トムサムソンの未来旅行
山を越えて、大草原に出た。
すると、意識が、ドローンのように、空中に浮かびだした。自分の肉体は、さっきまで歩いていた小道の脇に、死んだように横たわっているのがみえる。
トムサムソンの心の中で、ポーラに話しかけた。「大丈夫だろうか」
すると、心の中で、ポーラが、「心配しないで。しばらく、未来旅行を楽しみましょう」と、言った。
「未来旅行? 未来旅行?とは、いったい何なのだ?」
すると、大草原だった広大の空間に、大きなシャベルカーやクレーン車が動きだし、巨大なビルが立ち始めた。またたくまに、巨大なビルが、ニョキニョキ立ち始めた。それは、どこにも存在しない、アメシアスタンの人工の巨大都市であった。
2万年前には、古代文明が栄えていたという幻影をみたばかりのトムサムソンにとっては、これは、数百年後のアメシアスタンの未来の姿かもしれなかった。古代文明の財宝を使えば、このような未来都市を生み出し、古代文明を再興させることもできるのかもしれなかった。
すると、ポーラが、「これは、あなたが実現すべき未来よ」と、いった。
トムサムソンは「アメシアスタンは、貧乏国家だ。最近まで、ソ連邦に虐げられていた国だ。ソ連邦の中でも、シッポのシッポの一番小さな国の一つだったではないか。それが、ソ連邦の崩壊のどさくさにまぎれて独立した国にすぎない。このアメシアスタンにこのような巨大な未来都市をつくる力があるはずもない。私ができることは、この小国の平安を保つだけでもたいへんだと思っているのに、この国の未来に、こんな未来都市が出現できるわけがない。」
すると、ポーラが「トムサムソン。あなたは、本当のアメシアスタンの姿が、実力を知らないのです。あなたの見た古代文明は、確かにあったのです。その証拠にあなたのポケットに入っている砂金がその証拠です。すべては、現実なのです。そして、今、トムサムソン あなたが見ている未来は、夢ではないのです。現実です。アメシアスタンの本当の力、財力の根源は、古代文明の財宝なのではありません。古代文明の財宝など、巨大なビル一つ創るにも、足りないようなものです。確かに、一人の人間が遊んで暮らすには十分かもしれませんが、未来都市を造るのは、なんの役にもたちません。」
「あなたは、この旅で、アメシアスタンの本当の宝、力を探し当てるのです。そのために、あなたが生み出すべき、未来を見せたのです。」
「さあ、あなたの肉体に戻りましょう。息をゆっくり吸い込んで、心臓、肺、血液をゆっくり、ゆっくり動かしなさい。そうすれば、元の自分に戻れますよ。」
体をゆっくりおこし、立ち上がると、何もない広大な大草原が広がっていた。このような大草原があっても、ここで、農業をするといった人たちはいない。まだ、人口が少なすぎるし、アメシアスタンは基本的に商人の国なのだ。そう、あの古代都市も、商業と文明の交差点であったのだ。
アメシアスタンの本当に力は、周りの国々を繋ぐ商人の力なのかもしれなかった。




