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他人事な恋  作者: 紫苑
13/24

はた迷惑な親友


ピンポーン、ピンポーン


「ぅ…あ〜…。何、誰、今何時…まだ9時とか。」


日曜日の朝っぱらから、家中にチャイムが鳴り響く。うるさい。昼まで寝るゆっくり寝る予定だったところを叩き起こされて、訪問者に迷惑を考えろと言いたくなる。


ピンッポーン、ピピピンッポーン


「ちっ。うざ。…はいはい。今行きますよ。」


人ん家のチャイムをリズミカルに鳴らしてんじゃねぇよ。しつこくなり続けるチャイムに舌打ちしながらベッドから出る。Tシャツとスウェットの上からジャケットだけ羽織り、階下に下りて玄関のドアを開ける。


「よぉ、尚!おっはよ〜う!あれ、もしかして寝起き?起こしちゃった感じ?」


後悔した。寝起きには辛いテンションの高さの人物を見てため息をつく。


「久しぶり。帰れ。」


「ちょっと?!酷くね?久々に会った幼馴染の親友に!まぁ、お前はツンデレだからな。仕方な…ごめんごめんごめん!待って!閉めないで!」


頭が痛い…何なんだよこいつ。意識して舌打ちをする。イラつきを隠そうともせずに睨みつければ怯えた顔をする。可愛くないからぶりっ子やめろ。


「尚〜、お前な、寝起き悪いにも程があんだろ!んな怖い顔すんなよ。女の子泣いちゃうよ?あ、てか入っていい?お邪魔しま〜す!」


そういうなり許可も得ずに上がり込む。何を言っても無駄だと知っているから何も言わない。だがムカつく。迷惑をかけているのを分かってやっているからタチが悪い。ため息をつく。


「で?何しに来たんだよ、ケイ。」


「え〜っとぉ…お願い、尚くん!しばらく泊めて?」


「却下。」


ご丁寧に語尾にハートマークをつけて言われた言葉に即答すれば、人でなし!悪魔!と泣き真似をしながら罵られる。こいつは俺のイラつかせる天才だと思う。


「いいじゃ〜ん!大人しくしてるからさ〜。どうせ部屋も余ってるんだし、ケチケチすんなよ!」


「……お前な。てか勝手にマンガ読んでんなよ。うるさいし。マジで怒るよ?河辺蛍。」


「フルネーム言うな!てかほたるって呼ぶなって言ってんだろうが!音読みしろ!リピィートアフタァーミー、ケイ!」


「うざい。」


わざとフルネームで呼べば案の定キレた。かわべほたる。河の辺りの蛍。初めて知った時は親が狙ってるのかと思った。こいつはあだ名じゃくて本名…特に下の名前を呼ぶとキレる。俺にはしないが、知らない奴が面白がって呼んだ時はヤバイ。まぁ、確かに…。改めて蛍、ケイを見る。


金に近い明るい茶髪に腰パン。襟ぐりの大きく開いたTシャツ。こいつは制服の時でもボタンは常に2つか3つ開けている。少し長めの髪はワックスで整えられ、左右の耳にはピアス。これでほたるという可愛らしい響きの名前は似合わないかもしれないな。


一般的な人間なら顔をしかめるかもしれない格好だが、顔がいいため見苦しくない。切れ長の涼しげな目もあいまって、黙っていればクールで近寄りがたいが、口を開けばこのテンションだ。ほとんど詐欺だと思う。しかもそのギャップが良いと、ムカつくほど女にモテる。


これだからイケメンは嫌いなんだよ。


同じく顔の整っている高橋を思い出す。清潔感のある長さの黒髪に人好きのする優しげな顔。その上あの性格の良さだ。少女マンガの中に帰れと言いたくなった。


ケイはまるで自分の部屋のようにくつろいでいる。寝転がって持参したポテチを食べ始めた時に俺はケイの説得を諦めた。ため息をつき、ゲームに専念することにした。俺がするのは大抵RPGだ。勇者が冒険をして魔王を倒すというテンプレな設定を少しずつ変えただけのゲームをたくさん持っている。高橋から借りたものもいくつかある。カセットを探しながら口を開く。


「ケイ、お前本当になんでいきなり来たんだよ?いつもは連絡入れてからなのに。」


「あん?昨日メールしたよ、ちゃんと。流石に泊めてもらう立場でいきなり押しかけたりしねぇよ。」


PSPの電源を入れながら聞くとそんな答えが返ってきた。そういえば電源切りっぱなしだったな。電源を入れ、新着メールをチェックすると、嫌がらせのように絵文字だらけのキラキラしたメールが1件。確実にふざけてるよな、こいつ。そう思いながら、電源を切っていて確認していなかったことを謝罪する。


「悪い。昨日電源切りっぱなしだったから気付かなかった。…それで、どれくらい泊まるんだ?」


「ん〜。1週間くらい、かな?今回は長めだけどお世話になります。」


分かった。ありがとう。やり取りはこれだけで十分だった。寝転がったままだが、きちんと俺と目を合わせて挨拶だけはする。ケイなりのけじめなのだそうだ。こちらに来る時は必ず連絡を入れるし、泊まっている間の家事はほとんど任されてくれる。


見た目が派手で、だらしなく見えても実は素直で真面目なこの幼馴染の親友を、俺はとても気に入っていた。






新キャラです。


尚にも気を許せるやつが居ても

いいと思いまして。


憎めないやつだと思って貰えると

とても嬉しいです(>_<)



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