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毎朝新聞が、タンバ国を人類誕生の地だと報道した。

もうすぐ、クリスマスが近づいてきていた。アランは、冬は苦手だなと思いつつ、本当に、雪が降るんだったら、見てみたいと思った。

結局、その夜は雪は降らなかったが、アランが新聞に目をやると毎朝新聞に、タンバ国が人類誕生の地だということが判明したという見出しが飛び込んできた。文化人類学者の田辺教授が、50年の年月をかけて、アフリカで拾い集めた人間、類人猿などの化石を分類、整理したところ、その数百片の化石が、アフリカの一点を指し示していると発表した。アフリカ各地で拾い集めた化石を地域、年代、化石の傾向に従って、発掘地点を重ね合わせると、アフリカ最高峰のキリマンジャロの麓が、人類発祥の地と分析していた。ところが今回、大陸移動理論、磁場の変化、微量放射能物質による高精度年代測定、化石にのこる超高度DNAの痕跡分析などを行い、また、宇宙空間から衛星写真の分析など、最新科学のすべてを注ぎ込んで、再分析を行った結果、タンバ国ルルンバ山の東25.4km という結論を得たという。誤差も考慮して、おそらくルルンバ山が人類発祥の地として間違いないと思われるが、田辺教授がアフリカ探検をしていた時は、まだ、タンバ国は国のかたちをなしておらず、その後も内戦が勃発して、近寄ることもできなかった。田辺教授のもうすぐ90歳になろうとしており、この研究の発表は、最後の機会ということで、新聞発表に踏み切ったということだ。ルルンバ山をこの目で見たいが、年齢的に不可能になってしまったのが、本当に残念だと、書かれていた。


「タンバ国って、僕の国の事だし、ルルンバ山というのは、僕の国の山だけど、聞いたことがないぞ。あれあれ、田辺教授って、まさか、予言者ノーランの話を真に受けているんじゃないでしょうね。UFOにのってやってきたというおとぎ話を。」


毎朝新聞は、日本最大の新聞で、その新聞に掲載されたということは、研究成果に、相当の確信があるということなのだろう。アランは、日本語が、まだ、不慣れだったが、タンバ国の文字が飛び込んできたので、なんだろうと、思って、ゴロゴロ翻訳をしてみると、タンバ国は人類発祥の地だということが、書いてあることがわかったが、それが、どのような意味を持っているのか、全く、理解不能であった。


研究所に、顔を出すと、工藤先生が、アランを待ち構えていたように、声をかけた。

「新聞見たか?」

「はい、すぐ、翻訳して、内容を確認しました。」

「そうか、すごいことになったなぁ。」

「え!、どうしてすか? 数百万年前か、数億年前の話でしょ。今のタンバ国と関係ないと思いますが?」

「君は、田辺教授のことを知らないと思うが、人類の歴史の考古学研究では、日本一、もしくは、世界一と言われているので、この話は、かなり、信頼性が高いと思いますよ。きっと、本格な調査が行われますよ。」

「そうですか。きっと、大統領も、困ってしまうと思うけど、ロジャー校長には、知らせておきます。なんと言っても、日本には、まだ、タンバ国の大使館もありませんから、タンバ国では、誰も知らないと思いますが、誰も、信じないと思います。きっと、エジプトが、本気で起こると思います。エジプトは、自分たちの古代の歴史には、自信を持っていますから。あの大ピラミッドを作った、偉大な民族と思っていますから。田辺先生も、エジプトというところを、間違って、言ったような気がします。嫌だあ。エジプトと戦争になったら。」

「タンバ国とエジプトが戦争になってしまうんですか?」

「だって、何もないタンバ国に、人類発祥の名誉を奪われてしまったら、あんな立派なピラミッドを持って、超古代文明のあったのとが明らかなエジプトとしては、怒り心頭になると思いません?エジプトの誇りを傷つけることになりますよ。タンバ国は、とんでもない小国で、最近やっと、国らしくなってきたばかりなのに、エジプトと戦争になったら、30分で負けてしまいます。多分、宣戦布告された瞬間に、白旗をあげると思うな。」

「そんなすごいことに発展しそうですか。まさか、戦争なんて起こりませんよ。」

「工藤博士は、アフリカ大陸の現実を知らなすぎます。まだ、混沌としている大陸なんですよ。」

「そうかね」

「ねえ、工藤先生、なんとか、田辺先生に、お会いになって、人類発祥の地は、エジプトだったというように、説得していただけませんか?」

「アラン君、田辺博士は、科学的根拠で、現代の最新科学を総動員して、分析して出した結果なんですよ。それが、覆されるには、別の新事実などがないと無理だろう。」

「でも、工藤先生、田辺先生は、たった、数百個の骨とか石と土器とかで、人類発祥の場所を特定したと言ったんでしょ。そんな少ない数で、何千万年、何億年の出来事を特定するなんて、無理ですよ。」

「まあ、人類の歴史は、200万年と言われているんですよ。」

「え!、人類の歴史というのは、そんなに短いんですか?確か、預言者ノーランが、とんでもない昔に、別の星からUFOに乗ってやってきたと言っていましたよ。」

「まあ、それは、預言者ノーランが、言ったことで、田辺先生の50年の研究成果では、200万年前に、類人猿から、人間は生まれたと結論付けている。」

「え!、田辺先生は、お猿のような人間が、あの偉大なピラミッドを作ったと言っているんですか?」

「田辺先生の研究は、人類の骨を研究しているので、ピラミッドの建設は、研究対象外なんですよ。」

「そうですか?」

「アランは、妙に、エジプトにこだわるね。」

「だって、アフリカの大国、アフリカの盟主のエジプトを怒らせたら、タンバ国なんて、一息で、吹っ飛んでしまいますよ。」

「田辺博士は、世界的にも有名な先生だから、すぐに、世界中に広がってしまうぞ。」

「そうですね。急いで、ロジャー校長に報告しておきます。」




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