友人、前進
更新あいてしまいました( ;´Д`)
忙しいうえに、全くネタがorz
絞りだしました!よろしくお願いします!
「あっはははは!いや〜、いいね!そういうの!青春真っ盛りって感じ?思いっきり頭悪そうで大好きだよ、うん。」
「吉田さん…傷口に塩どころかハバネロ塗りつけるみたいなこと言わないでくれる?俺、わりと本気で凹んでるから。」
俺はあの試合、高橋に負けた。3ー0の完敗だ。まぁ、現実ってそんなものだよね。ていうか、手加減するなよ。って高橋に釘を刺したから当然と言えば当然なんだけどね。格好付けたことなんて言わなければ良かった…。そう一瞬思ってしまって若干自己嫌悪に陥った。
苦々しい顔でため息を吐けば、心配そうな顔をした高橋に声を掛けられた。大丈夫だからそんな顔すんな。と笑って肩を叩いてやれば、複雑そうな様子だったが俺に気を遣ったのか、それ以上は何も言わずに去っていった。
この件で珍しく凹んでいた俺は、帰宅してから吉田さんに電話をして、情けなくも愚痴を聞いてもらっている状態だ。優しく慰めてくれるなんて思ってた訳じゃないけど…流石にここまで笑われるとは思ってなかった。…いや、あの、本当に笑い過ぎじゃない?
「あはは、ごめんごめん。いや、だって笑うしかないでしょ?ダーリンの方から電話かけてきたから何かと思えば。…ふふっ、あ、駄目だ。ごめん、もう一回だけ笑うね?はは、あっははははは!も、最っ高!あはははは!」
…最悪だ。このリアクションは予想出来たのに、何でよりによって吉田さんを愚痴る相手に選んじゃったのかな?凹み過ぎて判断力が鈍ってたとしか思えない…。頭痛がし始めた気がして目頭を抑える。
「あ〜…面白かった。ふふ。まぁ、あれだね。神田くんでもそんな風に必死になることあるんだね、意外。ていうかその子、小林さん?羨ましいな〜。そんなに想われるなんて幸せなことだと思うもん。」
俺のことを散々笑った吉田さんが、しみじみと呟く。…羨ましい、ね。好きでもない男に好かれても嬉しくないんじゃないかな。それに俺は彼女に好きな人がいるって知ってるんだよ?かなり女々しいと思うけどね、俺。
まだ笑いの余韻から抜け出せていない様子の吉田さんにそんなことを言えば、ふ、と小さく笑われた。ねぇ、神田くん?ゆっくりとした、穏やかなトーンで名前を呼ばれる。今まで聞いたことがない程優しげな声だったので、どきりとする。見えていないとは分かっていても思わず目を伏せてしまった。呼び掛けに応えない俺の耳に、密やかな笑い声が聞こえた。
「…神田くんさ〜、もっと自信持ちなよ。そんなに投げやりにならなくてもいいって。まぁ、君はとてもじゃないけど性格が良いとは言えないし、心の中では常に人の事を見下してるようなところもあるし、ちょっと引くくらい根暗な時もあるけど。でも、何だかんだ優しいところもあるって分かる人には分かるよ。あ、多分だけどね?それに、少なくとも私はダーリンのこと好きだよ♪」
「励ましてくれてありがとうハニー…でもあんまり嬉しくないかな。まぁ、そういう励まし方は吉田さんらしいけどね〜。」
呼び掛けの落ち着いたトーンからは想像出来ない言葉とテンションに、やれやれと呆れながらも、少しホッとした。そんな自分に気づき、少し嫌な気分になった時、部屋のドアがノックされた。軽く、ゆっくり3回。開けていい?という言葉に返事をすれば、ドアを半分程開いてケイが顔を覗かせた。
「尚〜。晩飯出来たよ〜。あと、俺もう帰るけどまだ食べないんだったらラップとか…あ、うわ。ごめん、電話中だったんだ?」
ドアに背を向けていた俺が振り返ると、声をかけたケイが申し訳なさそうに謝ってきた。別に大丈夫。ていうか開けていいって言ったの俺だし。すぐに食べるからラップしなくて良いよ。と応える。
あぁ、そういえば今日で家出終了だったっけ?今回は長かったな。親父さんからの帰還命令の電話もなかったし。ごめん、話はまた今度。そう吉田さんに言おうとするより先に、吉田さんが驚いたような声を出した。
「あれ?今の声、もしかしてケイくん?」
「ぇ?…そうだけど。あれ、ケイと知り合いなの?吉田さん。」
言いながらケイの方をちらりと見る。話の内容が分かるように名前を声に出した甲斐があって、すぐに俺の電話の相手は分かったらしい。ケイの方は特に驚いた様子は見せなかったが、あちゃ〜。とでも言いたげな様子で顔を右手で覆っている。…何て分かりやすいリアクションだよ、おい。苦笑しながらケータイを操作してスピーカーに切り替え、開いた状態で机に置いて腕を組む。
「ケイ?そのリアクションの意味は?」
「いや〜…。何て言えばいいか…」
言いよどむケイに先を促し白状させる。俺がケータイを自宅に忘れた時に、体調不良で学校を早退したケイが自宅より近いからと俺の家に合鍵で入ったこと。その際に俺のケータイが偶然着信していたのを発見したこと。そしてそれをつい手に取ってしまったこと。
全て聞き終わり、今度こそはっきりと頭痛がして顔をしかめる。
「その相手が吉田さんだった、と。なるほどね。それで?何で俺の恋愛相談を吉田さんに横流ししてんだよ。」
「いや、面目ない…すぐに電話切ろうと思ったんだけど…あれよあれよと言う間に…。」
「いや〜、ごめんね。周りに居ないタイプだったから何かイジりたくなっちゃって。ちょっかい出しつつダーリンのことを聞いたらどんどん爆弾ネタを提供されちゃって…いや〜、青春だね!」
いつの間にか正座して反省しているケイに、ごめんと言いながら全く悪びれずにいる吉田さん。顔は見えないけど、確実に楽しそうな顔をしているはずだ。はぁ〜。スピーカー越しに聞こえるように、大きな声でため息を吐く。全く、もう…。
「通りで俺の事情を細かく知ってるはずだよ。案外早くネタバレしたね〜。それとケイ、流石にこれは無いからな。プライバシーの侵害だから。まぁ、心配してくれたのは分かるけどさ〜。」
心底呆れたように言えばしょんぼりと肩を落として、ごめんなさい!と両手を合わせる。心なしか完璧にセットされた髪も萎れているような気がする。
「まあまあ。そう怒らないでよ。君のキャラは、も〜勘弁してくれよ〜。って言いながら苦笑して、分かった分かった。許す許す。って感じでしょ?まぁ、素は全く違うって分かってるけど。…あ、そういえば。土曜日はどうする?もうネタバレしたからやめる?」
軽い口調で告げられた言葉に顔を顰める。キャラ作りを真正面から指摘されたのは初めてだ。黙って俺たちの話を聞いていたケイが不安そうな顔をする。何でお前がそんな顔してんだよ?
「デートはしようよ。純粋に遊びに行きたいし。」
「え!本当⁈」
「いや、ケイ?だから何でお前がそういう反応なんだよ…。意味が分からん。ていうか、いい加減お腹も空いたしそろそろ切り上げていい?ケイ、悪いんだけどご飯温めといてくれない?」
気付けばケイが俺を呼びに来てから30分近く経っていた。了解!元気良く返事して、痺れた足を引きずりながら出て行くケイを見送る。
「…吉田さんも、次からはちゃんと言ってね?知らないところで俺の話をされてるのって好きじゃないんだ。」
「うん、ごめんね?楽しかったけど流石に反省してるよ。あと、デートやめるって言わないでくれてありがとうね。」
「別に。吉田さんとは好みが合うから話してて楽しいから良いんだよ。あ、それとさ。やけにケイが吉田さん寄りな気がするんだけど、他に何の話したの?」
ベッドに横になって天井を見ながら聞く。なるべく、特に何の気無しに聞いてみただけだと思って貰えるように、軽い口調で。こんな風に取り繕っても、吉田さんには効かないだろうけど、ね。少しの沈黙。階下で、ケイがつけたお笑い番組だろうテレビの大きな笑い声が聞こえる。俺は吉田さんに先を急がせようとはしなかったし、吉田さんも俺を焦らすつもりは無いんだろうけど口を開かない。尚〜?ケイが呼ぶ声が聞こえる。黙ったまま、じっと待つ。すると、ようやく口を開いた。
「…秘密、だよ。ダーリン。ごめんね?あんまり話したくないな。」
申し訳なさそうに、紡がれた言葉に声を出して笑う。わがままだな〜、本当に。でもまぁ、そういうところ、らしいと思うよ。
「わがままなのが私らしいってこと?そんな!酷いわ、ダーリン!…まぁ、茶番はこれくらいにして。そろそろ切るね。ご飯食べなよ。おやすみ。」
茶番って、酷いな〜。そうだね、また冷めちゃうし。おやすみ。
簡単に返して電話を切る。階下のリビングへと降りながら、吉田さんの言う秘密について考える。…やめとこう。最近色々考え過ぎだし。席につき、豚肉の生姜焼きと味噌汁に口をつける。やっぱり美味しいな。
ケイがご飯をよそって持ってきてくれたのを受け取ると、ケイも食べ始める。
「…ん。今日の出来はかなり良いな。あ、そういえばあの後何の話してたんだよ?降りてくるの遅かったけど。」
ケイが生姜焼きをご飯の上に乗せて一緒に口に入れたのを飲み込んでから聞く。味噌汁の油揚げを箸でつまみ、口に放り込む。一緒に入っている玉ねぎの甘みもあり、とても美味しい。正直男子高校生のレベルじゃないと思う。黙っていると、ちょっと〜?シカト良くないぞ〜。と苦笑しながら言われた。その顔を笑顔で見返しながら口を開く。
「…秘密、かな?」
「え〜?何だよそれ〜…ん〜。まぁ、いっか。あ、白菜の漬け物もあるよ。食う?買ったやつだけど。」
「流石に漬け物まで自作されたらビビるわ。主婦並のスキルだろ。」
「OK。だったら今度作るわ。ぬか漬け。ていうか、正直俺の料理の腕は全国のお母さんにも負けないと思うんだけど!」
はは!何だよそれ?馬鹿っぽいし!
胸を反らして自信満々に言う姿に声を出して笑う。マジだって!笑いながら必死に今日の生姜焼きの隠し味がどうの、と熱弁する姿が面白い。まぁ、かなり美味しかったのは事実なのでそこには突っ込まない。
ケイとお笑い番組を見ながら、誰が面白いだの、この司会者役の芸人は好きじゃないだのと好き勝手なことを言い合う。馬鹿みたいに笑っているうちに、学校での出来事がもう気にならなくなっている自分に気付いた。
自分が立ち直ったのは良いが、高橋に酷いことをしたのには変わらない。勝手に対抗意識を燃やして、勝負に負けたらふてくされて。それであげくにもう気にしてない、なんて言いながら笑っているのを見たら、俺ならそいつとはもう関わらない。高橋と違って心が狭いから。
明日、高橋に謝ろう。購買のパンでも買って、ごめん、って素直に謝ろう。そして、その後は…
今度は決意するだけじゃない。絶対に実行しようとそう強く思った。
いつになったら、恋愛小説になるのか…
頑張ります(;´Д`A
読んで下さりありがとうございました!