湖にはスワンボートがなくちゃいけない。
大トンド国のトーゴ大統領と、ロハハ大統領の会談によって、トンド国より、砂漠を越えて、水のパイプラインが敷設された。
砂漠の砂を2メートルほど掘り下げて、どんどんパイプをつなげて、なんと、10日あまりで、30kmの砂漠にパイプラインを埋めてしまった。砂漠は一見苛酷な環境だが、砂地なので、作業はどんどんはかどってしまったようだ。
水がどんどん供給されると、池というより湖の様相になってきた。
湖の整備もどんどん進み、防水シート、堤も作られ、花の咲く木々や草が植えられた。砂漠と灼熱のタンバ国とは思えない風景が出現した。湖も周囲も10kmほどあり、タンバ国では最大の人口の湖となった。
アランが、日本の池や湖には、ボートやスワンボートがあるというと、ルル電気自動車会社が足こぎスワンボートと電動スワンボートを5台試作して、提供すると言い出した。もちろん、電動スワンボートだといっても、足こぎボートと同じ程度の速度しかでない。
タンバ国では、泳げる人は、殆どいないので、この湖の横には、プールも作られ、水泳の練習もできるようにあった。タンバ国は内陸の国なので、ライオン、キリン、ゾウはよく見かけるが、魚、カニ、エビというものを見たことのない人だらけだ。たぶん、ちゃんと、エビやカニを見たのは、アランやゴードンぐらいだろう。
そこで、湖のホテルには、小さな水族館として、水槽の中に、魚やカニ、エビなどの入れて公開している。
その小さな水族館は、さながら、お化け屋敷のような場所になり、カニが動いた、エビがはねたなど、悲鳴が鳴り響いていた。しかし、その怖さを見たさに、いつも、長蛇の列をなしていた。
トーゴ大統領は、水は、食料増産の農地の整備に使われるのだと思っていたのだが、トンド国から輸出されて水は、砂漠の中を潜り抜けて、タンバ国の首都タンタンバの南に、広大な湖を作って、一大レジャーランドをしてしまったのには、あきれてものがいえない感じであった。
タンバ国の考えていることは何時も、予想外のことばかりだ。
でも、トンド国の水で、素敵な湖が出来たことは、ムーンライトも喜んでくれるに違いなかった。