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他人事な恋  作者: 紫苑
7/24

再会と再開



…何?この状況…。



目の前には三人の男と一人の女の子。もっと言うなら、見るからにチンピラな男たちと女子高生。兄妹には見えない。状況から察するに、少し…いや、かなり強引なナンパだ。


普段なら、大変だな〜。で済ませて終了の光景。薄情だろうが仕方ない。マンガの世界じゃあるまいし、三人の男を一瞬でやっつける、なんてこと、とっさに出来る奴の方が少ないだろ。実際、周りの良識ある大人たちだって見て見ぬフリ。だから俺も、右にならえで目をそらす。はずだった。


「いや、だから…待ち合わせしてるから無理だって言ってるじゃないですか…!」


ナンパされてる女子高生が俺の知り合いじゃなかったら。もっと言うなら、それが小林優希じゃなかったら。


あの日から全く会えなくて、つまらなくて。結構あったはずの興味がゼロになりかけた、と思ったらこれだ。俺を退屈にさせない才能があるよな、この子。さて…どうしようか?


「〜っ!しつこい…!」


「はぁ?何、その言い方。ちょっと遊ぼうって言ってるだけなのに酷くない?」


あらら。キレかけてるよ。キレさせてるし。もっと上手くやればいいのにね。傍観者の気楽さで見守っていると、偶然にも、不幸なことに、小林さんと目が合ってしまった。驚きに開かれる色素の薄い目。あ〜もう…嫌な予感しかしない。


「っあ…神田先輩!良かった〜。待ち合わせの時間になっても来ないから心配してたんですよ?」


そう言って小林さんが俺に駆け寄ってくる。彼女の動きに合わせてチンピラの視線が移動して、最終的に俺を睨みつけてくる。…勘弁してよ。…本当に。気付かれないようにため息を吐く。


「あ〜。ごめんね!優希。寝坊しちゃって…メールしたんだけど、気付かなかった?」


「ぇ、あ、メール?…うわ。本当だ。ごめんなさい!色々あって気付かなくって…。」


色々あって。の部分を微妙に強調してるように思うけど、多分気のせいではないはずだ。気の強いことで。


とりあえず小芝居は早々に切り上げて、この場から離れることにする。チンピラさん達に軽く会釈をして歩き出すと、忌々しそうに舌打ちされる。ちっ。…やっぱり上手いね、舌打ち。練習したの?もちろん心の中で思うだけ。


チンピラさんと別れて、足早に歩くこと約1分。きびきびとした足取りで俺の前を歩いていた彼女が突然立ち止まる。沈黙。とりあえず歩いてきたけどこれからどうするつもりなんだろ?というか、ここ、そもそも俺が行きたかった場所と正反対なんだよな〜。…もう帰っていいかな?彼女後ろ姿がやけに張り詰めているから、そんなことを気軽に言えそうにない。


「………神田先輩。」


「ん?あ、っと。はい。何?」


ようやく彼女が沈黙を破り、振り返って俺の方を見る。ぼんやりしていたため、反応が遅れてしまった。そんな俺の目を見ながら、彼女がゆっくり口を開く。


「…助けてくれてありがとうございました。困っていたので助かりました。…それと。面倒に巻き込んでしまってすみませんでした。」


「いえいえ。どういたしまして。こちらこそごめんね?絡まれてるの気付いたんだけど、どうすればいいか分からなくて。」


思ったより率直な感謝の言葉を告げられ、少し意外だと思った。彼女のことなんて何も知らないけれど、なんとなく。そういえばまともに彼女と目を合わせて会話するのはこれが初めてだ。知り合って間もないから当たり前のことかもしれないけれど。


助けてくれてありがとう。と彼女は言ったけれど、俺は自分から行動する気はあまりなかった。怪我するの嫌だし。彼女がアクションを起こさなければ俺がどうこうすることはなかっただろう。的外れだよな。と思いながらも、素直に自分の非を認めながら謝る。申し訳なさそうな、少し困ったような表情を作って。


そんな俺の素直な言葉を聞いた彼女は小さく笑った。笑顔を見たのもこれが初めてだ。友人に見せる活発そうなものではなく、つまらないものを見た時のような失笑。


「分かってますよ。見てたの、気付いてましたから。」


「は?…ぁ。そうなの?」


思いがけない言葉に、思わず素で反応してしまい、すぐに、驚いた!という表情で問い直す。無駄だとは思ったけれど。きっと彼女には、誤魔化そうとしたこともバレている。


「面倒だな〜。って顔してましたよ、思いっきり。…だから謝ったんです。巻き込んでごめんなさい、って。」


「あ、なるほど。そういうこと、ね。」


淡々と指摘され、謝罪の意味も分かると素直に頷いてしまった。…ということは。


「じゃあ、あの時、実は結構怒ってたでしょ?俺が見てるだけで何もしようとしてなかったから。」


巻き込まれた時から考えていたことを口に出せば。はい、と即答され、ため息を吐く。ここ何日かで、一体どれだけの幸せが逃げただろうか。


「あぁ、でも、感謝してるのは本当ですよ?ありがとうございます。」


「…ご丁寧にどうも。」


笑顔で続けられた言葉に、それだけしか返せない。あぁ、本当に嫌だ。振り回すのは好きだけど、こんな風に振り回されるのは、本当にキライ。


「だったらさ〜、」


だから、仕返し。


「本当に感謝してくれてるんだったら。お願い、聞いてくれない?」


作り笑顔でおねだりすれば、彼女の大きな目が細められ、冷えた視線をプレゼントされる。うん。かなり嫌そうな顔をされて、少し満足。嫌がらせ成功だ。


こんなに面白いこと、これだけで終わらせてはもったいない。ほんの30分前まで、興味をそそられていたことも忘れていたけれど、関係ない。


久しぶりの再会と、好奇心の再開。


俺は初めて彼女に会った時以上に楽しくなって、嬉しそうに笑った。




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