立秋
ゲリラ豪雨が外を通っていながら、高校2年の井野嶽幌と双子の姉の桜が、友人たちと家の中で今度の海水浴についての話をしていた。
時々、ピカッと光って、近くに雷が落ちたような大きな音が聞こえてくる。
「こりゃ、近くに落ちたな」
幌がぼんやりと外の大雨をながめながらつぶやいた。
「大雨だな」
友人の陽遇雅が幌と一緒に見ながら言った。
「さてさて、どうしたものか」
「海水浴の日には、いい天気だろうな」
「予定じゃ12日だろ。天気予報じゃ雨は降らないっていうことになってるから、大丈夫だろう」
携帯で確認をしながら、幌がみんなに言った。
「じゃあ、その日だな。日曜日だったよな」
「そうそう日曜。土曜日に水着とか買いに行って、んで、日曜に出発」
桜が予定を諳んじてみせる。
「どこだっけ」
「須磨浦。大阪からだとJRの須磨浦公園駅か須磨駅で下車だな。須磨浦公園の方だとちょっと歩かなきゃいけないみたい」
「んじゃ、次は土曜日、11日に集まるか」
気付けば、雨は小ぶりになっていた。
「さすがゲリラ豪雨。ちょっとは涼しくなったかなあ~」
桜が庭の様子を窓越しに見ながら言った。
「まだ立秋だから、まだまだ暑いさ」
「暦じゃ秋なんやけどな」
琴子が幌の言葉に合わせて言った。
「残暑お見舞いの季節かあ。まあ、暑中お見舞い書いたから、大丈夫かな」
「それに、親が返ってくるな。来週だけどもな」
「そっか、お盆だったね」
それを考えている間に、虹まで現れた。
ただ、それは誰にも見られることなく、静かに消えていった。