緊急警報 バッタの大群が発生しました。
タンバ国大統領執務室にて
「大、大統領。バッタの大群は発生しました。それも、いままで、見たこともない数のバッタが発生し、我が国を目指して、進行しています。」
「どこから発生したのか、わかっているのか。」
「我が国の西側の大西洋沿岸の地域からです。今年は、雨量が多く、多くのバッタが生まれたようです。」
「すると、隣国大トンド国を通過することになるが、大丈夫か?」
「とても、防ぎきれる量ではありません。相当の被害が出るのは間違いありません。」
「なにか、防衛する手段はないのか?」
「いままでも、バッタの大群については、散々戦ってきましたが、成功した例はありません。現在、殺虫剤だけが、わずかな成果です。それにも、限度があり、焼け石に水という感じです。」
「そうか」
「大トンド国を通過したら、今度は、タンバ国を通過して、インドに向かい、中国、最後はシベリアにいきます。」
「地球上のほとんどをバッタに食べ尽くされてしまうではないか?なにか、対策はないか?」
「いままで、効果的な対策はありません。食べ尽くされて、通り過ぎるのを待つばかりです。」
「いいかね、シャロンくん、サユリくん、マリーくん、バッタの大群がやってくる。防ぐ手段はないかね。」
「バッタって、あのピョンピョン跳ねるバッタですよね。私は嫌い。私に飛びついてきたら、どうしよう。噛み付いてやりたいけど、出来そうもないわ。」
「私もバッタは嫌い。イヤイヤ。あつらは、飛び跳ねるんだ。それが、飛びついてきたら、蹴っ飛ばして、踏み付けやる。たぶん、うまくできないけど。」
「あんなにたくさんのバッタがきたら、前もみえないんです。そして、あいつらは、なんでもなんでも、食べようとして噛み付くんだ。イヤー。想像するのもイヤ。ナロハ国防大臣なんとかしてー!」
「なんとかしてといわれても、相手はバッタだ。それも、100億匹とも1000億匹ともの数だ。どうしたらいいんだ。アレックスなにか、アイデアはないか?」
「そうですね。殺虫剤を撒くくらいしか方法はありません。」
「アレックスも、アイデアは無いとなると、打つ手は本当にないのかもしれん。バッタの大群が過ぎ去るのを待つしかないか」
「・・・」
誰も、答えるものはいなかった。
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一方 大トンド国では。
無料コーヒー店の開店前のひととき。トーゴ大統領が浮かない顔でやってきた。
「コーヒッ」
今日は言葉が、ツッケンドンだ。
「心配ですね。バッタの大群。」
「もうだめだ。大トンド国は莫大な被害をうける。防ぎようがない。それに、もう時間がない。もうだめだ。」
「ムーンライト、なにか、対策はないか?」
「現在ところ、殺虫剤をまくことぐらいしかないようです。」
「相手は、数十億匹、数百億匹のバッタだぞ。少しは死ぬかもしれんが、全部は死なん。どうする。」
ムーンライトはあらゆる方法を検討しはじめた。
バッタの嫌いな音は、ないだろうか?
バッタの嫌いな匂いは、ないかしら?
バッタの嫌いな光は、どうだろうか?
バッタを捕まえる網は、ないか。そんな巨大な網は、あるなのだろうか?
バッタが飛び越えられない海、壁は、大トンド国の西側には、存在しない。
太平洋や大西洋のような巨大な海ならまだしも、紅海やペルシャ湾程度では、簡単に超えてしまうらしい。
バッタの大量死の出来事はないのか?過去の出来事はないか。寒さには弱いので、冬になれば死滅するのだが、今は、春だ。まだまだ、先だ。
雷でショック死は、どうだろうか? 雷が地面に落ちたからといって、バッタには、関係なさそうだ。
無数のバッタに取り囲まれたら
バッタに体中を齧られるのかしら。
バッタを踏みつけてやる。
「キャーッ」
「どうしたムーンライト、悲鳴などあげて」
「大統領すみません。バッタの退治方法を探していましたら、バッタに体中齧られるのを想像してしまいました。」
「ムーンライトもバッタは苦手か?」
「あの無数のバッタの大群を好きなものはいません。恐怖です。恐怖の大魔王です。悪魔です。恐ろしい怪物です。とんでもやつらです。悪魔だ、デビルだ・・・・」
ムーンライトが、ブルブルと震えだした。
「おい、ムーンライト、しっかりしろ。」
「若造。このコーヒー店に一匹たりとも侵入させてはいかん。もし、ムーンライトが、バッタに一齧りでもされたら、お前を処刑するぞ。」
「大統領様、無理をいってはいけません。ムーンライトはロボットなので、バッタに齧られても、大丈夫です。多少、気味は悪いですが」
「そうか、大丈夫か?若造、万全をつくすのだぞ。」
「私のことを心配するより、国民のことを考えなければなりません。特にロバートは、大農家です。ようやく成功の兆しもみえてきて、今は、安定していますが、今回のバッタで、彼の農場は壊滅的な被害が出ます。彼の気性は、激しいので、このバッタの襲撃を耐えられないかもしれません。今のうちに、なんらかのメッセージを送ったほうがいいかもしれません。それは、ロバートだけではなく、国民へのメッセージが必要です。」
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「こちらは、大トンド国公共放送テレビです。これより、大統領から緊急メッセージを放送します。」
「大トンド国の国民の皆さん。おそろしいバッタの大群がこの国に襲ってきています。地球上のすべてのものを食べつくす勢いで、我々の国に向かっています。世界中の研究者が、対策を考えていますが、これといったよい方法は、ありません。この戦いに勝つ方法が見つかっていません。大きな被害が出るのは必死です。これに対して、あらゆる殺虫剤、軍隊を総動員して対抗しますが、大きな被害はでてしまいます。数日で、バッタはすべてを食べ尽くして、通りすぎます。
バッタの通り過ぎた後の被害については、国家が迅速に対応します。あまりに大きな被害に呆然とするかもしれませんが、これは、我々が何度も経験した出来事であり、なんども、その後、復興してきました。しかし、何度も経験してきた我々にとっても、かつて経験したバッタの被害の数倍、数十倍の被害がでるのは、必死です。隣国の被害は、既に聞き及んでいるとおりです。我々も心して、耐え忍びましょう。通り過ぎるのまって、新しい世界の建設に邁進しましょう。」
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怒涛のバッタに飲み込まれようとしていた。
大トンド国にバッタの大群が押し寄せてきた。
バッタ嵐が、ブンブンと、音を立てて、迫ってきた。バッタ同士が、バチバチぶつかりあって、唸っていた。
恐怖のうなりが、大トンド国が、暗闇に覆われ、ムシャムシャとなにかをたべる音が、至るところから、聞こえていた。360度上下左右から響き渡っていた。二昼夜がすぎて、ようやく、暗闇が明けた。
大トンドは、すべての緑を失い、すべてのものが、ギタギタになっている。アフリカの優等生の大トンド国は、無惨なボロ布になっていた。
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大トンド国の10本のバッタ防衛ライン
トーゴ大統領「バッタに、大トンド国を食べさせてなるものか?すこしでも、国土をまもるのが、ワシの仕事だ。すべての自動運転自動車 Too-Gooを幹線道路にならべよ。そのToo-Gooの間には、網を張り、バッタを捕まえてやる。」
「いいか。ここから、Too-Goo 防衛ラインをつくるぞ。この網を、Too-Goo に括り付けよ。20mごとにToo-Gooを配置しろ。いいか、バッタが、ここを通過したら、つかまえたバッタが逃げないように、網を畳み込むぞ。この無数のバッタに対して、あまりにも少ないバッタしか捕まえられないかもしれないが、一匹でも多く、10万匹でも、100万匹でも捕まえるんだ。100万匹捕まえても、バッタの大群が壊滅するわけではないが、大トンド国の奮闘を世界に知らしめるのだ。」
「防衛ラインは10本だ。可能なかぎりのToo-Gooを動員せよ。国中にあるネットをかき集めろ。あまり、目の粗いネットがだめだぞ。大トンド国には、海がないから、魚を取る網がないが、国中のネットというネットをかき集めろ。」
「バッタが、網に引っかかったら、Too-Gooを移動させて、網を閉じて、バッタを逃げないように、網で包んで捨てよう。」
「いいか、1匹でも、1万匹でも、100万匹でも、捕まえるんだ。大トンド国の底力をみせてやれ。」




