超古代コンピュータの発見
アランが、ルル族の聖地で面白い物が発見されたと、工藤博士に報告にきた。
それは、拳サイズの石で、その中に、3センチ四方の鉱物の結晶がみつかり、タンバ国の鉱物資源局が、顕微鏡で分析したのだという。金属は、方形の結晶をすることもあるので、レアメタルの結晶のつもりで分析を始めたところ、単純結晶ではないことが判明し、さらに、分析が進められた。
しかし、奇妙なことに、複数の物質の結合のようにみえた。それは、現在のコンピュータのCPUにも酷似していたのだ。拳サイズの石には、なにか、細工した後はなく、この鉱物結晶が、数億年の月日をへて、化石化した以外、説明はつかなかった。
あまりの意外な発見のため、その発表はされないことになり、鉱物資源局の金庫の中に、保管されることになった。しかしながら、鉱物資源局や一部の人たちに、その情報が伝わってきた。
この鉱物の顕微鏡写真やMRI による石の中に存在している状況等、科学的な報告があった。
まだ、これが、超古代のコンピュータの化石とは、断定することは誰にもできなかった。単に偶然に金属結晶が方形に結晶にすぎない可能性もあった。とにかく、これがなんなのか、誰にもわからないのだった。
しかし、その結晶の厚さは、数ミクロンという薄さだったので、いろいろ分析をくり返している内に、かなり、ボロボロになり、最初の発見の痕跡は、最初の顕微鏡写真のみとなってしまった。
アランは、工藤博士に、鉱物の顕微鏡断面図やMRI の写真を見せた。
アラン「工藤博士、ルル族の洞窟で、また、へんなものが見つかりました。鉱物資源局の分析では、超古代のコンピュータの一部分ではないかと、いいだしました。単に石ころなんですけどね。見ますか?」
工藤博士「これは、単純な金属結晶ではない可能性もある。もしかすると、超古代のコンピュータ化もしれんな。」
アラン「たんなる石ですよ。だって、なにもないルルンバ山から、出てきただけなんですから。」
工藤博士「ここの部分を、もうすこし、拡大できるかね。」
アラン「では、30倍に拡大してみます。」
すると、そこには、金属結晶の淵にそって、不思議な文字が浮かびだしてきた。
ところどころ、不鮮明な部分があるが、制御を意味する単語が読み取れるような気がした。さすがに、不鮮明で、本当に、そう書いてあるのかは、工藤博士にもよくわからないが、そう思ってみると、みえるような気がしたのだ。
アランは、最近の工藤博士の様子が変なのに気がついていたが、どう変なのかは、よくわからなかった。少し、工藤博士が痩せたようなので、なにか、病気になったのかもしれないと思った。
工藤博士は、ルル族の聖地 ルルンバ山に行ってみたいと思ったが、タンバ国にも、ルル族にとっても、単なる山なので、行ってなにか、解る訳でもなかったし、家族の物やアランになぜ生きたいのか説明することもできなかった。
いつか、タンバ国に行く機会があれば、ロジャー大臣やロボットのアレックスにあってみたいと思った。そして、タンバ国の青年達ともいろいろ話してみたいと思った。
しかし、本当の思いは、ルルンバ山の洞窟を探検することだった。
時を待とう。ただ、ひたすらに時をまとう。
50歳になろうという工藤博士なのだ。馬鹿なまねはできなかったし、馬鹿なまねをしても、いまは、なにも得る物はなく、失うものばかりだということがよくわかっていた。
時を待とう。ただひたすらに。そうすれば、きっと、なにか、でてくるし、私を必要とする時がくるはずだ。その確信はあった。が、もしかすれば、その時はこないのかもしれなかった。
ルルンバ山が、妙な火山活動をしないことを祈るべきなのかもしれない。
とにかく、時を待つだけだ。
40数年の時をまっていたのだ。それが、数年まっても、数十年まってもいいじゃないか。