新交通システム クドーメソッドに、地図などいらない
ルル電気自動車株式会社の自動運転開発室にて。
ドイツの技術者が、自動運転自動車の設計コンセプトを話していた。
アランが、長い足を、窮屈そうに組んで、ドイツの技術者の向こうに見える窓の外を眺めている。
「これだから、ドイツ人は、始末に悪い。」
「まず、最初に、タンバ国中の詳細の道路地図と交差点の信号システムを完全に制御する技術が必要だ。信号システムには、各自動車に信号を送り、各自動車は、GPSを正確に受信して、その位置を、信号機に送りながら、通過する速度を決める。。。。 正確な情報が。。。。一つづつ判断して。。。。」
あまりにも複雑なシステムを作ろうとしているようだった。百年立っても、できそうもなかった。
アランは、うっかり、こっくりとした。
すると、技術者から、鋭い声が飛んだ。「アラン君、何か、良いアイデアがあるかな?」
すると、アランは、折りたたんだ体を伸ばして、立ち上がり、前に出て行った。
「そんなことをしていると、日本の自動車メーカーに、抜かれますよ。でも、多分、日本の自動車メーカーは、素晴らしいアイデアは、たくさんあるし、実現できる技術もあるが、どんなに素晴らしい技術も、実績がないの一点張りで、政府が許可しないので、ほとんど、心配ありません。」
「クドーメソッドのことを知りたいと、お聞きしましたが、新交通システムのクドーメソッドには、地図も、信号機も何も入りません。」
「お前は、何を開発しようとしているか、わかっているのか?自動運転自動車を作る話をしているんだぞ。地図や信号がなくて、どうやって自動車が走るんだ。お前は、バカだ、大馬鹿だ。なんで、お前が、ここにいるんだ。何かの間違いだ。」
「クドーメソッドの秘密を知りたいのではありませんか?」
「お前は、クドーメソッドの秘密を知っているのか?」
「もちろんです。クドーメソッドは、こうなのです。」
と言って、アランは、ホワイトボードに、めちゃくちゃな線を次々と書いた。5歳の子供でも、書かないようなめちゃくちゃぶりだった。
ドイツの技術者は、呆れ果てて、「もういい。いつまで、ホワイトボードに、めちゃくちゃな線を描き続けるのかな。帰れ! 日本に帰れ! お前を見ていると、こちらの頭が、おかしくなる。正常な考えができなくなる。お前は、ただのノイズだ。帰れ!!」
アランは、ペンを止めて、「これが、自動運転の地図、クドーメソッドの秘密です。」と言った。
技術者は、「お前は、バカだ、帰れ。日本に帰れ!!」と、怒鳴った。
すると、アランは、落ち着いて、「この線は、車が、タンバ国を走ったタイヤの跡です。自動車が、道路の上を走るので、この線は、タンバ国の道路を正確に、反映しています。自動運転車は、この線の上をただ、走るだけで、安全に、目的地にいけます。それが、百本、千本、1万本と重なれば、ますます、信頼の高い道路だということがわかります。自動車は、道路の上しか走れないので、この線から外れない限り、安全です。周囲に何があるか、知る必要はありません。だから、自動運転車には、地図など必要ないのです、車は走ったことの痕跡、タイヤの跡というべき、情報があればいいのです。そして、その情報は、自動運転車が走れば走るほど、安全性の高い情報に、自然になって行くのです。」
主任技師「面白い。周囲の状況を判断する必要がないわけだ。制御プログラムも、いま検討しているシステムの1万分の1の大きさになるし、もしかすると、制御、プログラムらしいものはいらないかもしれない。それが、クドーメソッドの秘密だったのか?」
アラン「もちろん、クドーメソッドだけでは、自動車は走ることはできません。人の存在、対向車の存在、自転車、バイクというものの存在も感知して制御する必要があります。しかし、自動車がどこを走ったら良いかは、すでに走った自動車のデータがあれば、それと同じタイヤの跡を走ればいいだけなのです。前の自動車と同じスピードで。」
主任技師「その感知システムがあれば、信号機も不要だということだな。」
アラン「そうなのです。地図や信号機は、人間にとっては、必要なのですが、自動運転車には、必要はありません。感知するシステムがあれば、画像認識技術さえ、不要になります。ただし、予想外の出来事もありますから、ある程度の画像認識技術は必要ですが、本来、不要なものです。」
技術者「こいつの頭はやはり変です。地図も、信号も、画像認識技術もいらない。そんなバカなことはあり得ない。今まで、私たちが研究してきたことが、無駄になってしまうではないか?」
アラン「無駄とは言いませんが、クドーメソッドを中核に考えれば、補助的機能と言っても、過言ではありませんね。」
主任技師「面白い、実に面白い。クドーメソッドとは、恐るべき発想だ。確かに、それにかけてみるのもいいだろう。まず、ルル市をくまなく、自動車で走り回って、それで、本当に地図がなくても、自動運転に必要な情報が集まるか、試してみよう。もしかすると、クドー少年の見つけたというクドーメソッドは、とんでもない技術かもしれん。恐るべし。」
アラン「そのクドー少年は、私の先生のドクター クドーです。」
主任技師「やはり、そうだったか」
技師「あのー私のプレゼンは、どうなったのでしょうか?続けてもよろしいでしょうか?」
主任技師「いや。もういい。それより、車の運転のできる人間を、会社中から集めて、とにかく、明日から一週間、ルル市中を何度でも、走らせて、まず、データを取ろう。話は、それからだ。」
技師「まだ、ルル市のカーナビ用の地図ができていませんが。」
主任技師「そんなものはいらないと、アランが言ったばかりではないか。とにかく、どこでも、いいし、どんな経路でいいから、ルル市をくまなく走りまわってこい。あのホワイトボードの線みたいになるように、くまなく走るのだぞ。」
技師「そんなことで、自動運転車ができるわけがない。アランに絶対騙されているんだ。」