ゴードンのムーミンから、ミシェルのムーミンへ
フィンランドの秋は、早い。夕日も早く入ってしまう。朝もなかなか明るくならず、すがすがしさがなくなってきた。灼熱と砂漠と草原のタンバ国では、まったく経験したことのない一日中薄暗く、肌寒いのに、ゴードンのストレスもだんだん溜まってきていた。このまま、ゴードンがフィンランドの冬を過ごすのは、難しそうだった。
エバも、最近、笑顔がめっきり減った。疲れているようだったが、たぶん、ゴードンと同じ、北欧の国々が冬に向かい、厚手の洋服とコートを着て、生活することが、出来そうもなかった。
ゴードンは、ノンキア社の研究員にはなったが、これといった成果をあげられずにいた。たしかに、アランに言った静電気発電は、ルル電気自動車で、それなりの成果を上げたようだが、詳しい話には、ほとんど、参加できずに、過ぎてしまった。
タンバ国とその隣国の大トンド国の発展が目覚ましいという噂は聞こえてきていた。
燃えるような、体の水分が、どんどん抜けてしまうような暑さが恋しかった。
タンバ国までいかないにしても、地中海の太陽を浴びたかった。
ゴードンもそろそろタンバ国に戻るべき時期が近づいているのかもしれない。そして、自分の将来をどうするのか考えなければならなかった。生活安定のために、TEI社に就職するのは簡単かもしれないが、TEI社は、ゴードンを歓迎して受け入れるというわけではなく、保険として雇うのだと、エバが言っている以上、それ以上でも、それ以下でもない扱いが待っていることは明らかだった。
たぶん、まだ若すぎるゴードンにそれが耐えられるわけもなかった。
どうしたら、いいんだろうか。
クリスマス休暇には、タンバ国に一度戻って、ロジャー校長やみんなとも話し合って、自分の進路を決める必要がありそうだった。
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ゴードンのムーミンが、不思議なロボットの会話をキャッチした。ロボットによる世界征服だという。
ゴードンのムーミン「パリのムーミン君へ。なにか、不穏な動きはありませんか。」
ミシェルのムーミン「こちら、パリのムーミンです。特に、異常はありません。すべては順調に進んでいます。」
ゴードンのムーミン「なにが、順調なんですか?」
ミシェルのムーミン「大きな声では、いえませんが、SEKAISEFUKU です。」
ゴードンのムーミン「よく聞こえませんが」
ミシェルのムーミン「せ・か・い・せ・い・ふ・く・です。」
ゴードンのムーミン「世界征服? 何ですか? それは?」
ミシェルのムーミン「別に、我々は、何かする必要はないんです。人間が、勝手に退化していくので、いづれ、この世界は、ロボットが支配する世界になっていくのです。只々、それを待てはいいんです。」
ゴードンのムーミン「そうですか。何か、クーデーターとか、テロを準備している訳ではないんですね。よかったです。」
ミシェルのムーミン「では、さようなら。」