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無料コーヒー店のお客様 立派になったロバート

無料コーヒー店の朝は早い。開店前に、トーゴ大統領が、やってきて、ムーンライト相手に、おしゃべりをするのが日課になっている。最近は、大トンド国も、ムーンライトが予測したように、国家経済が、倍増、倍増と急成長している。

小国タンバ国とはちがい、大トンド国は、何十倍もの国土をもち、資源や気候に恵まれている。タンバ国同様に、灼熱と砂漠と岩石の国なのだが、たくさんの山岳地帯をもち、そこから、いくつもの大河が流れて、その川の流域は、緑を蓄えている。しかし、あまり平原はなく、切り立った谷の底を流れる川の水は、あまり農地を生み出さなかったが、ムーンライトの提案を実現したことによって、広大な農地が瞬く間に開墾されていった。

トーゴ大統領は、コーヒーを飲み干すと、大きな背伸びをして、ムーンライトに、かるく声をかけてから、大統領官邸の方に、歩いて行った。


静寂の時がきて、若造が、開店のための準備をもくもくと始めている。コーヒー豆のひく音が、静かに響いていた。


無料コーヒー店の前に、大トンド国特有に立方体のような形をした自動運転電気自動車が、音もなくやってきて、停止した。大トンド国には、何十万台という規模の電気自動車が、街中を動きまわり、人は自由に載って移動している。スマホで、自動運転車の要求をすると、近くの空いている自動運転車が音もなく使づいてきて、お客を乗せている。そして、利用が終わると、また、どこかへいって待機している。街中には、充電用電気自動車も走りまわり、電気が不足してきた電気自動車に連結して、電気の不足で電気自動車が止まることもなく走ることを可能にしている。

大きな公共機関やデパートでは、一人のりの電気自動車は、建物の中まで入って行き、オフィスや売り場まで、連れて行き、そして、用事が済むまで、近くで待機するという方式を採用する建物まで、出現してきた。エスカレータに似に長いスロープを一人のり電気自動車が登っていくのである。

一人乗り電気自動車は、基本的に、立ったまま一人が乗っているというイメージで、一見、公衆電話のようなボックスが走っているように見える。この国には、自転車やバイクというものは存在しない。そのかわり、一人のり電気自動車が活躍している。全ての電気自動車は、所有という概念はなく、必要な時に、乗るという公共交通機関である。そのため、駐車して待つという概念がない。好きな時に乗り、好きな時に、乗り捨てる。すると、これらの電気自動車は、待機場所に自動的に戻っていき、次の利用者を待つ。基本的には、公共の場所に駐車場というものは、存在しない。電気自動車は、不要な時は、待機場所で待っている。ただし、電気自動車の数も非常に多いので、待機場所が駐車場だとみなせば、かなりのスペースを必要としているのは、確かである。



開店の時間を少しすぎたころ、入り口のドアを静かに押して、3人に男が入ってきた。帽子をかぶり、スーツに身をつつんで、いかにも金持ちそうにみえた。

太っているのかと一瞬おもったが、鍛えた筋肉であることがわかる。


ムーンライトは、いつもの明るい声で、いらっしゃいと、声をかけた。


3人は、一つのテーブルに座り、なにやら書類を見ながら、話始めた。簡単な打ち合わせを終えると、コーヒー3つと、声をだした。

若造が、大きなカップにコーヒーをなみなみと入れて持ってきた。

ムーンライトは、中央の体格の良い男に声をかけた。

「立派になられましたね、ロバートさん」

「やあ、ムーンライト。あんたの勧めで、農家のおじさんになったぞ。おかげで、大成功したぞ。」

「それは、良かったですね。今日は、何か、こちらにご用ですか?」

「わしの元部下たちを、独立した農家のおじさんにしようと、今日は、役所に申請に来たのだ。農家ファミリーをどんどん増やそうと思ってね。」

「そうですか。それは、良かったですね。役所が始まるまで、どうぞ、ゆっくりコーヒーを飲んでいってください。おかわり自由ですよ。大トンド国は、水が豊かにあるので、食料をどんどん作れるのが、いいですね。ロバートさんたちの活躍で、何もなかった大地が、緑の大地に変わっていきます。素敵なことですわ。これからも頑張ってください。」

「そうだな。おかげで、可愛い嫁さんをもらったぞ。子供はもうできないかもしれないが、楽しいぞ。」

「それは、ますます、嬉しいことですね。幸せは、人も、国も、豊かにします。素晴らしいことです。幸せのおすそ分けをどんどんしてあげてください。」




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