表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奇人姫の鬼食い役  作者: 福島んのじ
雪兎の削り氷
PR
7/25

序、雪兎の削り氷

 ――あとは器量(きりょう)だけ良ければ。


 何度も聞いた言葉だ。

 真面目、優しい、穏やかな性格、教養もある。だが、見目だけが良くない。

 容姿が醜いことなんて、自分が一番わかっている。どれだけ中身を磨いたところで変わらないそれが大嫌いだった。命を絶つことも考えた。

 しかしあるとき、そんな環境が好転し始めるのだ。




 向こうの親が決めた結婚だった。

 やって来た女性はそれはもう美人で、こんな人が自分の嫁になるのか、と胸が高鳴ったのを覚えている。

 だがそれと同時に、可哀そうな人だと思った。こんな醜男(ぶおとこ)の元へ嫁がされるなんて。

 だから、彼女には触れなかった。

 そうしてしばらく月日が経ったころ、驚くことが起きた。

 彼女の方から指に触れてきたのだ。白魚のような細指でこちらの手に絡みつくその様は、例えるなら白蛇のようだと思った。


「あなたは、ほんの少しも(わたくし)に触れてくださらないのですね」


 春を告げる小鳥のように愛らしい声。それが耳朶を打ったとき、息することさえ忘れた。

 ようやく伝えられたのは、君が嫌がると思って、という他責思考な言葉だった。なんて情けない男だ、と自分をここまで責めた日はない。

 彼女は心外そうな顔をして、こちらを見つめた。


「嫌だったら、もうとっくに逃げ出しています。私には足があるのですから」


 ――でも、こんな面をした男に触れられるのは嫌だろう?


 狼狽してそう言った自分に、彼女はため息をこぼした。


「私のことを思って今まで触れずにいてくれたことはわかっております。しかし、それも今日で終わりにしましょう。……そのお顔はたしかに美しいとは言えないかもしれませんが、優しい性格の方に持っていかれてしまった故です」


 それに、と彼女は言葉を続ける。


「妻の私は、その顔ごとあなたのことを好いております。それだけではいけない理由がおありで?」


 今までの呪縛が解かれたように、身体が軽くなった気がした。

 生きてきて良かったと思う反面、死ぬなら今がいいと思った。

 死とは、とまること。この場面を切り取り、保存させておくこと。

 

 ――誰か、こんなにも幸せな男を殺してくれ。


 心の底から、そう思った。

この度は本作「奇人姫の鬼食い役」を読んで下さり誠にありがとうございます!

面白かった、次も読もうかな、と思ってくださった方、ぜひブックマークや評価をお願いします。

とても励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ