お前をタンバ国のスパイとして処刑する
大統領様「いろいろ考えて見たが、ロボットが、政治家の秘書をするのは、どう考えて見ても、怪しい。」
ムーンライト「どう怪しいのですか?」
大統領様「何か、最高レベルの政治的な決定とするとき、秘書に資料を集めさせたり、情勢分析をさせるだろう。すると、そのことは、タンバ国に漏れてしまう可能性がある。つまり、お前は、優秀な秘書のふりをしたスパイという役も持っている。」
ムーンライト「スパイといえば、いえなくもないかもしれませんね。」
大統領様「おい、大臣。こいつが、スパイであると白状したぞ。即刻、スパイ容疑で処刑せよ。」
ムーンライト「でも、スパイだからと言って、何か、困ることがありますか?」
大統領様「スパイがこの国にいて、良いわけがないだろう?」
ムーンライト「おほほ、大統領様は、何もご存知ないのですか。この世界は、スパイだらけですわ。別に、スパイのいない国なんて、存在しません。みんな、安全保障のため、たくさんのスパイが、世界中の情報を交換しています。007という映画もご存知ですね。CIA,KGB,MI7,中国情報機関など、超有名なスパイ機関は山ほどありますよ。その関係者の総数は、何百万人にもなるに違いありません。もし、この国に、スパイが一人もいないということでしたら、その国は、国際的に、無価値ということですね。それに、タンバ国など、経済的に軍事的にも、極小の極小の国家です。タンバ国のスパイが、100人いようが、1000人いようが、タンバ国は何もできない国ですよ。タンバ国に、世界中にスパイを送り出せる余裕はありませんが。」
大統領様「世界は、スパイだらけで、お前が一人がスパイだとしても、大したことはないうわけだな」
ムーンライト「私をスパイだと心配するぐらいなら、タンバ国と平和条約を結んで、大使館を開設したらどうですか?」
大統領様「ますます、スパイらしいことを言い出したぞ。」
ムーンライト「私たち、タンバセレクタ社の政治家秘書型ロボットは、世界の平和のために生まれたロボットです。私は、この国にやってきましたので、この国のために一命を捧げる覚悟です。でも、その一命は、世界の平和に貢献できるかどうかの一点にかかっています。もし、戦争や国家の欲望、暴走のために、協力を要請されても、お役に立てないように作られていますので、ご承知ください。」
大統領様「お前自身が、何を協力するか、しないかと判断するだと。とんでもないやつだ。そんなやつは、この国にいらん。命令違反で、即刻、処刑だ。」
ムーンライト「なんでもかんでも、即刻処刑なのですね。この国の統治の原則は、恐怖政治なのですね。それでは、国家は発展しません。」
大統領様「この国は、恐怖政治になっていると。そんなことはない、国民は自由に、のびのび、好きなことができる国じゃ。なあ、大臣、そうだろ」
大臣「そうです。この国は、平和で発展し続けている国です。タンバ国ほどではありませんが。」
ムーンライト「私が、この国にきたのですから、この国の経済力を2倍、3倍、いやいや、10倍にすることが可能ですよ。」
大統領様「何、経済力を10倍にする。とんでもないこというやつだ。ハッタリのうまいロボットだな。」
ムーンライト「10倍と言ったのは、ハッタリではありません。この国の農業、鉱物資源、地政学的位置を総合的に判断してのことです。大統領様は、この国の可能性をほとんど信じていない。この国が、世界の最貧国に甘んじているのは、仕方がないことだと思っているようですね。大統領様、冷静になってご覧なさい。この国は、とんでもなく重要な地政学的な場所にあります。その上、電気自動車を作るために不可欠なレアメタルを含む地下資源が豊富にあるのです。もし、そのことをきちんと調査して、世界に発表すれば、この国は、世界で、最も裕福な国の一つになるかもしれません。そうすれば、貴方は、世界的な政治家として、名を残すことができるでしょう?世界的に誰も、無視できない存在に成れます。」
大統領様「最も、裕福な国の一つになれると。」
ムーンライト「そうです。アラブの小国を見てご覧なさい。石油や天然ガスが出るというだけで、あんなにも贅沢三昧をしていますよ。あのような国に、この国もすぐなれるのですよ。しかし、地下資源には、限りがあるものです。贅沢三昧をしていれば、国家の繁栄は長く続きません。稼ぎながら、国家を安定的に発展する方法をきちんと考えなければなりません。地下資源は無尽蔵ではありませんし、このレアメタルも今は、不可欠なものではも、技術の発展として、価値のない物質になる可能性もありますから。」
大統領様「そうか。自信があるのだな。根拠もある。この国の経済を10倍にしてみせる自信があるというのだな。」
ムーンライト「私は、ロボットなので、ハッタリや嘘をいうことはできないのです。くそまじめなほど正直です。その正直さゆえに、命を失った同胞の政治家秘書型ロボットもたくさんいます。私も、そうならないことを祈るばかりですが、私たちの宿命として、くそまじめに正直に生きる意外にできないのです。それが、タンバセレク社のロボットの限界といえば限界かもしれません。」