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他人事な恋  作者: 紫苑
17/24

自己嫌悪と決意


更新空きました(~_~;)

今回は結構長いです!


読んで下さると嬉しいです!


評価、お気に入り登録して下さった方。この小説を読んで下さった方。ありがとうございます!





「あ〜…きもちわるい…。」


翌朝、晴れ渡る空の下。高校への道を天気とは対照的に陰鬱な気分で歩いていた。


昨日は帰った後、ケイに質問攻めにされウンザリしてしまい、シャワーを浴びて夕飯を食べることもせず寝てしまった。


「だからって、何が悲しくて朝から親子丼なんて食わなきゃならないんだよ…」


普段ならコーヒーと食パンが並ぶ食卓に、何故か圧倒的な存在感で置かれている親子丼。嫌がらせか?とケイを睨めば、食べないと大きくなれないぞ〜?と笑顔で言ってきた。心底イラッとしたが、その後は完食するのに必死だったため黙殺した。


そもそも朝食をコーヒーで済ますことも多い俺にとっては、丼一杯の白飯と甘辛い玉子と肉の組み合わせはキツすぎる。今思い出しても胸焼けが止まらない。味は最高だっただけに残念だし、ケイにも申し訳なかったと思う。


これに懲りて今度からはきっちり食うか…。ため息をつきながら教室のドアを開ける。そのまま閉めた。…あぁ、これがデジャヴュって奴か。いや、違うな。そもそもデジャヴュってのはある行動を起こした時に、以前にも同じことがあったと感じることだった筈だ。この場合は似たようなことを以前したって意識がはっきりしているから、厳密に言えば違う、と思う、多分だけど。誰に聞いたんだっけ?あまり真剣に聞いていなかったから記憶が曖昧だな〜。


「何やってんだよ?ていうか人の顔見て閉めるとか失礼だろ。」


「おはよう、高橋。いや〜、そんな事言われても。ドアを開けたら腕組んで仁王立ちしてる男が居たんだよ?そりゃビビるよ。当然のリアクションだって。」


高橋は元々顔立ちが優しげなので怖いという訳ではなかったが、咄嗟にドアを閉めるくらいの事は仕方ないと思う。


「あのな〜…。昨日、放課後教室に残って日直の日誌書いてたら用事があるから出て行けって言ったのは誰だよ?その後メールしても返ってこないしさ。」


「出て行けなんて言ってないって。ここ使うんだけど、って言ったらお前が自主的にどいたんだろ?ていうか前から思ってたけど、メールし過ぎ。返信来なかったからって怒るなよ、女子か。」


過干渉なんだよ、お前は。そう言えば、高橋が目を見開いて俺を見ていた。ちっ。心の中で舌打ち。わざと大きなため息を吐き、口を開いた。


「なぁ、高橋?前から思ってたんだけど…」


「ぇ、あ、何?」


高橋が不安そうな、緊張した様子で俺を見る。いつもと違う反応が返って来たから驚いているんだろう。期待に応える事にする。いつもの軽くて適当な、髙橋から見た俺にふさわしいように。


「ごめんな?あの、俺…女の子が好きなんだ。だからお前の気持ちには応えてやれな、」


「はぁ⁈ば…当たり前だろ‼お前、いきなりシリアスな空気出すから何かと思えば…違うからな⁈俺だって女の子が好きだから‼」」


わざと沈痛な面持ちで言ってやれば予想通りの大げさなリアクションが返ってくる。さっきまでの警戒したような空気は全くない。やれやれ。


「冗談だよ、冗談!つか朝から元気だな〜。俺なんか朝から親子丼食べて気分悪くて死にそうなのに。」


「笑えないにも程があるだろ…。ていうか何で朝から親子丼?今日何かあんの?誕生日とか?」


脱力した高橋が笑いながら不思議そうに問いかける。


今日?今日は…………ぁ、


「高橋…悪い。あれだ。…今日帰るわ。」


「え?帰るって、マジで?そんな体調悪いのか?」


心配そうに聞いてくる高橋に、うん。とか、あぁ。とか適当に返しながらカバンを手に取り教室を出て歩き出す。校門をくぐる。足を早める。信号に引っかかった。気持ちばかりが焦ってしまう。…最低な気分だ。青になるのを待ちきれず走り出そうとした。その時。


「神田先輩!何やってるんですか⁈危ないですよ‼」


後ろから大きな声に呼び止められた。


「小林…。」


驚いたような顔をしている小林が居た。自転車通学なのだろう。高校のステッカーが貼られている自転車に跨っている。


「え、どうしたんですか、そんなに慌てて。カバン持ってるし学校行ったんですよね?忘れ物ですか?」


「あ〜…うん。そんな感じ。ごめん、急いでるんだよね。あと今日学校休むから。勉強頑張ってね。」


早口にそれだけ言い、背を向ける。すると、またも呼び止められる。


「ぁ、あの!神田先輩!」


「何?急いでるんだよ。」


何の事情も知らない彼女にイラついても仕方ない。分かっているが邪険な反応を返してしまう。一瞬怯んだような顔をしたが、すぐに強い目で見返してきた。慌てて自転車から降りながら口を開く。


「自転車、貸しますよ。ここからなら学校も近いし、歩いても遅刻せずに済みますから。…何か急いでるんですよね?」


彼女は何の事情も知らない。俺にかけた心配の声は邪険に無下にされた。…なのに。


「…ごめん。ありがとう。」


それだけ言って自転車に乗り、走り出す。当たり前だが走るのよりも格段に早い。それでも目的地までの道のりは酷く遠かった。息を切らせて到着すれば、急いで自転車を停める。鍵をかける手間も惜しく走りだそうとしたが、思い直してきちんと鍵をかける。少し冷静になることが出来た。ゆっくりと足を進め、目の前で立ち止まる。


真っ黒で光沢のある、冷たいそれ。



「…父さん、母さん。」



…今日は、父さん達の命日だった。親子丼は母さんの得意料理で、俺も父さんも大好きなメニューだった。命日になるといつも墓参りをする、という訳じゃない。忙しければ来られないし、次の日に回したこともある。普段なら、学校を抜けてまで来ることはなかったと思う。だけど。


「…最低だ、俺。」


思い出さなかった。…思い浮かべなかった。父さん達の命日に、親子丼を食べても。ケイは狙ってやった訳じゃないだろう。実際、あの親子丼は昨日の夕飯だったんだし。俺が親子丼が好きだと以前言ったから、俺と小林のことをけしかけたのを悪いと思って、労いの意味で作ったにすぎない。


「最低だ。俺。」


せっかく作ってくれたケイの厚意を無駄にして。今日だって、高橋も小林も俺を心配してくれたのにその心配が面倒だとさえ思った。


ケイも、高橋も、小林も、川村だって。俺の周りは良い奴が多すぎる。ケイは時々あり得ないぐらいウザいけど、気を遣ってないからこそ救われた事も多かった。高橋は面倒な奴だけど、あり得ないぐらい真摯に向き合う奴だ。川村は別れ方こそあんなだったけど、本当に好きだと思えた彼女だったし、小林との事だって、後輩と俺を心配してくれてた。小林は…何だかんだ言って見ていて楽しかったし、映画を見た時に素直に感謝出来る子だった。何も聞かずに自転車を貸してくれた。


俺だけが、最低。あぁ、もう。久しぶりに落ち込んでる気がする。


父さんたちの墓石の前に座り込み、自己嫌悪で立ち上がるのも億劫になる。ふとケータイを開くと新着メールが3件。差し出し人は…



from 高橋

とりあえず体調不良で休みだって先生に言っといた。今日、数学あるからノート取っとくな。お大事に。


from 川村

優希が血相変えて帰ってるの見たって言ってたけど大丈夫?走ってたみたいだし、体調悪い訳じゃないみたいだけど…。気をつけてね。


p.s. 尚に自転車貸したせいで優希が遅刻しちゃったから、ちゃんとお礼言わなきゃ駄目だよ?


小林

忘れ物ありましたか?自転車はいつでも良いので…って言いたいんですけど、出来れば学校の駐輪場に置いといてくれると嬉しいです(^^;;


何か様子がおかしかったですけど、元気出して下さいね(^-^)



………本当に、もう。どいつもこいつも良い奴すぎて凹む。何なんだよ。


こんなに優しい言葉をかけられて、そんな感想しか出てこない俺は本当に嫌な奴だと思う。ため息を吐きながら立ち上がる。ケータイに着信。ケータイから流れる流行りの明るいメロディに舌打ちをする。ちっ。


「…はい。もしもし?」


「あ、尚?俺!学校行く途中でケータイ忘れたことに気付いたんだけど、合鍵も家の中に置いて出ちゃったんだよね〜。そっちに行くから休み時間にでも校門の辺りに出て来てくれない?んでちょっとの間鍵貸して下さい!」


今、公衆電話から掛けてるんだよね〜。意外と見つからなくてびっくりした!


本人は焦っているのかもしれないが、その内容はあまりにも間が抜けているため笑えてくる。公衆電話はどこですか?なんて道行く人に聞いて回っている姿を想像して、吹き出してしまった。


「いや、笑ってる場合じゃないから!俺は現代っ子なんだからケータイ無いとヤバイの!」


「あ〜はいはい。分かったよ。ていうか学校じゃなくて家に帰れよ。俺も今から行くから。」


「え、尚も?学校は?行ったばっかりなのに早退したの?」


「急に父さんたちに会いたくなったからサボった。」


「…えぇ〜⁉お前、ずるいだろ!そんなん俺だって親父さんたちに挨拶するよ!え、ちょ、俺も今から行く!」


言うなり切られてしまったケータイをしまい、声を出して笑う。ケイが来るまでにはまだしばらくあるだろう。その間に父さんたちに俺の周りの奴らについて話してみよう。ケイが来た後は、学校に小林の自転車を返しに行かないとな。


もう一度ケータイを取り出して先程来ていたメールを見返す。一拍置いてから、それぞれのメールに返信する。


ケータイをしまい、深呼吸をする。明日からは、もっと素直になろう。俺にはもったいないくらいの友人達を思い浮かべながら、ちっぽけな決意をした。






尚がようやくデレはじめるようです。


ここまで恋愛要素が少ないので

徐々に入れたいな〜と思います!


読んで下さりありがとうございました!



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