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ルル族の電気自動車工場建設

ルル族の若き市長は、電気自動車工場を誘致して、電気自動車の生産することを決意した。


ルル族は、未開の民族の思われていたが、タンバ国の近代化政策によって、タンバ国の秘境の民族といわれたルル族であったが、ルルンバ山の鉱山開発によって、タンバ国一の近代民族に変貌しようとしていた。

長老たちを差し置いて、市長に選ばれた若者は、ルル族の地に自動車産業を誘致しようとした。道路もろく整備されていないタンバ国で、自動車が売れるとは思えなかったが、移動手段が、中古のオンボロバスだけという現実を見て、タンバ国に、自動車を普及させようと誓ったのだった。

これからの時代に、ガソリンエンジンの自動車を普及させることはできないと思った若き市長は、電気自動車の誘致を心に決めていた。しかも、自動運転技術と道路交通網を一緒に、普及させようとしていた。まだ、タンバ国の自動車は、数千台程度で、電気自動車の普及は、今後の発展にかかっていた。


 最初、中国と韓国の連合企業が、提案を持ってきたが、生産規模を聞くと、販売見込みが少なすぎると、提案を引っ込めてしまった。問題は、タンバ国には、海のない内陸の国であったため、大量生産した場合の輸出するのが難しいという問題があった。資材の輸入などに、港を持っていないことは、致命的な弱点だと指摘された。しかも、ルルンバ山は、タンバ国北部に存在しているので輸送コストがかかると分析されていた。アメリカの自動車会社は、提案すらなかった。


 日本にいるアランに、日本の自動車会社の調査を依頼したが、政治の安定していない国に、工場を進出させることはできないの一点張りで、計画書すら、日本の自動車会社に提案することすらできなかった。


 南アフリカで、旧英連邦と日本向けに自動車を生産しているドイツの自動車会社が新たな電気自動車に開発のために、電気自動車の研究開発拠点と小規模生産体制を作っても良いという提案をしてきた。

 しかも、その自動車会社は、新たなナビと自動運転技術を開発する実験プロジェクトだという。

 

そこの自動車会社の技術担当者が、ルル族の市長に語ったことには、新自動運転技術は、クドーメソッドと呼ばれる30数年前に、日本で特許が取られた不思議な技術に着目しているという。その技術の詳細は不明だが、昆虫の動きをシミュレートした自動運転技術で、日本の少年が、自動運転自動車の迷路走行を、他の参加者に比べて、とんでもない速度で、走破したという幻の技術だということだった。当時の実験では、迷路を色々なパターンに変えても、どのパターンでも、最速の結果を出したと、報告されているという。しかし、それほど画期的な技術であったらしいが、その後は、ほとんど研究されていないということだった。我々は、自動運転技術に昆虫の動きを参考にした研究を進めているという。


ルル族の若き市長が、最近、ルルンバ山の登山をした、日本人がいたことを思い出して、調べると、ドクター クドウで、日本のコンピュータ学者だということだった。

クドーとクドウは、何か、似ているかもしれない。案内した人間が、アランで、若きコンピュータ研究者ということがわかると、ドイツの自動車会社の技術担当者が、奇妙な興味を示し始めた。


ドイツの会社が、ルルンバ山に麓に電気自動車の研究開発拠点と小規模生産体制を作る条件として、提案したのは、日本に行っているアランを自動運転技術者と雇用したいと書かれていた。


困ったルル族の若き市長が、科学技術大学の校長のロジャーの相談すると、アランに話していると言ってくれた。


ロジャーより アランへのメール。


アラン君へ

ルルンバ山の麓に進出を予定しているドイツの電気自動車会社が、君を雇用したいと申し出ているが、可能ですか。

待遇は、非常に良いです。ドクター クドーと相談して、返事をください。


アランは、日本を離れなくなかったが、タンバ国の発展のため、5年間は、頑張ろうと決めた。


アランのお別れ会が、工藤家で開催され、お寿司パーティーとなった。

おじいちゃんも、おばあちゃんもやってきて、大にぎわいのお別れパーティーとなった。

しかし、一番、がっかりしているというのか、残念がっているのが、なんとおばあちゃんで、涙ぐんで、何度も何度もアランの手を握って、病気をするんじゃないあよ、いやになったら、いつでも、日本に戻っておいでと繰り返して言った。

 工藤家のリーダーのように、気丈夫なおばあちゃんが、今にも泣き出しそうなのを我慢しているのをみると、工藤博士も、お母さんも、あまりの光景に、何も言えずに、アランとおばあちゃんを見守っていた。

お母さんにとっては、アランの登場以来、おばあちゃんの見せる様子にただひたすらにびっくりするばかりの連続であった。


お母さんは、アランに、タロウのお母さんに渡して欲しいと、小さな古い英語の絵本を渡した。奇妙にフニャフニャした本で、表紙には、頭にアンテナをつけたような少年の絵が書かれていた。アランは、もしかすると、この少年は、ロボットなのかもしれないと思った。


翌日、工藤研究室で、工藤博士から100枚ほどの手書きのカードをもらった。

この図柄と同じ形を見つけたら、必ず、教えて欲しいと言った。

アランが、タンバ国に帰ってしまうのは、寂しい気が、アランがルルンバ山の麓で、しばらく生活するということが、ある意味、工藤博士の不思議な文字の手かがりを見つける唯一のチャンスのように思われた。

このことは、誰にも公開しないように。絶対、ネットなどには載せないように、工藤博士とアランの男と男の約束をした。

アランには、その絵、図は、文字とも思えなかったし、図と図の区別もあまり、よくわからなかったが、奈良のお寺で見た曼荼羅の仏たちの些細な違いのあることを知っていたし、たくさんの仏像が同じように見えながら、一つづつみんな違うことを理解しているアランは、その明晰な頭脳で、100枚の図の些細な違いまで、きちんと覚えてしまった。

日本とは、同じように見えることが、奇妙に少しずつ違うと言い張る民族だった。それも、誰にも、区別できないような些細な違いを、日本人は、奇妙にこだわっている。

木々や花、虫たちに、小うるさいくらい、違いをいうので、びっくりした。しかも、こちらが準備できているかできていないのかも、構わずに、どんどん、違いを言い立てるので、最初はびっくりした。

花は花でいいではないか、桜は一つでいいのに、ちょっとした違いで、桜の名前が、何十、何百も一度言い立てる日本人は、とんでもない民族だと最初は思ったことを思い出した。



色々な思い出を胸に秘めて、アランは、日本を旅立って言った。

飛行機の窓から、小さくなっていく、富士山を見て、そういえば、僕は、富士山に登らなかったことを思い出した。

今後、日本に来たときには、絶対に富士山を登ろうと心に決めた。

さようなら、日本、

さようなら、工藤博士と家族のみんな。

とても楽しかったよ。




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