ナロハ大臣の家のタロウ君
ナロハ大臣の家に、少し小ぶりの目鼻立ちがすっきりとした少年のロボットが届けられた。
早速、ナロハ大臣の奥さんは、そのロボットをタロウ君となずけて、16歳の青年をして設定した。
「ねえ、タロウ君」
「ご用は、なんでしょうか?」
「あなたは、今日から、この家の子供です。わたしは、あなたを私の子供とみなしますから、そのつもりで接しなさい。」
「はい、了解いたしました。初めは慣れないことも多いと思いますが、よろしくお願いします。」
「それでは、私のことを、お母様、国防大臣のことを、お父様と呼びなさい。」
「はい、了解しました。お母様。」
「それで、いいわ。素敵ね。もう一度呼んで頂戴。お母様と。」
「はい、お母様。なにか、ご用はありますか?」
「ご用ねえ。ご用? なにか、有るかしら。」
「???」
「あなたは、うちの子供なんだから、学校に行ったほうがいいかしら?」
「たぶん、私は、学校に行く必要はないと思います。政治家秘書機能が搭載されているので、学校で習うことはほとんど知っています。」
「そうですか? では、うちの子供はなにをすればいいんでしょうか?」
「では、タロウ君になれるように、タロウの勉強をします。質問してもいいですか?どうして、私にタロウという名前を付けたのですか?このへんでは、あまりつけない名前のような気がしますが?」
「私が小さい時に、犬や鳥や猿と引き連れて、悪魔退治にいくというお話の絵本を読んだんです。そこの少年の名前がタロウだったので、いつか、結婚して子供ができたら、タロウという名前にしようと決めていたんですが、子供が出来なかったので、あなたに、我が家に来ていただいたのです。それで、タロウと名付けました。」
「そうですか?それは、どうも、日本という国の昔話のようですね。日本という国では、タロウという名前は一般的によく使われているそうです。」
「そうなの。でも、私はそのお話を英語で読みましたよ。そんな遠い国のお話だとは思えませんでしたけど。でも、あまり、よく覚えていません。」
「もしかして、小さな小人が活躍する話やお姫様が竹から生まれる話など読んだことはありませんか?」
「そういえば、読んだような、読まないような。そのタロウの話の絵本は、とても、不思議な絵本で、紙が、とても、ふわふわして、とても気持ちがいいんですね。他の本は、紙がピンとしているのに、その本だけ、とても、不思議な触りごちの本だったのですよ。」
「そんな本があったのかもしれませんね。」
「でも、思い違いかもしれない。それは、記憶の中にしか存在しないような気がする。だって、そんな本どこにもないような気がします。いままでも、何回か探してみたんですよ。大きな本屋で聞いてみたんだけど、そんな本はあるわけはないって言われました。」
「そうですか。それなら、ないのかもしれませんね。」
「タロウ君 明日の天気を教えてください。」
「はい、お母様 明日の天気は、晴れ、気温18度、少し風があるかもしれません。」
「ありがとう、出かけるには、どんな服がにあうかしら?」
「そうですね。ブルーのスーツがお似合いかと思いますが」
「明日が良い天気なら、それも、いいかもしれませんね。」
「電気が少なくなってきました。少し休息が必要です。」
「そう、では、休憩しなさい。今日の夕食は、大臣と私とあなたの三人で、たべましょう。私たちに子供が出来たときいたら、大臣がびっくりして、腰を抜かすかもしれませんね。」
「はい、きっと驚くと思います。ところで、私はロボットなので、食事は必要ないのですが?」
「そうでしたね。でも、今日は、あなたの歓迎の夕食会なので、食事を作ります。もちろん、あなたは、食べることができないのは、解っています。それでも、いいのです。歓迎会ですから。食事をあなたに出すのは、きっと、今日だけです。会話にはちゃんと受け答えしてくださいね。さもないと、夕食会がつまらないものになってしまいますから。」
「はい、お母様、よろしく。」
「私は、とても、お料理が上手なのよ。」