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トムサムソンの武者修行への旅

中央アジアの山並みの奥深くの位置する小国 アメシアスタンは、大国中国やロシアにとっても、あまり意味のない小国であった。小国というより、極小国で、都市国家のような人口1500万人程度の国であった。


首都 アメシアは、本当に10kmの円形の形をしていた。地質学者によれば、数百万年前に巨大隕石が落ちた跡で、中心部には、岡が出来ていた。

アメシアは、その3方を山々に囲まれ、西側のみに、交易の道が開かれており、北、東、南に行くには、険しい山道を通る必要があったが、最近は、道路も敷かれ、大きなトラックが行きかうようになったが、冬場は、ほとんど閉鎖状態であった。


来年は、7年に一度の大統領選挙は開催される準備がされていた。この国の大統領は、1期限りで、再選することはできないので、いつでも、新人が戦う場になっていたが、しかし、いままで、2度の選挙を行っただけで、今度が3度目の大統領選挙であった。


トム サムソンとポーラは、来年の大統領選挙に立候補するべきか、それとも、まず、地方選挙に出て、実績をあげて、次回、次々回の大統領選挙に望むべきか、検討をしていた。

たとえ、トムサムソンが優秀であっても、一人で選挙に勝てるわけはなく、それなりの実績や仲間作りが必要だった。

トム サムソンとポーラは、まず、アメシアスタンの本来望ましい姿を検討し、なにが問題なのか、分析をしてみることにした。


古代アメシア民族は、王朝の確立と古代遺跡が、いくつか残されている。立地の良さは、国の繁栄をもたらしたが、数十年、数百年に一度、大規模地震が発生し、古代遺跡、古代文明は、破壊されてしまうという悲劇が起きた。気候は温暖だが、過ごしやすいが、巨大隕石の跡地なので、大雨による山からの土石流によって、首都が洪水で埋没するという出来事も何度かあった。しかし、その分、国土は肥沃で、農作物が豊富でもあった。

その結果、首都アメシアは、中央部に農地で、周辺に円形に町が点在する構造になっている。

一時期ソビエト共和国の時代に王政が廃止され、共産党支配が行われたが、ソビエト崩壊に伴い、独立国家して、独立したが、いくつかの民族対立を経て、共和国となり、2代目の大統領の治世である。

大統領の任期は、法律で、1期7年のみと定められており、再選はないので、その7年間のみである。すると、トム サムソンは、今回、大統領に立候補して、もし、仮に勝てたとしても、議会や地方の首長たちから協力をとりつけて、国家を運営していくのは難しい。やはり、長年の実績と信頼関係の実績が必要だ。もしくは、今回は、有力候補の応援という立場で、それなりの働きをすれば、選挙の功労者として、それなりのポジションを得ることができるかもしれない。その実績を積み上げて、次回、次々回の大統領選挙に出ることも検討すべきかもしれなかった。


地方の首長選挙にでて、まず、当選したのちに、いろいろな政治的実験を行い、その実績をもって、中央の政界に進出する方法も考えられた。


いくら、政治家秘書ロボットが優秀であっても、一国の大統領選挙に勝つというのは、無謀な挑戦かもしれなかった。


トムサムソン「ポーラ。次の大統領選挙に立候補すべきだろうか?」

ポーラ「アメシアスタンの大統領の任期は7年で、1回しかできず、再選はありません。それ故に、この国の大統領選挙は、新人同士の戦いになりますが、大統領候補になるためには、政党や地方の政治団体の支援が必要でしょう。今、仮に、トムサムソンが立候補して、すばらしい演説で、国民の注意を引きつけたとしても、実績もなく、政党の支援もないトムサムソンには、どんなに頑張っても数千票の得票しか入らないでしょう。政党をバックにした候補者には、数百万票の得票があるでしょう。」

トムサムソン「勝ち目はないな。」

ポーラ「ゲリラ戦法がないわけではありません。まず、小さな村で、政党決起集会を行い、民衆も不満をうまく集約して、大きな町、大きな市へと、行進をしながら、巨大な流れを生み出す方法です。強烈なカリスマと人民の心の掌握術に長けている必要があります。しかし、そのような行進を生み出すほどの不満が民衆に渦巻いているのかというと、それほどではないと思います。この国では、民衆の不満をあおってみても、さほど、うまくいくようにはおもいません。残された道は、正攻法が一番問題ないように思いますし、大統領になっても、多くの協力を得られます。」

トムサムソン「あせって、この国の大統領になっても、良いことはないということだな。それに、7年の任期しかなければ、その7年をどう生かすのか、プランが必要だな。」

ポーラ「国家を繁栄させる秘訣はあるのです。」

トムサムソン「どんな秘訣だ。」

ポーラ「とても単純なのです。国民の力を引き出すだけでいいんです。国民が、希望をもって、元気に活躍できれば、自然に国家は反映するのです。現在、社会の変化は非常にめまぐるしいので、5年、10年というスパンで大変化が発生します。同時に、その繁栄は瞬く間に広がり、ピークを迎え、次なるステップに行くのです。」

トムサムソン「それは、どういうことだ?」

ポーラ「ここに、最貧国があったとします。この最貧国の可能性は、人件費が限りなくゼロに近いので、人手のかかる仕事をとても安く行うことができます。しかし、その仕事を得ることによって、最貧国を脱して、それなりの人件費を必要な国になると、いままであった人手のかかる仕事は、別の最貧国の人件費のかからない国に流れていってしまいます。すると、最初の最貧国は、もう、最貧国ではないので、知的仕事や更なる高収益をあげる仕事に移動することになります。すると、また、人件費が高くなり、次の仕事も、他の国へ移動します。それを順繰りに繰り返していくと、ついには、人件費以上の生産ができなくなってしまう状況に突入します。そうすると、かつてのような活発な発達ができなくなります。」

トムサムソン「ということは、最貧国から脱しても、次の段階、次の段階に移動して、どこかで、労働と賃金のバランスが逆転して、発展が停止してしまうということかな。」

ポーラ「そうなのです。インフレやデフレという概念もここに登場して、今の国家発展モデルをより複雑化し、国家間に問題も絡んでくるので、ますます実態は混迷するのです。」

トムサムソン「ますます、複雑化するのだな。」

ポーラ「その上、人間の一生は、60年から100年に長きものです。国家の成長期、停滞期、衰退期を、一生のうちに経験する人も多いはずなのです。衰退期に突入した国家を立て直すのは、非常に難しい問題があります。」

「・・・」

ポーラ「生物学的にも、国家は安定してくると、人工の増加が止まり始め、出産が減少傾向に向かいます。出産は、不思議なことに、食料危機や経済危機などの種の存続を脅かす状況が発生すると、経済論理を無視した状態で活発化し、国家が安定すると、出産は減少します。それは、トノサマバッタの大群は発生する状況に似ていて、種の生存の危機には、種の保存のために、大量発生するのに似ています。食料が豊富な時には、トノサマバッタは、大量に発生することはないのですが、食料危機がせまると大量に発生して、少ない食料をすべて食べつくしてしまうと負の連鎖は発生してしまいます。」

「・・・」

ポーラ「さて、この国は、今後しばらくは、急成長期を迎え、停滞期に突入し、衰退期を迎えますが、トムサムソン、どこの場面で大統領を担いますか? 急成長期は楽しい時代です。停滞期といっても、それまでの蓄積があるので、はた目には、さほど、大きな変化はないかもしれません。真面目に対応すれば、そこそこの治世となると思います。衰退期になると、老齢化人口が増加し、働ける若者が少なくなります。国家に力がなくなり、混乱を呼び込むことになります。国家としての成熟度が、益々成熟して、法制度が強固になり、自由になにか行おうとする若者の力を奪い去ってしまいます。法の眼がどんどん細かくなって、どんな些細なことも、法を意識しないとできなくなってしまいます。とにかく、法やあらゆることを支配します。すると、そろそろ、新しい国家モデルが必要になります。しかし、ここでも、一国だけではどうしようもない、たくさんの国家間の条約や協定などで、一国ではなにもできない状況にもなってします。」

トムサムソン「おい、ポーラ。わしに、おじいさんになってから、この国の衰退期に大統領になって衰退期を救済しろと、言っているのではないだろうな。それに、この国の国家の衰退がいったい、わしが生きている内に起きるのかもまったくわからんじゃないか。」

ポーラ「そこまでは言っているつもりはないのですが、国家には、発展、停滞、衰退というサイクルで動いて、そして、新しい国家モデルが登場して、次の発展、停滞、衰退が起き、永遠に発展し続けることはないのです。それに一国だけが、飛び抜けて発展してしまうと、周りの国や大国の干渉を受けやすくなるので、バランス感覚は必要です。一人勝ちして、周辺国を赤字に追い込んでしまうことも、大きな問題になり、最悪の場合は、戦争を誘発することもあるかもしれません。バランスよく、共存、共栄を目指す必要もあります。」

トムサムソン「次の大統領選挙には、練習のつもりで、出てみるか。まずは、大統領選挙とは、どのようなものか、実際経験してみようじゃないか。そして、何度か、挑戦して、大統領になれるまで、挑戦してみようじゃないか。トムサムソンここにありじゃ。」

ポーラ「では、得票数の目標を決めてみませんか。1万から2万取れれば、初戦は大成功だと思いますが。」

トムサムソン「たしかに、1万、2万取れれば大成功かもしれない。同時に、アメシアスタン国全体に、トムサムソンの存在を知らしめる一番安上がりで、効果的な方法だ。有力候補を、討論で、打ち負かせたら、こりゃすごいぞ。」

ポーラ「まあ、とんでもないことを想像しているんですね。たのもしい限りです。」

トムサムソン「では、10万票を目指して、明日から、武者修行にでるぞ。この国を、隅から隅まで調べるぞ。そして、この国の可能性を見つけ出してやる。」

ポーラ「私は、ロボットですので、トムサムソンのように、移動することはできません。私は、この家でトムサムソン、あなたの帰りを待っていますので、困った時は、テレビ電話をくださいな。可能な限り、あなたを応援しますよ。立候補の届の日までには、お戻りください。そこから、10万票獲得大作戦を行いましょう。アメシアスタンに、未来の大統領、トムサムソンの登場を宣言する日になりますよ。」







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