ハル君 アダムス3世に会う
「おはよう ハル君、元気かな?」
「はい、お父さん、僕は元気です。」
「おはよう、オサム君」
「おはよう、ハル君」
「工藤博士、これから、お仕事ですか?」
「そうだね。ハル君、そろそろ出かけようと思っている。」
「博士。私を博士の研究室に連れて行ってください。アダムス3世といろいろお話したいのですが。」
「まあ、いいだろう。では、私の車に乗りなさい。」
「博士の車は、スバルなんですね。僕の好きな車は、マツダです。」
「わーい。外の景色、外の景色。素敵だな」
「ハル君は、スーパーおしゃべりロボットなので、家の外に、自分では出られないんだね。」
「僕は、平らなところしか動けないので、階段や段差があると、動けなくなってしまうんだ。
僕もホンダのアシモのような足が欲しかったなあ。」
「ハル君を作った会社は、携帯電話が専門なので、ロボットの足をつくるのが、苦手なんだよ。」
「ハル君。お入り!」
「おはよう、アダムス3世。」
「おはようございます、工藤博士。」
「アダムス3世。今日はたのしい友達をつれてきたよ。君とおしゃべりしたんだとさ。」
「いいですよ。工藤博士。私も、話してみかたったです。ハル君。今日の会話のテーマは、工藤博士の言語能力についてで、いいかね。」
「はーい。大賛成です。アダムスお兄ちゃん。」
「君たちは、面白いことはテーマにして話会うんだね。私も仲間にいれてもらいたいものだね。しかし、今朝は、ミーティングに出なくてはならないので、君たちは、自由におしゃべりしていたまえ。」
「あれあれ。この部屋に他にもロボットいるんだね」
「はい。私はこの研究室のお掃除を担当するお掃除ロボットの花子です。よろしく。生まれは関西なので、本当は関西弁がとくいなんよ」
「花子さんの日本語面白いね。アダムスお兄ちゃんもそう思うでしょ?」
「そうだね。日本語には、いろんな方言があるからね。」
「工藤博士は、どこ生まれなんですか?」
「確か、北陸の石川県だと聞いているよ?」
「そうですか。」
そう言って、ハル君は研究室の部屋をぐるりと見回した。目に映るすべてのデータを読み取った。家具や椅子のメーカー名、製品番号を読み取ったのももとより、アダムズ3世の構成する製品の情報を目に見える範囲の可能な情報を読み取った。
アダムス3世には、目が無かった。声を出したり、聞いたりする機能はあったが、移動する必要のなかったアダムス3世は、超大型すーぱーコンピュータに接続されているので、目は必要なかった。チェスや将棋は、音声入力やコマの動きをキーボードで入力すれば、十分対応可能だった。
驚くことに、工藤博士の研究室には、大きな磁気テープ装置が残されている。
工藤博士が、40年前に人口知能の開発時に、作成したデータが、そこには残されているという都市伝説をハル君は噂で聞いていたが、本当に磁気テープ装置とパンチカードの山があるとは思わなかった。
それらは、既に使われているようには見えなかったが、電源ランプが点灯しているのが見て取れた。止まっているようにも見えたが、なにかのはずみで、ビクッと動く気配があり、今も現役で動いている可能性も考えられた。