第二話《暖めておきました》
風呂上がりに雪印コーヒーを片手に持って飲みながら部屋戻る至福の時間。
部屋のドアを開けてマイスイートルームの蛍光灯の明かりをともすと部屋の中央で我が妹が正座で俺を待ち構えていた……って怖っ!
コイツは部屋の明かりを点けずにずっと正座してたのか!
「…えぇっと…お邪魔しました。」
俺は見なかった事にしようとドアを閉める事に決めた。
居間に戻ろうとも思ったが下着の替えは自分の部屋にしか無いのを思い出したので、やはり部屋へ入る事に決める。
…先ほどまでマイスイートルームのドアだったのが、今や封印された土蔵の入り口の様に感じる。
中に存在するのは果たして何者か…きっとオヤシロ様が居て俺をナンチャラ症候群にさせようとしているに違いない…
ドアを少しづつ開けてみる。
せっかくだから俺はこの赤い扉を開けるぜと言いながら灰色のドアを開けるコンバット越前の心境で部屋を覗いてみる……
俺の目の前10センチ先で同じ様に覗いていたオヤシロ様ならぬ我が妹と目が合った……って言うか目が近っ!そして怖っ!
「ちょっとお兄ちゃん!さっきから部屋の前でフルチンで何を葛藤してるのよ!」
見るなよ!!!
「はい、とりあえずこれあげる。」
そう言いながら我が妹は俺にトランクスを手渡して来た。
「大丈夫!私がちゃんとふところに入れて温めておいたから!」
グッジョブとばかりに俺に親指を立てる。
俺は無視する事にした。
絶対に冗談に決まっているからだ。
「そして、はい!」
そう言いながらコイツはブラジャーを俺に差し出す……
『なんでやねん!!!』
貰ったブラジャーを床へ叩き付けた!
「あぁ!ワコールの高級ブラが痛むじゃん!ダメだよ!物は大切に!!」
そこ?怒る所そこ?
『お前は俺を変態にしたいのか?!』
「いや…ほら、キャラ立つし。」
要らない!そんなキャラ立て要らない!
って言うか今度は俺に何をさせたいんだ!
「もう!せっかく自分のブラを小道具にしたのに。」
するな!!!
小悪魔の様な笑みで俺を見ながら言う…
「大丈夫、もうサイズが小さくて着けれないのだから」
服の上だがブラを自分の胸にあてる…
『お前の性長を聞きたい訳じゃねぇよ!!』
だんだんツッコミ疲れて来た…とりあえずトランクスだけ履いて、すっかりヌルくなった雪印コーヒーは机の上に置いた。
ズボンや上着は妹が座布団代わりにされているので着用不可能だ。
先ほどトランクスを温めておいたと言ってたが…トランクスも同じ目にあっていた可能性が非常に高い…ふところじゃなくて尻の下かよ…
「…で?今日は何だ?」
「いやほら!私ってお笑い芸人目指してるじゃん?」
「じゃん?って初耳だぞ」
「だって初めて言ったもん!」
「……頑張れ。」
「うわぁ…適当な反応」
ある意味天職だと思っただけだ。
「ほら!私ってツッコミ役じゃない?だからお兄ちゃんで練習しようかな~とか?」
「はい?」
「私ツッコミでお兄ちゃんがボケ役!」
……えぇとコイツは真面目に言ってるのか、はたまた俺からのツッコミを待ってるのか…「何か不満そう…仕方ないなぁ…お兄ちゃんがツッコミ役で良いから、このネタを読み上げて」
一応ネタを書いて来たらしい…
「お兄ちゃんお小遣いちょうだい!」
「…なんでやねん」(棒読み)
「お兄ちゃん今日裸で外歩いちゃダメだよ」
「…なんでやねん」(棒読み)
「お兄ちゃん!私に突っ込んでみて!」
「…近親相姦やないけ…」(棒読み)
「「ありがとうございました」」
『下ネタじゃねぇかよ!!!』
俺はネタが書かれた紙を床に叩き付けた!
「あはは、お兄ちゃん面白~い!!
さぁてそろそろ私のお風呂タ~イム!」
そう言いながら颯爽と部屋から出て行った…
本当に我が妹ながら何を考えているのかさっぱりわからない…
~第二話~おしまい