ゴードンの帰国
フィンランドに雪が降り出し、湖の水面も凍りだしてしまうと、ゴードンの朝の散歩も、出かけにくくなった。分厚い防寒着をきて、大きなブーツをはいて、雪の上を散歩するのは、苦行に等しかった。そして、今日は、凍った道で、転んで、しばらく動けなくなった。このまま、だれにも、知られずに死んでしまうのか思ったら、ポケットの中にムーミンが、異変に気づいて、騒ぎだしたので、なんとか、気力を振り絞って、いつものレストランにたどり着いた。
よろよろと、ふらふらとある姿は、冬の亡霊、フィンランドの悪魔の雰囲気がただよっていた。なにか、黒い物があたかも、空中遊泳をしているような気味悪さであった。その姿をみつけたエバも、おもわず、声をあげて、かけよって、ゴードンの体を支える始末だった。
暖かいコーヒーを飲んで、一息ついたが、なかなか、元気は戻ってこなかった。
エバにとっても、慣れない雪道を歩くのに、苦労をしているようだった。
エバ「いつまで、フィンランドにいるつもり。」
ゴードン「いやなら、さっさと帰れば」
エバ「私は、会社の仕事として、あなたを監視しているんですからね。あなたのいるところにいる必要があるんです。」
ゴードン「地球にこんなに寒い場所があるとは、まったく、しらなかったよ。」
エバ「周りは、雪だらけ。湖の凍り付いてしまったし、海だって、凍っているんですもの。こんな場所がほんとうにあるなんて、来てみないとわからないね。」
ゴードン「灼熱の太陽が、体をこがすのが、懐かしい。あの太陽の下でないと、ぼくは生きて行けない気がする。」
エバ「スーパーマンの家は、北極の氷の家なんですって。」
ゴードン「まったく、とんでもやつのいるもんだ。そいつは氷を食べて生きているにちがない。」
エバ「そういえば、サンタクロースの季節だね。」
ゴードン「サンタクロースは、厚着をしているので、まあ、ゆるしてあげよう。」
エバ「どうするの?クリスマス。」
ゴードン「一人で過ごしたら、完全に、凍死しているにちがいないな。年明けまで生きている気がしない。」
エバ「で、どうするの?」
ゴードン「そろそろ、タンバ国に逃げ帰るかな」
エバ「逃げ帰るわけ?」
ゴードン「そう、逃げ帰るのさ」
エバ「いつ帰る?」
ゴードン「そうだな、今日、会社に、相談してみるよ。特に、ぼくがいなくなってもこまるような仕事もないし。ほとんど、あそんでいたようなものだから。」
エバ「そう。で、帰るときに、私に教えてね。で、提案があるんだけど、車で、ヨーロッパを横断して、地中海に出て、中東を回って、イスラエルによって、それから、エジプトに抜けて、タンバ国に行くというのは、どう?」
ゴードン「いったい、タンバ国につくのに、何ヶ月かかるんだい?」
エバ「そうね、最低でも一ヶ月、もしかすると、3ヶ月ぐらいかな?」
ゴードン「君の企みがわかったぞ。イスラエルについたら、車が故障するんだ。そして、いつまで経って物、車が直らないんだ。その間、僕においしい物をたべさせて、太らせて。。。気がつくと、10年、20年という時が過ぎているという計画じゃないだろうね。」
エバ「そうなると、いいんだけど。私とイスラエルで暮らさない?」
ゴードン「君は、いい人だと思うけど、君の頭の中は、会社のことと、イスラエルのことが、最優先で、そのことを中心にすべて考えているんだ。そこが大問題なんだ。君のとの結婚はできないよ。」
エバ「そうね。たしかに、そうね。あなたには、ミンミンがいるんだったね。」
ゴードン「ミンミンか。きっと、もう誰かと結婚しているさ。」
エバ「じゃ。飛行機で、イスラエルによってから、タンバ国にいったら。イスラエルの観光案内してあげるわよ。」
ゴードン「すると、僕がイスラエルから乗ろうとする飛行機は、どれも、故障して飛ばないんだ。その上、パスパートがなぜか、行方不明になるんだ。」
エバ「想像がたくましいのね。でも、あたっているかもね。」
ゴードン「僕は、一人で、タンバ国にかえることにするよ。」
エバ「じゃ、あんたが、ほんとうに、飛行機にのったか、確認したら、私も、イスラエルに帰ることにする。」