どうしようもないひと
目の前の男を見ていると、つくづく時の流れは無常だと思わざるを得ないと奈緒は思う。
小柄な体躯に日本人にしては白い肌、色素の薄い髪は光に当たると透けて金色にも見える。薄香の瞳は零れそうなほどに大きく、縁取る睫は震えるほどに長い。
当時の奈緒からしてみればまるで絵本から出てきたお姫様のようで、うっかりそれを口に出して双方の親に笑われたのもいい思い出――なわけがなく、今でもネタにして笑われるたびに、当時の自分を殴って止めたい気分にさせるほどに後悔していた。
けれど当時の奈緒にしてみれば、気が付けば転び、近所の悪がきにちょっかいをかけられては泣いている子供は、守らなくてはいけないお姫様のようなものだった。
何かあるたびに自分が矢面に立ち、ことあるごとに「わたしが守ってあげる」と口癖のように言っていた。
そしてその度に奈緒を見上げて絶大な信頼を浮かべる瞳が幼心にも誇らしかった。
小さくて、可愛らしい子供。その手を奈緒はずっと引いてきた、ずっと守ってきた。
けれど重ねた歳月分、彼等は成長していく。
今では幼い頃の丸い輪郭が削げて完成に近づいているのが見て分かる。
身長も伸び、体つきもそれ相応にしっかりと作られていった。
その結果、奈緒のお姫様は彼女の身長を追い越し、今では見下ろされる始末だ。
性格も月日を重ねるごとに捻くれていき、昔の面影は見る間もない。
奈緒は半眼となり、口をつけていたストローを離した。
「ねえ」
「煩い、少しの間も黙っていることができないのかお前は」
ならわざわざわたしの部屋まで来て勉強などせずに自分の部屋でやりやがれ、という言葉を奈緒は飲み込んだ。
言えばきっと倍返しになってやってくるだろう。悔しいが語彙が乏しい自分では言い返せまい。
黙り込んだ奈緒を見て、向かい合って座っている青年は切れ長の双眸を眇めた。
視線を交わす瞳は、涼やかな、けれど確固たる強い意思を宿した薄香の色。
伏せられた長い睫の上には、整えているようにも見えない、だが自然なままで綺麗な形を保っているように見える眉。その間にある鼻筋は通っていて。肉薄の唇は今は不機嫌そうに歪められていた。
色素の薄い茶の髪が光に透ける。
部活動をやっているせいか、手足は筋肉質で長い。
常盤一真。かつての奈緒のお姫様であり、今ではすくすくと成長し、近隣の女子高生に騒がれるほどの端整な顔立ちをしている青年である。
通う高等学校は県下一番の進学校。
天は二物を与えずというが、目の前の男を見る限りその言葉も怪しいものである。自分より幾つも優れた面を持つ青年を目の前にして、小さなテーブルの向かい側に座った奈緒はぼんやりと考え込んだ。
噂に寄れば、奈緒の通っている高校で一番可愛らしいと評判の女子も一真に熱を上げているのだとか。
奈緒の学校だけではない、一真を見てかっこいいと騒いでいる少女を奈緒は過去に何人も見てきた。
周りより頭一つ分大きく、顔はよく、頭もいいとくれば異性に騒がれる理由も分かる。が、なんとなく悔しい気持ちがあり腹立たしい。
ついでに普段の何事にも自分には関係ないといった、すました顔も気に喰わない。
「昔は泣き虫だったくせに」
「……なにか言ったか?」
「なーんにも言ってないわよ」
面白くなくなり顔を横へと向け視線を逸らした奈緒は、だからこそ彼女を見て瞳を揺らがせた一真を見ることはなかった。
*
女の子よりも可愛らしい顔が原因だったのか、奈緒の幼馴染は幼い頃よく近隣の子供たちに泣かされていた。
やーい女男、とからかわれ泣くたびに一真が助けを求めるのは奈緒で、いじめられているのを見るたびに奈緒は近所の子供たちと喧嘩をした。
喧嘩の果てに奈緒が勝ち、2人で家へ帰るために歩く。その時にも一真はよく泣いていた。
「ごめんね。奈緒ちゃん痛いよね、奈緒ちゃんしんじゃったらどうしよう」
奈緒が喧嘩で出来た傷を見るたびに両目を潤ませる一真に、どう対応していいかわからず奈緒は困ったように眉根を寄せる。
それを見て泣く寸前まで顔を歪める一真に、奈緒は慌てた。
泣かれると、どうしていいのかが分からない。誰かに泣かれるのは苦手で、更にそれが一真なら余計に嫌だった。
なぜ一真なら余計に嫌なのか。明確に言葉に表すことは出来なかったが、強いてあげるならば「一真だから」と奈緒は思う。一真だから。お姫様のように可愛い幼馴染には、いつでも笑っていてほしかった。
繋いでいた手を強く握り締めて、奈緒は口を開いた。
「だいじょうぶ。わたしは強いからこんな傷じゃしなないよ」
「……ほんとう?」
「本当! それにわたしは強いから、一真のこともわたしが守ってあげる」
恐る恐るといった様子で顔を上げた幼馴染に、奈緒は力強い笑みを浮かべた。
「一真がいじめられてたら、わたしがぜったいに守ってあげる。ずっと守ってあげる。だから泣かないで」
この時に奈緒は決心した。強くなって、喧嘩をしても怪我など作らないほどに強くなればいい。そうすればこの幼馴染は泣かずに笑ってくれるだろうから。
女の子としては親に嘆かれてしまいそうな言葉だったが、その時の奈緒は真剣に幼馴染を守ることを考えていた。
快活に笑っている奈緒を見て、一真の唇が三日月を形づくる。瞳は僅かに細まる。ほっぺたを紅くして、そうしてこの幼馴染は奈緒の好きな笑みを浮かべるのだ。
「ありがとう、奈緒ちゃん」
幼馴染が薄香の瞳に絶大な信頼を浮かべる。
その相手が自分だと言う事実に誇らしくなり、じわりと奈緒の笑みが深まった。
*
それから奈緒は、幼稚園、小学校と一真の手を引き続けた。
一真をいじめるならば同級生だろうが上級生だろうが喧嘩をした。
勝つたびに一真はすごいすごいと我がことのように喜び、そのたびにまっすぐな笑顔を向けてきた。
ずっと変わらないだろうと奈緒は思っていた。
この笑顔も、尊敬の眼差しを受ける自分も。
自分はずっとこのお姫様みたいな幼馴染を守っていくのだと、理由もなくそう思っていた。
それが変わったのは、中学2年生。
ちょうど、奈緒の身長を一真が追い抜かした頃だった。
繋いでいた手を一方的に離し、「俺のことは俺がやる」と宣言をした。
今まで自分のことを僕と言っていた一真の変化に驚き動けなかった奈緒を余所に、彼は次々と変わっていった。
それまでは平均的だった成績が跳ね上がり、常に学年一位を取るようになった。
部活動は文化部からバスケ部へと転部し、生憎そちら方面では芽が出なかったが体格はよくなった。
口調も穏やかなものから乱雑なものへと変わった。
昔の一真を知る者は彼の変化に皆驚いたが、次第に受け入れていった。
唯一、変化に対応しきれなかった奈緒を置いてけぼりにして。
変わった一真との距離感を図りかねていた奈緒だったが、中学を卒業し、一真は県下一位の進学校へ進学し、奈緒自身はそれなりの学校へ進学したことでそれも考えなくてすむようになるだろうと思っていた。
実際に一真が変わってからほとんど関わることのなくなった2人である。
互いの家が隣通しのため、朝に家を出る時間帯が合えば顔を見合わせるが、それだけだ。昔のように会話をすることもほぼなくなり、互いの家を行き来することもなくなった。
だからこそこれ以上関わる気のなかった奈緒だが、何故か今度は一真が時折奈緒の家へ来るようになった。
元々2人が幼馴染で、仲の良かったことを知っている奈緒の母親である。
一真が来るようになったのを見て「仲直りしたのね。一真君に許してもらえてよかったじゃない奈緒」とのんきに笑っていたが、奈緒からしてみれば喧嘩をした覚えも仲直りをした覚えもない。
ついでにいえば、一真に許してもらうことなど1つとしてない。
ある日、奈緒は台所で料理をしている母親の背に問いかけたことがある。
「……なんで、わたしがあいつに怒られたって思うの」
「あら、昔の一真君があんたに何かしたというと考える方がおかしいわよ。一真君たらいつもあんたの後ろをひよこみたいについて回って、あんたのやることなすこと全部従っていたじゃない。そんな子があんたを怒らせるなんて考えられないわよ。むしろあんたが何かしてとうとうあの我慢強い一真君を怒らせたって言う方が信憑性があるわ」
母親の言葉に、奈緒は押し黙った。
そのまま座っていた椅子の背もたれに背中を預け、唸りだした。
何もせず唸っているだけの娘に、「暇なら手伝いなさい」とお玉が飛んできたのはご愛嬌である。
昔の一真への評価はおおむねこのようなものが大半である。
その一真がどうしてああも変わってしまったのか、奈緒にはいまだに分からなかった。
一真自身に聞けば答えてくれるのかもしれないが、奈緒は彼を前に足踏みしていた。
しかも最初に聞けなかった分、後から聞こうとすれば余計に聞き辛くなってしまった。
しかも奈緒の部屋でなにをしているのかといえば、特筆すべきことはなにもしていない。
勉強道具を持ってきて勉強をしているときもあれば、一真を姉以上に慕っている奈緒の弟が乱入してきて、一真と2人して横に並んでテレビゲームをしているときもある。
ちなみに弟に何故自分の部屋で一真とゲームをしないのか聞いてみれば、妙に冷めた表情で「ねーちゃん、それマジで聞いてる?」と逆に聞かれて以来、奈緒は弟に聞けず仕舞いだった。
勉強をしているときには一真にはなにも言われていないが、いたたまれなくなった奈緒も同じように勉強をするときがあり、それが原因か奈緒の成績は急上昇をみせた。
当然ながら奈緒の母親は自分の娘に勉強をさせてくれる一真を歓迎するようになり、奈緒が部屋に入れないでと言っても聞かず、帰ってくれば一真が先に部屋にいることがあった。
年頃の娘のプライバシーを考えないのかと聞けば、「あんたが年頃ねえ」と鼻で笑われて以来、奈緒は母親に訴えることが無駄だと知り止めた。
総じて奈緒の家族は、奈緒には厳しく、その反面一真には甘いと奈緒はふてくされた。
何を考えているのか奈緒の部屋へ足繁く通う一真。
彼へどのような態度で接すればいいのか分からない奈緒。
半年が経とうとも変わらず妙な緊張感の漂う奈緒の部屋に、今日の一真は勉強道具を持ってやってきた。
一真が来た当初はベッドに寝転び雑誌を読んでいた奈緒だが、それも飽きると今度は携帯を弄り始めた。
元来飽きっぽい性格の奈緒はそれもすぐに飽き、自分以外に唯一同じ空間にいる一真をこっそりと見た。
奈緒の部屋に来てからずっと同じ姿勢で部屋の真ん中のテーブルに座り続けている相手に、本当に自分と同じ人間なのだろうか一向に同じ体勢で腰は痛くならないのだろうかと半ば感心半ば呆れを浮かべながら、彼女はテーブルまで移動する。
そこに置かれていた自分用のジュースを拝借してストローに口をつけながら、目の前の青年を眺める。
記憶の中のお姫様とは随分趣きの変わった、自分と比べれば男のくせにやたらと整った顔を見て、内心で時の流れの無常さを嘆いた。
*
そこで、冒頭に繋がる。
視線を逸らした奈緒は、窓の外へと視線を向けながら双眸を眇めた。
右ひじをテーブルへと乗せ、てのひらに顎を乗せる。
半年も経てば、なんだかんだと言いつつ、一真が部屋にいること自体には慣れていた。
ただし未だに一真に対しどのように接すればいいか分からないため、妙な緊張感は残ったままだったが。
それを弟に言えば、弟は呆れながらも「ねーちゃん、一真兄ちゃんは男なんだよ」と言ってきたが、奈緒にしてみれば一真が性別男性なのは当然だ。伊達に昔から幼馴染をやってきてはいない。本当に小さい頃は、親にいっしょくたに風呂に入れられたこともあり、互いの裸を見たこともある。女でないのだから男だろう。そう告げれば、頭を抱えていた弟は結局何が言いたかったのか。奈緒には未だに分からなかった。
声を掛ければ生意気ながらも返答はあるし、別段嫌がらせをされたこともない。
暇なのだろうかと思うが、それはないと端から否定する。
本人からは聞かされていないが、母親伝手に忙しいことは聞いていた。
学校ではことあるごとに小テストが実施され気が抜けず、部活動では上級生から扱かれ帰る頃にはくたくたの様子を見せているらしい。更には大学受験を見据えた予備校通い。
奈緒からしてみれば、聞くだけでげんなりとする話である。
ならば、と奈緒は考える。ない時間を割いてまでここに来る理由があるのだろう。
思考を巡らせ、しばらくの間考え込んでいると、唐突に答えは思い浮かんだ。
視線を一真へと移せば、相変わらず勉強をしている姿があった。
顔を伏せているため、長い睫が僅かに震えているのが見える。
答えが見つかると、今まで腹立たしく思えた男前な面も途端にかわいく見えるのだから不思議だ。
にやにやとしたしまりのない笑みを浮かべ始めた奈緒を見て、一真が気持ち悪そうに顔を歪めているがそれも気にしなかった。
要は仲直りがしたいのだろう。
けれど素直でない一真から口には出せず、仲直りをしたいと行動に表すべく奈緒の部屋で来ている、と。
そう思えば、生意気にはなってしまったけれどもかわいいお姫様でもあり子分であった幼馴染の願いを聞かないわけにはいかないだろう。
答えが思い浮かぶと、もう奈緒にはそれ以外の答えはない気がしてきた。
半年間疑問だった問題が解決できたことに、奈緒の気分は今の空と同じく晴れやかになる。
――それは八割方間違っているものだと、親切にも指摘してくれる相手は当然ながらいなかった。
悩みのなくなった奈緒は、晴れやかな気分のまま自分のベッドへと潜り込み寝てしまった。
あんまりにも彼女自身の心から思うが侭に行動している奈緒に、一真は勉強をしている手を休め、呆れたように溜息を零した。
こうまで男として意識されていない事実に、嘆けばいいのか、笑えばいいのか。
奈緒の弟辺りに知られたら、確実に可哀想なものを見るような目で見られるだろう。
わざとかと疑ってしまいそうなほどに鈍い姉と違い、彼女の弟は聡かった。
いや、彼女や彼の家族全員に知られているのだから、一真の行動は分かりやすいのだろう。それでも気付かない彼女が、人一倍どころか人より何倍も鈍いだけで。
身体を動かせば、しばらくの間動かしていなかったせいだろう、体の節々が鳴った。
立ち上がり、一真は奈緒が寝ているベッドの端に腰をかける。
黒髪に手を差し込み、しばらくの間その感触を楽しむ。
「……あんまり無防備に寝ていると、襲うぞ」
呟きに返される言葉はなく、一真は苦笑を零した。
強くなろうとしたのは、自分より弱いものがそこにいたからだ。
ずっと一真のことを守ってくれた幼馴染。その背は頼もしく、同い年ながらもまるで姉のようだと感じていた。
それが、奈緒の背に追いついたとき違うのだと、自分と比べてその余りにも華奢な身体に衝撃を受けた。
そしてその小さな背に――包み隠さず率直に言えば、欲情した。
そんな自分が信じられなくて、自立という言葉を盾にして奈緒から逃げた。
けれど、それはさらに強い感情を生む結果となる。
考えるのを止め、自ら蓋をした感情だった。
だが時間が経てば経つほどに落ち着くと思っていたそれは、気が付けば一真の中で更に大きく成長していた。
奈緒を思い出すだけで胸の内は熱くなり、会えない寂しさは積もり積もった。
その感情をどう呼べばいいのか、一真は知りたくなどなかった。
それでも、砂に染み込んでいく水のように、じわりじわりとゆっくり、段々とその存在を主張していくのだ。
傍にいたい。笑う顔を見たい、悲しむ顔も見たい、困った顔も見たい、怒る顔ですら見たい。
たくさんの奈緒の姿を見たい。昔と違うのかもしれないし、今も同じなのかもしれない。それにすら心が躍った。
気付けば加速していくその感情に、一真は心の中で白旗を揚げた。
いい加減に気付かなければいけなかった。
それは愛しいと呼ぶ感情だと、知らなければいけなかった。
今も戸惑う気持ちもある。それは態度に出ていて、奈緒を戸惑わせているだろうことも知っている。
今まで幼馴染としてやってきたのだ。奈緒もそう思っているだろうし、一真が奈緒を想うように、同じように想ってくれているとは流石にそこまで都合よくは思っていない。
そもそもあのコントかと思わせるほどに鈍い奈緒のことである。
先程も何か閃いたようだったが、一真の感情に気付いたわけではないだろう。
奈緒だけをひたすらに見てきたのだ、それくらいは分かった。
状況は決していいとはいえない。
奈緒がこの感情に気付けば、離れるかもしれない。
それでもこの大きくなった感情をなくすことなど出来そうもない。
手の甲、そしてその指先で頬に触れ、柔らかなそこを軽く押した。
「好きだ」
奈緒の仕草一つ一つに心臓が跳ねる。
僅かに揺れる睫も、薄く開いた唇も、満足げな表情でベッドで丸まっているその姿でさえも。
一瞬、息が出来なくなる。
「好きだよ、奈緒」
どうしようもないほどに末期だ。
厄介だと思いつつも、それさえも幸せだと感じてしまうのだから。もう、完全にまいっているのだろう。彼女に。
*
一真が部屋から出て行った後。
幼馴染の気配がしなくなってから、奈緒は勢いよくベッドから飛び起きた。
その顔は耳まで真っ赤に染まっていた。
「へ?」
先程、なにやら幼馴染はとんでもないことを言い捨てていかなかっただろうか。
夢だろうと慌てつつも、それは違うと心の隅で冷静に思う。
彼が触れた頬の感触が、未だに残っているのだ。
これで嘘だとは思えなかった。
「え?」
好きだ、と一真は言った。
「好きだよ、奈緒」と。
奈緒は自分だ。
この場にいる『奈緒』は、自分以外にありえない。
ならばあれは自分に言われた言葉なのだと思えば、頬に熱が集まる。
寝たふりなんかしなければよかった。
正確には寝たふりではなく、まどろみの中にいただけだった。
半醒半睡の状態は気持ちがよく、なかなか起きようという気持ちになれなかった。
それが原因で、とんでもないことを聞いてしまった気がする。
「……え?」
混乱している奈緒は、無意識に自分の耳へと手を置いた。
どうしようと頭の中では混乱しているのに。
それでも、一真が最後に呼んだ自分の名前が何度も何度も耳の奥でこだまして。それが心地よく感じて、どうしようもなかった。
お付き合いくださり、ありがとうございました。




