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他人事な恋  作者: 紫苑
14/24

訪問と疑問


この話は難産でした…。


でも頑張って書きました( ̄^ ̄)ゞ





「ケイ、今回の避難の原因は?」


「違うから。避難じゃなくて家出!親父がまたキレてんのよ。嫌になっちゃうね。」


ケイは親父さんと仲が良くない。高校の教師で生徒指導を担当する父親からすれば、ケイの独特な感性は理解しづらいのだろう。


「まぁ、見た目が不良っていうかチャラ男っていうか…先生からしたら怒りたくもなるだろ。」


「人間は中身で勝負だろ?こんないい子なかなか居ないよ?」


「人間は見た目が7割強なんだよ。性格云々は見た目が無理ならそもそも考慮されないんだよ。」


「鬼!夢もロマンも無いなお前は!」


ギャーギャー騒いでいるケイを無視してケータイを見ると、メールが来ていた。…小林さん?あぁ、昨日メールしたんだった。内容をチェックすることなく元に戻す。昔から、面倒なことは後回しにするのが俺の悪癖だった。


「はいはい。分かった分かった。とりあえず飯食いに行くぞ。毎回お前に作らせるのも悪いしな。」


「いや全然分かってないだろ。てか、あれな。お前が作るって選択肢は無いのな?別に良いけど。んで、どこ行く?」


「豚骨ラーメンな気分。どう?…じゃあ決まりな。」


ゲームに集中するうちに正午を回り、1時近くになっていた。一応ケイにも確認すれば異議なし!との返事だったのでラーメンを食べに行くことにした。財布とケータイだけ持って立ち上がった。玄関のドアを開け、そのまま閉める。ケータイのメールをチェックする。


「お〜い、どうしたよ尚?行かねーの?」


後ろでケイが呑気な声を出している。メールの内容を読んで、あぁ、これは面倒だな。とぼんやり考えた。ため息を吐いてもう一度ドアを開け、玄関の前に立つ人物に声を掛けた。


「おはよう。優希。…とりあえず入る?」


「え?招き入れちゃうんだ。ラーメン食べに行くんじゃねーの?」


残念ながら豚骨ラーメンはお預けだ。俺はあの時にメールの内容を確認するのを後回しにしたのを後悔した。


とりあえずリビングに案内し、ソファを勧めた。テーブルの椅子を持ってきて優希の正面に座る。ケイは俺の部屋に避難している。逃げる前にコーヒーを淹れていった。美味い。


「ごめんね、突然押しかけて。メールの返事が無かったから、来るなって意味だとは思ったんだけど…。どうしても直接話したくて。それで、」


「いや、謝るのは別にいいんだけど。高橋の事好きなの?」


真剣な顔で話をする彼女の言葉を遮って質問をぶつける。謝罪も弁解もいらないから、早く話を終わらせて欲しいと暗に告げる。途端に彼女の顔が歪み、どこか痛そうな顔をする。


「……は、い。」


「あれ…認めちゃったよ。え?じゃあ来る必要無かったよね。メールで別れてって送ったんだから、それを承諾すれば良いんだし。何で来たの?」


そもそも、どうして付き合ったの?


告白をOKされた時も思った。君に一体何のメリットがあるのかと。川村と俺のことを利用して、兄が卒業した時に消えてしまった、高橋との接点を作ろうとしたのなら目的は達成されたはずなのに。


けれど、それにしては…。


俺は優希との会話の中で高橋のことを話したことはある。だが優希はそれを聞いても特に深く高橋のことを聞こうとはしなかった。普通は好きな相手のことを知るために周りから情報を得ようとするのでは?


疑問はたくさんある。考えているうちにも時間は過ぎる。優希は質問に答えない。時計の針が進むのが耳に障る。


…何で興味を失った人間のためにこんなに考えないといけないんだ?そういえば昼飯まだなんだよな。豚骨ラーメン食べたい。ため息をついたその時。


「はいはい、そこまで。あ、初めまして。突然ごめんね〜?俺、尚の友達なんだけど、これから食事しようかって時だったんだよね、さっき。俺もこいつも腹ぺこでヤバイから続きは今度にしない?」


突然ケイがリビングに入ってきて、満面の笑顔で愛想よく言い放った。この空気の中でこんな事が出来るこいつは大物だ。普通なら、邪魔だから早く帰れ、と言われたと思うだろう。だが、意味は同じでもこいつに悪意は全くない。純粋に、お腹が空いてご飯を食べたいから後にしてくれ。と言っているだけだ。マイペースにも程がある。


でも正直助かった。川村の時と違い、相手の目的が分からないので、もういいよ、と話を切り上げることも出来なかった。


「小林。悪いんだけど、こいつの言う通りまた今度にしてくれないかな?色々…考えたいこともあるし、頭の中ぐちゃぐちゃで。」


「…分かった。ごめんね、お昼時に。今度時間ある時に連絡してくれる?…それまでに私も、頭の中整理しておくから。」


小林を玄関まで見送り、ソファに座りこんでからようやく一息つく。疲れたな。しかも結果的に面倒な問題を後回しにしただけだ。


「お疲れ〜。で、飯どうする?」


「大物だよな、お前…。ラーメン行くぞ。」


先延ばしにするのは面倒なことだけで十分だ。そういえば、了解!と元気のいい声が返ってきた。勢いをつけて立ち上がり、先に玄関を出たケイを追いかける。とりあえずラーメン食って、その後は作戦会議だな。ダルいけど仕方ない。


これから面倒なことが起きるのは分かってるんだから、とりあえず今は何も考えずラーメン食べよう。俺はそう結論を出してラーメン屋までの道のりをケイと馬鹿みたいな軽口を叩きながらゆっくり歩いた。




ケイみたいな人ってクラスに一人は居そうでいないタイプだと思います。


悪気なく場をかき回してくれるので、話が詰まったら空気をぶち壊して欲しいです。


読んで下さってありがとうございました!



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