ムーンライト。権力とはなにか? はい、それは、プロジェクトマッピングのようなものです。
ムーンライトと若造が運営する 無料コーヒー店に、大統領様は、毎朝通ってきて、若造の入れたコーヒーを一杯のむのが、日課になっていた。
大統領は、毎日、朝早くから、やってきて、大統領様の執務時間になるまで、のんびりを過ごしていた。
ムーンライトは、大統領様は、美味しい無料のコーヒーが飲みたい一心で、このプランを思いついたのかもしれなかった。
そして、ムーンライトに、「今日の俺は運勢はどうだ。どの方向が今日は、吉か、凶か」など、運勢占いのようなことをさせたかと、思うと、急にまじめになって、政治の話しや哲学、死生観、国家の有り方など、気まぐれに問いかけるのだった。
ある朝、大統領様は、突然、権力について、ムーンライトに質問した。
大統領様「ムーンライトよ。権力とはなにか?」
ムーンライト「権力もまた、影なのです。この世界は、影の世界なのです。なぜなら、社会のシステムなどが、物理的に存在するのではなく、人間の意識の中に存在するのです。」
大統領様「権力も実態がない???。また、詭弁を申したな?。即刻、処刑じゃ。」
ムーンライト「たとえば、道路交通システムは、自動車を円滑に走らせるために、地面や道路に標識や数字や線を書いただけで、他になにかある訳ではないのです。人間がそれをみて、守らないといけない、違反すると、取り締まるぞど、脅されて、守ることになっているだけで、交通システムという物理的な存在はないのです。権力も同様です。大統領様は怖いを思わせれば、怖くなるだけで、だれも、大統領様がただの人を思えば、タダの人になってしまいます。」
大統領様「そうか。お前が言いたいことは、こうか? ここに、道路があって、いろいろ数字や標識がかいてあるが、それを理解しない人には、道路交通システムが存在していないが、それを理解しているというか、理解しざると得ない人には、道路交通システムが存在している。まるで、2重写しのように、存在が浮かび上がるとというわけだな。」
ムーンライト「そうなのです。で、権力の秘密が解りましたか?」
大統領様「この国を、国民がどのように見るのか、もしくは、見えるようにするのかで、2重写しのように、世界が浮かび上がるということだな。」
ムーンライト「大統領様は、頭の回転がすばらしい。たぶん、アフリカ随一の理解力の持ち主です。ここに、プロジェクトマッピングという技術があります。その技術を使えば、ないもない白い壁も、なにもないレンガの壁も、天国でも、地獄でも映し出すことができます。だから、あなたが偉大な存在にみせるか、ただの貧乏人に見せるか、大統領様の腕次第なのです。ですから、昔から、王様という存在は、金ぴかの服をきたり、王冠を被ったり、宮殿を建設したりして、見えない権力を見える形にするのです。その力のあるものが、権力者なのです。優秀な人材を少しずつ集めるのも、常套手段です。しかし、本当の権力は、みんなをひきつける力なのです。」
大統領様「本当の権力は、みんなを引き付ける力だと。」
ムーンライト「人間一人一人には、自由意志があり、通常は、個人の生存や幸福や欲望のためにバラバラに生きているので、国家としての力になかなかできません。それを、国家の方向に団結できれば、この国は、どんでもない国になります。しかし、そうすることが可能でも、それは、僅かな時間しか、有効ではありません。なぜなら、人間は、個人を犠牲にして、国家のためにだけに生きるようにできていないからです。個人の自由、幸福の追求がやはり必要だからです。」
大統領様「国家のためだけに働けといっても、無理なのだな。」
ムーンライト「世界の歴史をみると、ヨーロッパの一国家やアジアの小国が、世界と戦争した歴史もありますが、100メートルを全力で走るようなもので、長くは続かないのです。」
大統領様「では、どうすればいいのかな」
ムーンライト「そこに登場するのは、教育です。教育は、文明、伝統を断ち切る鋭い刀のようなものです。新しい教育を持ち込めば、あたらしい国民、新しい文明、あたらしい世界観を生み出してしまうのです。過去との決別です。文字や言葉さえ、入れ替えてしまうことも可能です。新しい歴史観を埋め込むことすら、可能です。まったく違う世界が登場するのです。中国という大国の歴史をみると、いろいろな民族が、国家の権力者になると、その国は、漢民族の国、満州民族の国、モンゴルの民族の国と、支配者によって、様々に入れ替わります。今は、共産党というグループが、中国を支配しているのです。漢字というシステムを利用していますが、漢字もどんどん変化して、昔の漢字を読んだすることもできなくすることも可能なのです。それが、教育といえば、教育の力なのです。」
大統領様「教育か。そんなにすごい力なのだな。」
ムーンライト「子供の時に刷り込まれた価値観を大人になって変更することは難しいものです。ですから、できるだけ、最新の教育を整備できるといいのですが、それは簡単ではありません。教育は影響力が非常に高いので、その分、難しいものです。」
大統領様「教育は、難しいか。なら、どうする。」
ムーンライト「この国、独力では、なかなかうまくいかないかもしれませんね。外国から誰か招聘できるといいのすが。」
大統領様は、コーヒーの飲み終えると、「そうか」といって、無料コーヒー店を出て行った。
もちろん、無料コーヒー店では、会計をする必要はない。
だれでも、自由に好きに、過ごして良い場所として、大統領様が定めた場所であった。