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他人事な恋  作者: 紫苑
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少年の朝と友人の緊張


朝目が覚めると、まず顔を洗って、その後にうがいをする。そうしてやっと頭が動きだすから、食パンをトースターにセットし、焼き上がるまでにコーヒーを淹れる。豆を挽くなんて面倒だからしない。インスタントコーヒーの安っぽい香りの方が落ち着くし。


テレビをつけると、昨日あった犯罪と、今日の天気と外国の株価がどうのと、毎日はそれぞれ違うはずなのにいつも通りの手順で流している。星座占いでは乙女座は最下位。特に感想をもつことなく眺めていると次のニュースに切り替わる。


トーストが焼けるとバターを塗って、いつも通りの朝食の完成。ジャムはつけない。イチゴジャムを子供の頃に見たとき、腐ってると勘違いしてから、何だか気持ち悪いと思ってしまうからだ。高橋にそのことを言ったときに盛大に笑われた。そのことを思い出して舌打ち。ドラマの不良のように上手く出来ない。ちっ。


高校までの道のりをゆっくり歩く。犬の散歩をしているおばさんに挨拶。あんなに可愛いのに噛まれるのが怖くて撫でることは出来ないのが悔しい。ヘタレって訳じゃないけど。


学校に入れば、朝練をしてる声や先生が大きな声で挨拶しているのが聞こえて少しげんなりする。体育会系のノリは苦手なんだよな。聞いてるだけで疲れるなんて自分でもどうかと思うけど。



「よ!神田!今日も眠そうだなぁ!ちゃんと飯食った?」


教室に入った途端、背中をばしん!と叩きながら挨拶される。振り向けば無駄に爽やかな笑顔を振りまくクラスメイト。体育会系のノリは苦手だって言ってんだろ馬鹿。


「高橋…お前はいつも爽やかだよな、そんなんで疲れないの?人生に」


「人生に?!重すぎるって!」


大袈裟にツッコミながらも爽やかな空気は崩さない。凄いなこいつ。尊敬するわ。真似出来ないし、したくもないけど。…5分くらいなら出来る、か?反動が凄そうだな。


「はは、ナイスツッコミ!それは良いんだけどさ、数学のノート見せてくんない?今日当たるんだよね〜。」


なるべく当たり障りのない会話を心掛けながら、席につく。あまり絡みたくないからさっさと本題に入る。いいやつなんだけどな、間違いなく。


「え、やってないの?ん〜、まぁ、いいけど。…今日の課題、須藤にしては少なめじゃなかったか?」


そういいながら、机の中からノートを取り出してみせる。昼飯で釣るまでもなかったかな?いいやつだな、おい。


「おぉ〜。サンキュー。助かるよ!昨日色々あってさぁ、出来なかったんだよね。」


「別にいいって!その代わり昼飯奢りな?」


爽やかに笑いながらも取るところはしっかり取る。その場で貸し借り無しに出来るのは楽だし、こいつのこういうところは好きだな。まぁ、こいつ自体は苦手だけど。


了解〜。軽く返事をしてノートを写す作業に取り掛かる。シャーペンを持った瞬間、ノートが横から伸びた手に奪われる。ちらりとそちらを見ると、相変わらず爽やかに笑うクラスメイト。計算でないため息を吐く。あ〜…もう。今幸せが逃げたぞ。どうしてくれんだよ。ただでさえ今日は乙女座が最下位なのに。


「昼休みに、飯食った後で間に合うだろ?数学午後からだしさ。昨日の別れ話、聞かせろよ?」


ノートを手に笑う高橋を見て、もう一度ため息。本当、良い性格してるよな。こいつ。


「え〜…いやいや。何で知ってんの?まぁいいけど。」


文字通り根掘り葉堀り聞かれるんだろうな、と思うと気が進まないけれど。ノートは大切だし仕方ない。高橋が言いたいことは想像つくから面倒なことになるかもしれないとは思ったが、課題に比べたらそんなことは些細なことだ。


自席に戻りながらちらりと高橋を見ると、若干顔を強張らせながら席に着いているのが分かり、ふ、と笑いが零れた。




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