表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
195/284

ゴードンの休日

たっぷりと寝すぎで、みんなに心配をかけたゴードンであったが、タンバ国の灼熱の太陽を浴びて、ようやく息を吹き返してきた。

朝、目をさますと、大きな湖が出来たという ルル湖に散歩に出かけた。タンバ国の自動運転車による交通網の整備は、驚くべきであった。アメリカでも、ヨーロッパでも、ここまで、整備された国は、見当たらないようだった。(ゴードンは、まだ、隣国大トンド国の実態を知らない)

どこへでも、自動運転車が連れていってくれるということだったが、さすがに、まだ、かっては判らず、朝日を浴びながら、ルル湖を目指してあるいていった。

フィンランドでも、妖怪と間違えられたほど、その動きははやく、まるで、駈けるように、もしくは、草原の動物のように移動していた。

 

ルル湖に到着すると、大きな湖には、水が満々と蓄えられ、朝日が湖面に反射で、黄金のような光を放っていた。そこだけ、タンバ国ではなかった。灼熱の砂漠と砂埃の世界ではなく、周辺には花々が咲きほこり、この湖の周囲には、農園がいくつか登場していた。

 そいうえば、首都タンバの大通りに面して、果物、野菜などの市場が出来たという噂をきいたのを思いだした。そうか、ここで、果物や野菜が作られているのらしかった。


この湖に飛び込みたかったが、ロジャー校長より、湖に飛び込んで泳ぐなよ と、釘を刺されているので、しばらく様子を見るしかない。

 そのうち、タンバ国の国民も、水泳を趣味にする人も増えるに違いない。それまで、時を待とう。


すると、湖の岸に、奇妙な乗り物ようなものをつけた。外見は、アヒルのような形をしていて、中にのると、自転車のペダルのようなものがあり、それを漕ぎ出すと、スワンボートは、ゆらゆらと岸を離れて、湖のちゅ中央に向かって動き出した。

まるで、風に流れているかのように、ユラユラと揺れていた。あまりに、ユラユラ揺れるので、ゴードンは、目が回りだして、気分が悪くなってきたが、なかなか、岸辺にもどることもできず、湖の半ばで立ち往生していた。スワンボートは、風に吹き流されて、ゴードンがスワンボートにのった、反対側についた。そして、ゴードンは、這い出るようにして、スワンボートから出てきた。

 岸辺の芝生で、大の字になって、空を見上げて、気分が落ち着くのをまっていると、小さな女の子たちが、走り去っていくのが見えた。


そして、湖を回りを見回すと、不思議なことに気が付いた。この周辺には、山もなく、川もない。南側にいくと、大きな砂漠があり、その向こうは、大トンド国だ。砂漠に、水があるわけがない。

 いったい、乾いた灼熱の大地と砂埃のような国に、どうして、こんな大きな湖が、忽然と出来たのだろうか。雨を集める方法もあるかもしれないが、アフリカ中央部のこの国の雨の少なさは、世界トップレベルだ。しかも、すぐ、向うは砂漠なのだ。

 いったい、どうやって、この湖を出現させたのだろうか?


しかし、この大きな湖のおかげで、カラカラの大地が、緑豊か農地に変わろうとしていた。

タンバ国の灼熱の大地は、あまりの陽の光が強すぎて、そして、水が少なすぎて、農地に成らなかったのだが、太陽光発電パネルが適度な日陰をつくり、そこに、水を供給することで、農地が生まれだしているのであった。潤沢生産され出した電力によって、町の近代化もすすみ、工場なども立ち始めた。

同時に、住宅の供給も進んでいる。灼熱の熱さをさえぎるためには、一体成型された発泡スチールの家が、どんどん建設されて、タンバ国の家は、丸いドーム形が基本になっている。

もちろん、コンクリートの立派なビルもたくさんあるのだが、個人の少人数の家には、丸いドームの発砲スチールの家が普及している。灼熱のタンバ国には、断熱性、密閉性に優れた発砲スチールの家は、最適で、大量生産にも優れていた。

タンバ国では、50件ほどが、1ユニットで、水道、電気を供給する。あまり、大規模なものはなく、小規模ユニット構成になっている。電気は、太陽光、風力、太陽熱から、生み出しいく。タンバ国には、水が少ないので、水は貴重だ。水は、完全リサイクル型で、捨てたりしない。使用した水なども、完全に濾過して、飲用にしていく。水の再生するためのエネルギーは、余った電力を使う。まだ、電気に余裕があれば、空気中からの水分の抽出も行う。水が、不足すると、国に注文して、タンクに供給してもらう。

一ユニットが、小さいので、水道工事も、電気工事も小規模で済む。


交通は、箱のような四角の自動運転電気自動車が、無秩序に動いている。人間による運転は禁止されているので、道路には、信号は存在しない。自動運転自動車は、それぞれの車同士で、通信しながら、最適化されているので、車同士の事故は存在しない。自転車やオートバイというのものも存在しない。

不意の人間動きや動物との出現が、混乱の原因になっている。

自動運転自動車は、人間のための道路には、進入することはない。


ゴードンは、これからの将来を考えていた。

タンバ国は、急速に変貌していた。未開の村が、突然の未来都市に変貌しているようであった。未開の村、未開の国が、突然22世紀の電気の世界に飛び込んでしまったようだ。

20世紀の蒸気機関、ガソリンエンジン、電話、真空管、ブラウン管という文明を経験することなく、自動運転電気自動車、スマホの世界になってしまった。

自動運転電気自動車は、ガソリンエンジン時代のスタイリッシュな自動車の雰囲気がまったくない、立方体のなんとも無骨なものでしかない。ガソリンエンジン自動車になれた人間には、これが、自動車といわれてもまったく、信じがたいものであった。

どういえばいいのだろうか? 馬のいない馬車の部分とうべきか、もしくは、電車向かい合わせの椅子が、切り取られ箱に収められているという感じなんである。

その箱の下のタイヤが、最適化されたルートを、実に無秩序に移動する。転がるように移動するのである。

自動運転自動車自体には、前後左右という概念を必要としてない。平面を単に、移動しているだけなのである。最短のルートで。確かに道路の上を走っているが、人間にとって、道路に見えるだけで、自動運転自動車には、道路という概念も、交通法規、交通ルールはない。

 アマゾンの巨大倉庫の中を、無秩序に動き回り、荷物を運ぶロボットと同じ無秩序さで、移動しているのだ。移動できる場所を移動している。移動できる場所であるかどうかは、GPSで判断しており、以前、移動できた場所は、今も移動可能なのである。

ワダチプロジェクトの真骨頂である。新しい道が整備されれが、それを初めの車が移動すれば、それが、新たな道になるだけのことである。


タンバ国と大トンド国の首都中心部の交通網は、またたくまに整備されたが、地方の都市や周辺の国々との交通をすべて、自動運転電気自動車が賄うことはできない。

しばらくは、人間の運転する自動車との自動運転自動車の相互乗り入れ部分は存在するが、徐々に自動運転電気自動車の勢力は拡大しつつあった。

 ガラケーの数が、どんどんへって、スマホの数が増えて行くのと同じで、時間に問題あった。


最大の脅威は、アメリカの自動車産業、ヨーロッパ、中国、日本といった自動車産業が、新たな規格の自動運転自動車を投入してくることであったが、タンバ国、大トンド国では、個人による自動車の所有は認めれないことになってしまった。

 自動車を所有する意味がまったくなくなってしまったのだ。旅行などに行きたいときは、ネットで予約をすれば、自動運転車が勝手に、やってくるし、予約をしなくても、空いている自動運転自動車は山ほどある。個人が所有する自動車は、そのほとんどが、駐車しているのだ。通勤などに使用するといっても、1時間、2時間つかうのが精一杯だ。すると、24時間中、1時間か、2時間しか使われないのだ。ところが、タクシーは、24時間のうち、20時間も走っている。20倍の利用率だ。

すると、個人が自動車所有する場合の、20分の1の台数があれば、需要を賄うことも可能になる。(まあ、屁理屈にちかい言い分だが。)

大トンド国やタンバ国では、年数万台程度の生産があれば、国家需要を満たしているので、アメリカやヨーロッパ、中国、日本といった大自動車産業は、大幅な生産激減に見舞われていた。

もう、年間1000万台も、2000万台も自動車を生産する必要がない。

全世界規模でも、需要が充足されはじめる年間100万台程度の生産があれば、十分ではないかと言われ始めていた。電車交通網も不要ではないかと言われ始めてきたが、自動運転電気自動車が長距離移動をどの程度可能にするのかが問題になりつつあった。


そんなことをいろいろ考えていると、ゴードンの頭の中で、ドローンが音を立てて、飛び跳ねていた。


ドローンを大型化し、自動運転飛行機をつくることが、今後、大きな課題になりそうだった。

太平洋や大陸横断のためには、現在の大型高速ジェット旅客機は当分、利用する他は無さそうだが、100km、200km程度の1、2時間程度の移動には、有人ドローンが良さそうだったが、まだ、いろいろな課題がありそうだった。

一番良さそうなのは、ムササビ方式かもしれない。高層ビルの屋上から、滑空用飛行機で、飛び出す方法である。燃料もあまり使わずに、目的地にたどり着ける。

そのための自動航行システムが必要だ。飛び出しは、高層ビルの屋上にしても、着陸はむずかしい。ムササビのように木に捕まえるという分けにはいかない。


現在のドローンには、上昇するプロペラがあるので、高層ビルの上空を使う必要はないかもしれない。

地上から、上空へ飛び上がればいい。しかし、人間を乗せたまま、垂直にプロペラだけで上昇するとなると、かなりの電力を必要とする。これが、問題かもしれない。

しかし、一端、上空に飛び出してしまえば、翼を広げて、滑空体制に入り、重力の力で、加速して移動することができる。

着陸時に、また、プロペラを出して着陸すればいい。

しかし、やはり、垂直に上昇するというのは、莫大なエネルギーがいるはずだ。ロケットやミサイルが莫大なエネルギーを使って上昇するのと同じエネルギーが必要なことはたしかだ。

飛行機が、長い滑走路をもって飛び立つのは、翼に発生する揚力の力を利用して、ジェットエンジンやプロペラエンジンで飛び立てているのであって、ジェットエンジンやプロペラエンジンのパワーで機体を持ちあげているわけではない。

ペリコプーターが、オスプレイも、揚力と無縁ではない。揚力の力で、重い機体を持ち上げている。


まったく、違う飛行原理はあるのだろうか?

ムササビメソッドの登場はあるのだろうか?


かんたんな思いつきで、なにかが、生まれたら、それはなにかが間違っている。


ゴードンは、仰向けに空を眺めながら、人間が、自由に空を移動する方法はないのだろうかと、ぼんやり考えていた。

と、すると、ミンミンが、寝転んでいるゴードンをみつけて、駆け足で近づいてきた。ミンミンは、ゴードンに気づかれないまま、ゴードンのお腹の上にダイブしてきた。

ミンミンの引き締まった体は以外にも軽かったが、無防備のゴードンには、かなりの衝撃だった。

びっくりした? と聞くので、ゴードンは、本当にびっくりしたのだった。

どうして、僕の居場所をミンミンは見つけ出したのだろうか。


ミンミンは笑って、ノンキア社製の最新スマホ ムーミンシリーズのスナフキンのスマホ人形を見せて笑っていた。

このスナフキンが、ゴードンの持っているムーミン人形の居場所を教えてくれたのよ。


そうか。このスナフキンが。


すると、エバは、ノンノを持っているので、僕の居場所は、あっというまに見つけてしまうに違いなかった。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ