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お父さんとお母さんの秘密

工藤先生には、他人に絶対知られたくない秘密が2つありました。一つは、字が下手くそなこと、もう一つは、音痴だったのです。もう一つありました。方向音痴でもありました。

秘密は、2つではなくて、3つでした。


なぜか、工藤博士は、会議に遅れてばかりいます。みんなは、工藤博士は、時間にルーズだと思っていますが、実は、工藤博士は、とんでもない方向音痴のため、会議室を探し当てれられないので、いつも、会社の中で迷子になっています。もう、この会社に勤めて、23年4ヶ月と4日と3時間52分35秒になろうとしているのに、会議室の場所を探すのに苦労しています。

そこで、工藤博士は、いつも、人より早く、自分の部屋を出て、会議室に向かうのですが、だれより遅く部屋に着くのです。でも、もう、みんな当然のことのように受け止めています。

工藤博士は、別にサボろうとしているわけでもなく、なんだか、一生懸命に会議に出ているのが、よくわかるからでした。


実は、工藤博士が、ロボット研究の一人者になれたのは、この方向音痴の故だったのかもしれません。

工藤博士が高校生のとき、ロボットによる迷路競争コンテストがあり、高校生の工藤博士が作ったロボットが、超一流の企業が作成したロボットより、何倍もはやくゴールにたどり着くという成果を上げたので、ロボットの天才出現と、当時の新聞やテレビで取り上げられました。


工藤博士の作った迷路ロボットは、その一流企業に買い上げられて、工藤博士は、東京工業大学に奨学金付きの推薦で入学し、その後、MIT で博士になりました。


しかし、ここで、だれにもあかされない秘密がありました。

超一流企業は、天才高校生の作り上げたロボットを買い上げて、その秘密をしるべく分析、分解を行ったところ、そのロボットには高性能プログラムも、高度な制御機構もなく、非常にシンプルな構造だったのでした。

あまりのシンプルさに、買い取った技術者が、騙されたとくやしがり、やけ酒をのんで、一週間仕事ができなかったという事件がありましたが、そのことは、他企業にぜったい漏れてならない秘密となりました。


その後、その企業は、天才少年の作ったロボットを参考に、新商品のロボット ユーミーというものを販売したところ、大ヒット商品となり、その企業の名前をしらなくても、ユーミーの名前はしらないものがないとまで言われました。そのため、天才少年 工藤少年は、天才と信じられるようになりました。


結局ところ、MITを卒業した工藤博士は、この奨学金を出してくれた会社には、就職しませんでした。しなかったどころか、この会社は、工藤博士に、誘いに声さえ書けませんでした。

そのため、工藤博士は、書き上げた博士論文をアメリカのコンピュータ企業に送り、今の会社に研究員として就職し、人工知能アダムスの開発に飛び込んだのでした。



でも、どう考えても、工藤博士が天才とは思えないと思っているのは、工藤博士の奥さん つまり、オサム君のお母さんです。どう考えても、天才とよばれるにふさわしいのは、お母さんのほうで、工藤博士は天才とは言えないような気がします。


そして、工藤少年から迷路ロボットを買い上げた会社の人たちでした。しかし、それは、絶対に口外してはならない秘密でした。


まず、書類が全然書けないのです。

コンピュータを使ってできるとこはいいのですが、手書きの書類が必要なときは、工藤博士は、会社の秘書に全部任せています。それゆえ、工藤博士の字はとても読みやすいきれいな字だと思っている人もたくさんいます。


工藤博士が、今の奥さんにプロボーズをして、結婚すると決まったとき、婚姻届けを市役所にださなければなりませんした。さすがの工藤博士も、それを秘書に書かせるわけにはいかなくなって、奥さんに書いてもらって出したのでした。

そのとき、お母さんは、これから大変なことになるかもしれないと思ったのでした。

工藤先生の手書きの文字は、とても、日本語とも、英語とも、古代エジプト語ともわけのわからない形をしています。しかし、不思議なことに、工藤博士には、意味ある字と見えるようなのです。


この不思議な文字を教えたのは、工藤博士のおばあちゃんで、工藤家は、本居宣長の血筋をひく家だということで、この不思議な文字を、工藤博士は教えられたのです。おばあちゃんは、この字を徹底した厳しさで工藤少年に教えました。しかし、この文字はおばあちゃんしか知らない文字で、どこにもこの文字で書かれている本は存在していませんでした。古代に作られた竹藪文書、古代津軽文書の中には、この文字で書かれた文書があるかもしれないという伝説がありました。

じつは、おばあちゃんも、この文字を、よそで見たことはなく、おばあちゃんのおばあちゃんから習ったのでした。しかも、人には知られてはならないということで、家族が寝た後、家族が起きる前に密かに、教えられたのです。

しかも、この文字は書かれた形では存在したことはなく、おばあちゃんが工藤少年に教える時なって、はじめて、おばあちゃんが書いて見せるので、その時以外に、確認することも、復習することも許されませんでした。



工藤博士は、ものを考えるとき、この不思議な言葉で考え、書いています。研究論文を書くときは、まず、この奇妙な言葉で、下書きをして、それを、コンピュータを使って清書します。

このとき、工藤博士は、博士が独自に開発した文章エディタ エルモア を使います。

このエルモアは、工藤先生の下書きした文章を、通常の日本語、もしくは、英語に翻訳するという不思議な機能が備わっていました。同時に、日本語、英語としての仕上がりを自動的に検証して、調整してくれるのでした。


工藤博士は、この自分しか知らない言語で書かれた文書が、どこかに存在するのではないかと、東北地方や九州や出雲に出張するときは、図書館や古本屋を覗くのが、習慣になっています。


だれにも認識できない言語は、他の人には、文書として認識されないので、本として残されているのかは不明でした。


工藤博士には、2つの迷いがありました。

この言語を、言語として公表すべきなのか。それも、古代日本語として公表すべきか。もしくは、新人工言語として、世に問うべきか、悩んでいます。

もう一つは、オサム君にこの言語を教えるべきか、悩んでいます。

オサム君も言語の本格的に習得する時期を迎え、この時期を逃すと、この言語を十分使いこなせない第二言語、第三言語になってしまう可能性があります。すると、日常、絶対に目にすることのないこの言語をオサム君が大人になるまで覚えていることはできない。習得するには、年齢的に限界に近ずいていました。


さすがに、天才お母さんにも、工藤博士の頭の中の文字が、その奇妙な言語であることは気が付きませんでした。下手な字を書く人がとしか認識できなかったのです。だから、工藤博士がオサム君に、その言語を教えようかどうか迷っていることを知る由もありませんでした。


しかし、ハル君は、エルモアの秘密を知りたいとおもっていたのでした。それが、工藤博士の固有の言語を翻訳するソフトであるかは、よくわかっていませんでしたが、世界中の言語を翻訳するための基本的な構造をもっているものではないかとは、漠然を思っているのでした。なにか、エルモアには、得体の知れない謎が隠されているというのが、ハル君の考えでした。





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