タンバ国 ルル族の近代化政策
なんとか、経済も順調に動き出しかにみえるタンバ国にも、大きな危険がせまっていた。国土は、日本の3倍程度の大きさだが、人口は、250万たらず。アフリカ大陸の中央に位置し、灼熱と砂漠と草原の国だ。大きな湖も河も無く、乾燥の大地には、あまり、植物が育たない。常に食料危機と背中あわせだ。しかも、数年に1回程度発生するバッタの大群は、きびしい食料事情をさらに厳しくする。
タンバ国の外貨獲得手段は、恵まれた鉱物資源だ。金も算出するし、レアメタルもある。この鉱物資源が、経済の活力になっている。しかし、この豊富な地下資源が、周辺諸国や外国企業の狙い先になっている。周辺諸国や外国企業、前大統領の残党も、この豊富な地下資源を利権を狙い続けている。
タンバ国北部のこの豊富な地下資源を持つ山 ルルンバ山を神と崇めるルル族が、地下資源の採掘を快く思っていない。タンバ国政府との対立がしばしば発生する。
そのため、タンバ国政府は、ルル族の懐柔政策を実施している。一生涯ルルンバ山の麓で生活してかれらに、タンバ国政府は、年間を通じて、タンバ国首都 タンタンバへの観光旅行をはじめ、ヨーロッパ、アメリカなどへの観光旅行に連れ出している。もちろん、無料で、旅行にいくための衣服なども提供する。旅行に行く前には、事前の研修を1週間にわたりおこない、ヨーロッパやアメリカでの旅行で混乱しないようにしている。
もちろん、団体旅行で、出発から到着まで、すべて、面倒をみる。もちろん、長老達は行きたがらないが、好奇心一杯の若者が、ヨーロッパの様子やアメリカの様子を自慢げに話すので、長老達も、耳を側立てはじめている。
そんななか、長老の一人が、ルル族の伝統文化が、どんどん失われ、破壊されていくのを、嘆き始めた。さすが、タンバ国政府は、めざとくそれを聞きつけると、ルル族の伝統文化を保存記録するための政府補助金をだして、ビデオの記録、ルル族の歴史、文化を記録する本と出版しようとその長老にすり寄っていった。
このうまさは、他国にはできないまねだろう。伝統文化を客観的、科学的に記録し、解明することで、本来神秘に包まれているものものをはぎ取ってしまうことになる。それを意図している、していないに関係なく、結果的にそうなってしまうことは、明らかだったが、それを長老達が気がつくことはないだろう。気がついた時には、時はすでに遅しだ。しかし、近代化や教育とは、過去の伝統や文化を切り離していく作業だ。いま、ルル族に伝わっている伝統文化も、ルル族以前の民族の伝統や文化を破壊して、現在のルル族の伝統文化がうまれたのは確かなのだ。
ルル族の若者たちが、ヨーロッパ観光旅行、アメリカ観光旅行で、見聞きしたことを元に、ルル族の民主化をしたいといいだし、ルル族の所属行政地区の市長を選ぶ選挙を実施したいといいだした。
長老達は、慌てたが、タンバ国の多くの市や町の市長、町長が、そのように選ばれていると周りから説得されて、ルル族の所属するこの地域もあたらしいルル市として、市長を選ぶことになった。
長老達は、当然、自分たちが選ばれるとおもっていたが、実際おこなってみると、圧倒的な大差で、ひとりの若者が市長になってしまった。しかもその若者は、長老達の家族でも、親戚でもない、まずしい農民の家の若者だった。あるものは、若さと元気だけが、取り柄のような若者だったが、ヨーロッパとアメリカの聞きかじった知識をもとに、ルル族の未来を、大声で語ったのだった。
噂によれば、タンバ国政府の高官と、いろいろ仲がよいということだった。ルル族のためにたくさんの政府からの交付金をゲットできそうだった。
そうこうしているうちに、タンバ国首都のタンタンバまで、道路が整備されて、毎日、高速バスが運用されるという計画が噂されはじめてきた。
ルル族の商人としての血が騒ぎ始め、あたしい町作りが、活発化しているようだった。タンバ国北部のルル市は、急速に近代化をはじめた。
1万年の間、なんの変化のなかったルル族が、この数年、数日で、とんでもない変化がおきているのだった。
未開の町が、突然の近代都市への変化は、目覚ましいものがあった。タンバ国の首都タンタンバより近代化された町並みは、とんでもなく規模はちがうのだが、アフリカのニューヨークとも言われ始め、一大観光都市になろうとしていた。
順調にみえるタンバ国は、アフリカの周辺国から、浮き上がりはじめ、タンバ国が蓄え始めた富をねらった陰謀が、見え隠れしていた。隣国の大国のトンド国は、タンバ国を奪い取れないかと、前大統領派残党に資金援助をして、のっとり計画を支援しているという噂もたえず聞こえていた。
ナロハ国防大臣は、周辺諸国の動向に注意を払っている。
周辺諸国の砂漠緑化のために、タンバ国を経由して配付された巨大サボテン鉢の気象観測データの監視を絶えず行っている。巨大サボテン鉢の気象観測装置は、大規模軍隊の移動をすばやく感知するはずだ。戦車や自動車のだす二酸化炭素の異変も、観測可能だからだ。
当たり前の気象観測情報も、使い方しだいなのだ。