他人事な俺
今回無駄にだらだら長いです。
ハッピーエンドにしたいけど、
どう繋げればいいか分かりません。
キャラ設定間違ったかもしれない…
でも頑張って書いたのでよろしく
お願いします!
「混んでたから遅くなっちゃって…
。アイスコーヒーで良かったんですよね?」
席に戻ってきた彼女が笑顔で手渡してくる。ありがとう。礼を言い、酷く喉が乾いていたのですぐに一口飲む。コーヒーは飲み慣れているはずなのに…苦い。優希を見ると、確かに笑っている。だが、相変わらず高橋の方を見ようとはしていない。それを見て、笑いが込み上げる。
「ちょっと。高橋くん?いつまで居んのよ、ここに。そんなんだから君は彼女出来ないんだよ。」
「ぇ。いや、お前、それ…!さっきまでお前が引き止めてたんだろ!?あ〜もう、分かったよ。邪魔者は退散するよ!」
軽口を叩いて高橋を煽れば、いとも簡単に乗ってくる。まったく。本当にいいやつだな、お前。扱いやすくってさ。
それじゃ。そう言うと高橋は、部活の友人だろう、高橋を呼ぶ声に応えて足早に立ち去る。それを見送り、ケータイで時刻を確かめる。上映時間まであと30分程。伝票を持って立ち上がる。
「そろそろ行こうか?チケット買ったりとかあるし。」
「あ…そうですね。少し早いけど、何かあったらいけないし。」
彼女のオレンジジュースはほとんど手つかずで残っているが、残したまま席を立つ。
「会計しとくから先に行ってて。すぐ追いつくし。」
「え、いや、お金…!前も払って貰ったのに悪いですよ。」
「あ〜…じゃあチケット俺の分も買っといてよ。それでチャラね?」
そう言えば納得したのか大人しく俺が会計を済ませるのを待つ。店を出る時に高橋が片手を上げて挨拶したので右手をひらひらとさせて挨拶を返す。優希はほんの少しそちらに体を向け、軽い会釈をするだけだった。
優希がチケットを2枚購入するのを少し離れたところで待つ。男の分の代金も支払うのは恥ずかしい、と思うかもしれないと思ったからだ。…まぁ、そういうタイプじゃないのは分かるんだが。実際、金を渡して貰って買いに行くといえば必要ないと即答された。
昼食を済ませたばかりだが、とりあえずフライドポテトだけは買っておく。これは映画館で映画を見る時の礼儀のようなものだと思っている。真顔でそのことを優希に言うと若干引かれた。
中央の列のやや後方の席が空いていたので隣同士で座る。ケータイの電源をオフにしてポケットにしまったところで明かりが落ち、上映が始まった。最初の映画の告知の長さにうんざりしてきたところでようやく本編が始まった。
内容をざっくり言えば、中世を舞台にしたファンタジーだ。映像がとにかく美しくて、劇中音楽も壮大で圧倒された。しかしデートで見るには向かないかもな、と思った。けれど俺にとってはテンプレな恋愛映画を見るより断然いい。
「どうだった?俺はかなり楽しかったんだけど…優希は?」
感想を求めても優希は無言のままだ。気に入らなかったのかな、いや、だったらなおさら無難に良かったです!って言えばいいだけだし…。そんなことを考えていると、
「…凄く良かったです!あまり映画を映画館で見ることに興味がなくて、DVDかテレビで放送される時に見ればいいと思ってましたけど…。全然違いました!」
「…そう?それなら良かった。」
その後も映像や音楽の迫力などを目を輝かせて語る姿に、うっかり可愛いと思ってしまった。
「今日は本当にありがとうございました。先輩…尚のオススメ見れて良かった。」
駅まで彼女を送った時に改めてお礼を言われた。どういたしまして。とだけ返し、時計を見る。彼女の乗る汽車の時間まであと20分。
「飲み物でも買ってくるよ。何か飲みたいものある?」
「え、良いんですか?じゃあ、カフェオレで。」
自分の分のコーヒーと彼女の分のカフェオレを買い、ベンチに腰かける。落ちついたところで口を開く。
「…あそこで高橋に会うとは思わなかったな〜。偶然って凄いよね?あ、そういえば、高橋のメアド持ってるんだっけ。」
「え?何でそれ…ぁ、高橋先輩に聞いたんですか?それで…」
軽い口調で問いかけるとぎこちない返事が返ってきた。いきなりの質問だからびっくりしたのかな。…高橋の話だから?
「俺あいつのこと苗字でしか呼ばないからさ、うっかり下の名前忘れるところだったよ。あぁ、優希もあいつの名前知ってるよね?下の名前も。」
「…あ、うん。メアド交換した時に教えて貰ったから。」
「高橋の先輩って君のお兄さんなんだよね?家に行ったり一緒にゲームしたりしたってあいつが言ってたよ。」
淡々と質問を重ねる。彼女は俺の方を見ない。手の中のコーヒーがぬるくなっていくのを感じる。
「尚…あの、先輩?…何が言いたいんですか。」
戸惑っているように見えるけれど、目は冷静に俺の真意を読み取ろうとしている。警戒されているのを感じて俺は笑いかける。出来るだけ優しく。俺の得意分野だ。
「…あ〜、ごめんね?何か、うん。嫉妬、ってやつ?あ〜もう!女々しくって嫌になるね。」
「嫉妬、って、それで機嫌悪かったんだ?何かよそよそしかったから…びっくりした。」
眉を下げてため息混じりに自嘲するように告げれば、ホッとしたように表情を和らげる。笑いかければ笑顔を返してくれる。
「ところでさ…、」
駅にアナウンスが流れる。もうすぐ彼女の乗る車両が入ってくる。アナウンスに反応して彼女がホームの方に目を向けた。
「*you*って、高橋のこと?」
彼女の、空気が変わったのが分かった。ありがちな表現だが時間が止まったかと思ったくらいだ。一瞬動きを止め、ゆっくりと振り返る。機械で動く人形みたいだなとぼんやり思った。
驚きや怯えや困惑が、全部混ざったような目が俺を見た後、彼女が少し目を伏せて、もう一度俺を見る。冷たいような、何の感情も読み取れない目。その目が、だから何だ、と問いかけてくる気がした。俺もその目を酷く冷めた思いで見つめ返す。
「そろそろ汽車が入ってくるんじゃない?乗り遅れないようにね。それじゃ、ばいばい。」
言いながら立ち上がり、歩きだす。彼女は引きとめなかった。視界の端で、彼女がゆっくりと立ち上がり、汽車に乗り込もうとしているのが見えた。ケータイを開き、メールを作成する。宛先は小林優希。送信ボタンを押し、電源を切ってポケットにしまう。
自分の中の興味が急速に薄れるのが分かった。歩きながら今日のことを思い出す。まぁ、小林さんが高橋のことを好きなんだったら告白するなりなんなりするかな。せっかくあいつに彼女居ないって教えてあげたんだから、後は勝手にするでしょ。と他人事のように笑う。とりあえず、明日は日曜だし後のことはその時考えればいいや。と放棄する。
高橋は鈍いからな〜。ちゃんと告白しないと気付いてもらうまで大変だよ?頑張ってね、小林さん。心の中で勝手にエールを送ると、俺は今日の夕食の買い物をするためにスーパーに行った。その買い物が終わるころには、優希のことも*you*のことも忘れていた。