表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/74

開始

今までのお話をお読みいただいた上で読んでください。

 3



「最初に言っておくけどね、これから話すことは私が見たり聞いたりしたことに基づいての推理だ。だからもし私が間違った噂を口にしたら、遠慮なく指摘して欲しい」

 生徒たちへそう頼むと、前列にいて目のあった名前も知らない男子生徒が頷いてくれて、そしてそれを合図に、その場にいた多くの生徒がぞくぞくと同じことをしてくれた。それに満足して、今度は警官、特に須藤に目を向けた。

「私は素人でたまたまこの学校にいただけだからね、そこまで多くの情報を得ていない。だからもしこれから話すことに追加しておきたことがあれば、口を挟んでくれ。まあ、必要はないと思うけどね。えん罪を生まないためさ」

 最後の皮肉を唇の片側をつり上げて不快感を表した須藤は、納得はいってなかっただろうが分かったと答えた。なら、もう話しを始めるとしよう。

「どこから話したらいいだろう。まあ、最初に言っておくけど、この事件は根本的に見方を変える必要があるからね。だから、今まで当たり前だと思っていたことが、多分途中で事実じゃないと分かると思う。驚かないで欲しい。まず、問一だ。結局、"cube"は誰だったのか」

「誰だったのかって、だから黒沢明子と小林陸と、あと安藤茜と小野夏希だろ。ああ、それと香月麻由美もか」

 仁志が一人ずつ指を折りながら慎重に数えていった。そんな彼に邪魔が入る。

「忘れるな。荻原治もだ」

 報道では実名を隠す必要のある名前を須藤は躊躇もなく出した。ここなら隠す必要もないと考えたんだろう。けど、それは否定させてもらう。

「申し訳ないけど荻原治は"cube"じゃない。よって『主』でも犯人でもない」

「どうしてそう言えるんだ」

「考えたら分かるだろう。もし彼が"cube"で『主』だったら、どうして"cube"である小野夏希や黒沢明子と関係を持つんだよ。興味があったから、どういう人物か知りたかったから、かな。けどそのために恋人関係にまで行く必要はない。下手をしたら自分の秘密がばれる。"cube"が『主』に正体がばれるのと、『主』が"cube"に正体がばれるのとじゃ、また危険性が違う」

 ここまで話したところで、生徒たちが首をかしげていることに気がついた。そうか、彼らは『主』のことは知らないんだった。すっかり忘れてしまっていた。念のために生徒たちに『主』の説明をして、また話しを戻す。

「ましてや彼は浮気がばれるのを恐れていたんだ。自分から積極的につながりを持ったなら、そんな浮気なんて状況は作らないだろう。黒沢明子との関係が終わってから、小野夏希に近づけばいい。逆でも構わない。そうしなかったのは、そう出来なかったから。それだけだ。彼から黒沢明子に近づいたんじゃなく、向こうが言い寄ってきたそうだしね。まだ否定が必要かい」

 まだ否定材料はあった。それは荻原治の小野夏希の事件後の行動だ。彼は病院に来ていた。なのに話しを聞いてどこかへ消えた。しかし彼が犯人だったとしたら、病院へ来るか。もしかしたら警察がいるかもしれない病院へ。ましてや彼女はまだ生きている。何らかの目的で殺そうとしたのなら、確実に殺すために何かするはずだ。けど、彼はもう死んでいる。

 これを自殺だと警察は断定したが、それならどうして小野夏希にとどめをささなかったのかが疑問に残る。

「遺書はどうなるんだ」

 今度は父が反論してくる。どうしてこの事件を彼の仕業としたいらしい。全く、組織人というのはこれだから困るね。

「あんなものを遺書と言えるのかい。たった一言、死んで償うべきと書かれただけじゃないか」

「けど事実、あの字は荻原のもので、彼はお前を殺そうとした」

「ならそれが答えだ」

 私のはっきりとした答弁に父は目をぎらつかせた。あらあら怖い怖い。

「意味が分からん」

「そうかな、考えれば単純なことだと思うけど。知っている人もいるだろうけど荻原治は小野夏希が刺された後、病院にかけつけた。そしてそれがどういう場面だったか。私が彼を見たのは理不尽に乗せられた警察の車の中だ。私が彼を見たのはそこ。つまり彼が私を見たのは、私が警察に連れて行かれるところだったわけだ。さてここで思い出して欲しい。あの時、学校にはどんな噂が流れていたかな?」

 あの時、ある噂が流れていたせいで私の拘束というシナリオが描かれた。それを思い出した仁志が呟く……。

「あんたが真犯人だって噂だ」

「そう、大正解。さてそんな噂が流れているさなか、小野夏希は私と二人きりのところで殺されそうになり、荻原治は私が連行される姿を見た。私が彼ならこう確信する。蓮見レイこそが恋人を殺した犯人だって。そしてこう憎んだはずだ。死んで償うべきだって」

 あの遺書と思われた手紙は遺書ではない。私への告発文だった。恐らくは荻原治を殺した真犯人がそれを見つけて遺書に見せかただけだろう。

「お前への告発文なら、どうしてそれをお前に渡さず荻原は自分で持っていたんだ」

「私へ渡すつもりだったろうさ、恐らくはバイクに仕掛けてね。けど彼がバイクに細工をしている最中、思わぬ邪魔が入ったんだよ」

 仁志が何か思い出したようで、口を小さく開けた。そんな彼に私は頷く。

「そうか、あの時あんたのバイクをいじってたのは荻原。それで俺が声をかけたせいで告発文を仕掛ける時間がなかった」

 その通り。私は警察から解放された後、学校へ行った。その時バイクに乗るまでの間に仁志は私のバイクを誰かが見ていたと言っていた。状況的にそれは間違いなく荻原治だろう。そして彼は告発文もちゃんと残すつもりだったんだ。

 思い返せば、私が荻原治と協定を結んだときに彼は「破ったらぶっ殺す」と脅かしてきた。私は結局、その協定を守れなかったわけで彼にそうされても文句は言えなかったわけだ。

 確かに殺されそうになったかもしれないが、私は恨む気も憎み気もない。そもそも、そんな資格がない。

「さあ、これで分かっただろう。荻原治は"cube"じゃない。ならさっきのひぃ君の五名を除いて、あと一人、いるはずだね。それが誰かは、実を言うと簡単に分かる。怖い思いをさせるのも何だから、さっさと指名してあげよう。――有華ちゃん」

 横にいた仁志がえっと声を漏らす。そして全校生徒が一気にざわめき出して、自然と有華ちゃんを避けて、彼女を中心とした円になっていく。そして二年生だったせいで、丁度体育館の真ん中辺りにいた有華ちゃんが、一人ぽつんと立っているという状況になった。私はそんな彼女に一歩ずつ近づいていく。

「君は"cube"だ。そもそも小野夏希を一人にするために、誰かが荻原治を呼び出さないといけないはずだ。それは君がやったんだろうね。私が真犯人だって噂が流れている中、疑心暗鬼になっていただろう荻原を君が呼び出したんだ。私の協力者として知られていた君なら簡単に彼はついていったはずだ。さあ、どうかな。言っておくけど、否定は許さない。ただ反論の余地くらいなら、与えてあげてもいい」

 固まっていた有華ちゃんがようやく動いた。はははと笑いながら、一歩後ろに下がる。

「は、蓮見さんどうしてそうなるんですか。だいたい、私は"cube"じゃないって言ったのは蓮見さんじゃないですか」

「あれは君を安心させるために言ったことだよ、本心じゃない」

 言っておくけどこれは本心だ。あの時の安心した姿は演技で、彼女にかけた言葉は嘘だ。

彼女は笑顔を引きつらせた。

「何でですか。私が"cube"だって噂はあります。けどだからと言って……」

「申し訳ないけど私が君を疑ったのは、君の噂を聞く前だよ」

 今度は笑顔が凍る。この回答は予想外だったのかな。

 ちょっと待てっと父の声が響いたので、くるりと父の方を向く。

「俺はそんな報告は受けてないぞ。情報はこっちに渡してくれてたんじゃないのか」

「ああ、ちょっと事情があってね。まあ細かいことは後で説明するよ。今は有華ちゃんの言い分を聞こうじゃないか。もしも、あるならね」

 父に向けていた体を有華ちゃんに向け直す。彼女はもう真顔になっていた。

ここから解決編がずっと続きます。

中途半端なところできりたくないので、話によってかなり長くなったり

短くなったりすることがあると思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ