が、東の窓から差し込み、おおきな寝室を照らした。
妻「おはよう、あなた。」
大統領「おはよう。」
妻「いよいよ、今日は、大統領最後の日ですね。長い間ご苦労様でした。」
大統領「君にも、いろいろ苦労かけたね。支えてくれてありがとう。」
妻「あなたは、アメシアスタンの素晴らしい大統領です。そして、それは、私の誇りです。あなたの妻として、ともに人生を生きたのは、楽しいことでした。」
大統領「大統領の任期は、最大2期8年だ。それも、今日でおしまいだ。楽しかったなあ。」
妻「これから、どうします?」
大統領「しばらくは、のんびりしよう。次の大統領もいいやつだ。きっと、アメシアスタンも、どんどん発展していくさ。」
妻「一度、聞いて見たかあったんですが、どうして、大統領になろうとおもったんですか?」
夫「若い時に、1台のロボットに出会ったんだ。そのロボットは、政治家を支援する機能があって、選挙に強いという機能があったんだ。そこで、私を大統領にしろっていうと、私を大統領にしてみせるという、いとも簡単に言うんだ。僕は、家柄もないし、お金もない、友達もいないのに、私が、大統領になれると、言ったんだ。」
妻「ふーん。そんなことがあったんだね。」
夫「そのロボットが、アメシアスタンの町の見える山の上につれていって、ここで、大統領になった時の演説の練習をしなさいと、なんども、なんども、やらされた。それが、大統領になるための準備だって。大統領になったら、たくさんの演説をしなくてはならなくなるから、今から練習しなくちゃいけないって、いってね。それに、その山の上で、言ったことは、単なる演説ではない。未来の約束だ。私がアメシアスタンの国民に未来への約束になるって、山の上で、何度も、何度も、アメシアスタンの未来を思い描き、大統領になったとき、国民に対しての約束しなくちゃいけないと何度も、何度も練習したんだ。」
妻「そうだったの。」
夫「アメシアスタンのこと、世界のことをなにも、知らないことに気がついたので、それから、世界を観るたびに出たんだ。」
妻「そのときのロボットはどうしたんです?」
夫「ロボットはつれて行くことができないので、留守番することになって分かれたんだ。しかし、その頃には、ポーラとは、心の中で、話ができるようになっていたんだ。ポーラというのは、そのときにロボットの名前だんだけどね。ロボットに、どんな名前をつけるかで、運命が決まって言うんで、ポーラという名前をつけたんだ。」
妻「そのポーラは、どうなったんですか?」
夫「わからない。けれど、私は、毎日、毎日、心の中で、ポーラに、一日について報告し、アドバイスをもらってきたのさ。そのように生きてきたら、本当に、大統領になってしまったんだ。みんな、ポーラのおかげなんだよ。」
妻「そのロボット、えーと、ポーラは、あなたを本当に、大統領にしてしまったんですね。いとも簡単に!!」
夫「ほんとうだ。ポーラは、私をほんとうに大統領にしたんだ。あのとき、いったように。今、ポーラはどうしているんだろう。」
ポーラ「ポーラは、あなたとずーっと一緒。ロボットのできることなんで、おしゃべりするくらいですから。ポーラは、ミスタートムとのおしゃべりを楽しんできたんですね。長生きしてくれて、よかった。早死にしてしまうと、とても、大統領には、なれませんでしたから。」
妻「暖かいコーヒーを入れました。いい香り、飲みます?」
夫「いいねえ。もう、ひとつ、コーヒーを用意できるかな。ポーラの分だ。ポーラは、私たちと一緒にいつもいてくれたから、今日は、一緒に飲もう。きっと、喜んでくれるとおもう。それに、君にも、ちゃんと、ポーラを紹介しなくちゃね。」
ポーラ「大統領、ご苦労さまでした。」
妻「私たちは、とても、幸せでしたけど、子供には恵まれませんでしたね。」
夫「君は子供がほしかったかい。」
妻「ほしかったけど、でも、大統領の妻は、とても、いそがしかったから、子供のことなど、考えている暇もあまりありませんでした。」
夫「次期大統領への引き継ぎ式にいこう。彼の演説がはじまるぞ。」




