ルル電気自動車に注文が来たバッタ撃退大砲付き自動車
ルル電気自動車のミーティング室にて
「アラン、日本に行っていたんだって。お土産買ってきたか?」
「お土産ですか。忙しくて何も買えなかったんです。」
「なにも、本当になにも買えなかったのか?」
「でも、みんなに内緒にしてくれたら、魔法のボールペンを特別に差し上げます。」
「魔法のボールペンか。」
「ボールペンで書いた文字は消せませんよね。でも、日本のボールペンは、魔法のボールペンなんですよ。」
「魔法か?」
「まず、書きます。それを、ボールペンのお尻でこすると、消えます。ね。」
「ワオー!、本当に消えた。消しゴムのカスもないし、紙が削り取られてもいない。修正液もいらない。日本の魔法だ。日本の忍者だ。おい、それを俺にくれ!」
「いいですねど、これ、とても高いボールペンなんですよ。」
「高いのか。見かけは、プラスチックのボールペンと同じようだが?」
「見かけはね。でも。インクにマジックの秘密があるんです。」
「そうか。」
「ところで、アラン。大トンド国から、バッタ撃退大砲自動車の注文がきたぞ。造ってくれといってきたぞ。」
「バッタ撃退大砲自動車? いったい、なんだ、それ?」
「これをみろ。フランスで考案されたのを、大トンド国がみつけて、それを造ってくれというわけだ。」
「まあ、一応、概念はしっかりしているんだね。じゃあ、とりあえず、1台つくってみるか。構造はいたって簡単だ。」
「かなりの馬力が必要だから、ガソリンか、ディーゼルを使うしかないかな。この際、しかたあるまい。とにかく、パワーは必要だ。数千億のバッタと格闘するんだ。とんでもないエネルギーが必要だ。」
「構造は3種類だ。小石を投げ飛ばす方法。ここでは、シャベルで掬い取って、飛ばす方法だな。小石をシャベルに供給する部分。それから、地面から小石を集める機構だな。」
「ちょっとした、トラックぐらいの大きさになってしまうな。」
「高速回転シャベルで小石を掬って、投げ飛ばす。小石が、バッタに当たり、バッタが死ぬほど強力であること。バッタは、とんでもなくたくさんいるので、命中精度は問わない。ただし、周辺の人間や家屋には、あまり被害を与えないこと。作物は、仕方ないな。」
「できるだけ、たくさんの小石を積める事。1回に、500個として、毎秒2回飛ばすとして、1秒で1000個、1分で、60000個、1時間で360万個ということは、3時間で1000万個の小石がいるわけだ。
小石1つを1グラムとして、1000万個だと、10トンか。10トンのトラックといったら、かなり巨大だなあ。それを、バッタのいる荒れ地や野原に運ぶのが、とんでもなく大変だな。それも、3時間で使い果たしてしまうとなると、運搬方法がたいへんだなあ。2トントラックを連ねるか?なんだか、コンクリートミキサー車みたいものを、たくさん連ねるか。野原のデコボコ道を走らせるのがたいへんだな。」
「小石は、地面の中から、穿り返せばいいが、河原や砂漠なら、簡単だが、砂地や草や木の生えている場所じゃ、簡単に掘れないぞ。」
「じゃ、地面から砂を吸い上げて、小石だけ揮い分けるのはどうだ。」
「理想的な場所なら、可能かもしれないが、たくさん、小石を吸い上げれる場所なんてないぞ。それに、バッタがたくさんいるところだと、バッタが詰まってしまうな。」
「すると、この方法の問題点は、小石を1000万個、10トンを、素早く手に入れる方法がないということだな。なにか、よい方法はないか。」
「バッタが、いつどこで、大発生するのかが事前に判れば、準備しておくこともできるかもしれない。」
「準備というと、どんな風にだ。」
「たとえば、畑や田んぼをつくったら、その一角にかならず、小石をあつめておく場所を造っておく。で、バッタがきたら、それを崩しながら、ぶつける。」
「巨大な山は造れないから、1時間分300万個かな」
「そのプランはなかなか難しいかもしれないなぁ。」
「やはり、難しいか。」
「小石が、無尽蔵にある場所といえば、海岸か、大きな川辺かな。タンバ国や大トンド国には、海がないから、小石をたくさんとれる場所がない。粒ぞろいの小石は、それなりに使い道もあるから、バッタ退治に使わせてくれないぞ。」
「砂漠には、砂が山ほどあるけど、砂じゃ、バッタを殺せるほどのパワーはでないぞ。やはり、小石がひつようだな。」
「砂粒を押し固めて、小石にできないか?」
「何億、何十億、何百億というバッタの群れに、1時間に36万個小石を投げつけようというのだから、砂を固めている時間はないぞ。すると、造るにしても、事前につくっておくしかないか。」
「問題は、小石をたくさんあつめる方法だな。」
「小石投石大砲は、簡単だな。パワーが、強力にしておく。小石をためておく部分は、2トン程度のトラックの荷台。問題は、小石収集装置だな。これが、かなり大掛かりになる。」
「どうする。」
「畑で使う芋掘り機を改良して、地面を掘り起こして、小石をあつめる。少し大きな石は、石同士をぶつかるようにして、少しでも、石を砕いて、小石を集める。しかしながら、これが、とんでもなく、大掛かりだな。海岸にいって、小石を掬い上げてこれれば、単純でいいんだが。」
「バッタは、まだまだやって来そうだから、どこまで、できるかわからんが、試作車をいくつか、つくってみるか。うまくいけば、人類を救う自動車になる。」




