ワシは、アフリカ最大の宮殿を作りたい
無料コーヒー店の朝は、大トンド国の大統領のひとときのくつろぎの時だ。
今日も、いつものように、やってきて、ムーンライトとのおしゃべりを楽しんでいた。
「おい、ムーンライト。アイデアコンテストの特賞を決めたいと思うが、念のため、ムーンライトの意見も聞いてみようかな。」
「何を、特賞にしたいんですか?」
「これだ。ワシは、この絵を見て、衝撃が走ったのだ。ワシは、この大宮殿を作りたい。どうだ、この素晴らしい宮殿を。大トンド国の宮殿にふさわしい。そう思うだろう。ムーンライト」
「確かに、素晴らしいですわね。」
「そうだ。素晴らしい。何と素晴らしい。」
「この宮殿は、どこに立つんです。」
「もちろん、首都の真ん中に作るに決まっているだろう。」
「でも、あそこには、いろんな建物が、建っていたように思いますが。」
「大宮殿の建設のためには、仕方がない、取り壊して、首都の再開発をしたい。」
「壮大な計画なのですね。」
「ワシは、この絵を見たとき、大トンド国の未来が見えたのだ。整然と立ち並ぶ建物、その中央には、この第宮殿が聳えているのだ。世界中の大統領や王様がやってきて、賞賛の声をあげるのだ。何と、素晴らしい。そのような宮殿を作りたい。これは、大トンド国の国民の誇り、象徴となる。」
「確かに、このような宮殿ができれば、みんなびっくりするでしょうね。」
「そうだろう!誰ものが、びっくりするような宮殿だ。」
「しかし、それには、多額の資金が必要ですが、どうします?」
「大丈夫だ。大トンドの経済は、順調に伸びている。2倍、4倍、8倍と、倍々ゲームだ。宮殿の建設資金などすぐ、確保できる。」
「トーゴ大統領。確かに、私は、大トンド国の経済を倍増する方法をご提案しました。倍増が可能なのは、最初だけなのです。経済が安定成長してくると、急成長はできなくなります。いつも安定した成長を遂げるとは限りません。上手くいかないこともあります。それなのに、巨額の借金を抱えるのは危険かもしれません、」
「危険か。確かに、大トンド国の経済もようやく成長し始めたばかりだ。ムーンライト、お前の助言によってだ。だから、たいした財産があるわけではない。確かに、首都の大改造、大宮殿を作る余裕はない。しかし、妻が、非常に楽しみにしているのだ。彼女の希望を無視することができない。」
「そうですか?奥様の希望でもあるんですね。あなたは、夫として、妻の希望を叶えるのは、義務ですわね。」
「そうだ。夫の義務だ。ここで、引くわけにはいかないのだ。」
「そうですわね。ですから、国民に色々意見を聞いて世論を作ってみたらどうですか?あなたが、一人で、大宮殿を作らなくても、国民の総意で作ればいいのです。」
「それじゃ、時間がかかるだろう。みんなで話し合うと時間ばかりかかるので、嫌なんだ。」
「でも、大トンド国は、アフリカの優等生、周りの国から羨望の的になっていますもの。」
「そうだな。」
「大統領の個人の目標ではなく、国家の目標にすればいいんです。議会で、予算を決めて、順番にやればいいのです。5年計画。10年計画、20年、30年計画でもいいんじゃないんですか?」




