Count 5:Are you happy ?
「みなさーんっ! 幸せですかーーっ!?」
「「「「しあわせでーすっ!!」」」」
登校途中の駅前で、大きな声を張り上げている集団を目にした。
最近よく目にする≪AI救済世界≫とかいう団体だ。
「まったく、朝からよくやるよ……って、げ」
その集団の数人がこっちに向かって寄ってくる。また宗教勧誘か……。
あしらうのは慣れてるけど、面倒臭い……。
そう思っていたら、背後から駆け足のサラリーマンが追い抜こうと間に入り込んできた。そして案の定、やつらに捕まった。
明らかに急ぎ足だったけど、運が悪かったな。
「ちょっと失礼します。あなたは今、幸せですか?」
「どいてくれ、急いでるんだ!」
あ……。
サラリーマンがそう言った瞬間、周囲の喧騒がピタリと止まった気がした。
この人、まさか≪AI救済世界≫のことを知らないのか?
普通なら問題にならない言葉でも、こいつらはあげつらって『社会適格性維持法』の違反者に仕立て上げてくるぞ。
「あなた、幸せじゃないんですか? なぜ幸せではないんですか? AIさまの管理する世界は、こんなにも素晴らしいのに」
「いや、すまない……。会社に遅刻しそうで……」
「遅刻? なぜ?」「寝坊?」「そんなことでAIさまの完璧な世界を乱そうと?」「だから幸せじゃない?」「AIさまの世界は、幸せじゃなきゃいけないんだよ」
「いやあの……夕べは、遅くまで子供の看病を……」
口々に糾弾され、サラリーマンが言い訳をするが……手遅れだ。
きっと、もう彼らは止まらない。
その推測は、正しかった。
「異端者」「異端者だ」「AIさまの世界に逆らう愚か者」「AIさまの世界には、いてはいけない」「排除」「そうだ」「排除」「排除」
「「「「排除排除排除排除排除っ!!!!」」」」
集団の1人が、サラリーマンの顔面を殴った。続いて羽交い絞めにされ、腹を殴られる。
数人から殴られ崩れ落ちた後は四方八方から蹴られる。蹴られる蹴られる……。
確認する気もないけれど、たぶんあの人は『社会適格性維持法』に違反した扱いになったんだろうな。
社会に不適格な人間は、人権を剝奪される。
もう、視界からは彼がどうなったのかを確認することはできなかった。
まぁ僕には関係ないし、どうでもいいけど。
「おっと、急がないと学校に遅れちまう」
彼らから視線と意識を切り、僕は学校へと向かって歩き出した。
今日の購買のパンは、何にしようかな?




