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第一話 プロローグ「先代の大恋愛」

よろしくお願いいたします。

 精霊界とつながるこの世界。古くから人間は精霊の霊力を、精霊は人間の知恵と魔力をお互い必要としながら生きてきた。

 

 そんな人間界の西の方に位置する聖オデュッセイア帝国。最も精霊への信仰が厚い国。建国当時から代々精霊と共存してきた。そんな国に伝わる文化「聖女姫セインテス」。皇族女性の中から精霊との懸け橋となる人間が占いで選ばれる。聖女姫セインテスの任期は十五年。一度聖女姫セインテスとなると、一生神殿で慎ましく暮らしていくことが求められる。たとえ既婚女性でも離縁し、恋愛はできず、自由もない。聖女姫セインテスとなった瞬間、その女性は精霊の化身となるのだ。精霊との交流は、一人の尊い女性を犠牲として成り立っている。それは、長年皇家の秘密だった。

 

 第二十五代目皇帝アリオンがまだ皇太子で、たったの十八だった時。一人の精霊が宮殿へ迷いこんだ。アリオンとその精霊、プシュケはバラ園で偶然合い、お互い恋に落ちた。アリオンはすぐにプシュケを城で匿った。二か月ほどしてプシュケに結婚しようと言ったアリオンだったが、プシュケは一度精霊界に帰り、父に結婚の許可を取らなくてはならない、と言う。アリオンは泣く泣くプシュケを送り出した。


 それからプシュケが帰って来るまで、五年の歳月を有した。アリオンはずっとプシュケを待っていた。しかし、アリオンの父や周りはそうではない。アリオンを従妹のメルポルネと婚約させ、婚約式を行った。その最中に、プシュケが戻ってきた。太陽の色に光り輝く馬車に乗って。精霊たちの空飛ぶ行列の中心で、花嫁衣裳を着て戻ってきたのだ。しかも彼女はアリオンにそっくりな小さな男の子を連れていた。行列は婚約式会場の空いた扉を潜り、長い中心の通路で止まった。そこは、不服そうなアリオンと幸福に満ち足りたメルポルネが五分前に歩いた通路で。

「アリオン様、」

 プシュケは言った。

「わたくしは精霊王の娘、父の許可を取ってまいりました。アリオン様のこともずっと見ておりました。父に許可をとったら懐妊がわかり、この子が世界間を移動できる年齢になるまで、精霊界にとどまっておりました。父は聖オデュッセイア帝国との強い関係をお望みです。どうぞわたくしを花嫁にお迎えくださいませ」

 そして彼女は精霊王の証である印が押された書状を彼に渡した。そこには、『第五百四代目精霊王ゼウスの七女プシュケと、聖オデュッセイア帝国第二十四代皇帝バルトロメオの長男アリオンの婚姻を認める。また、プシュケの息子アリステオは皇太子アリオンの息子である』、と書かれていた。アリオンはプシュケと自分の4歳の息子、アリステオを抱き上げ宣言した。

「私は従妹のメルポルネ・ディ・ニアルコスでは無く、精霊王の王女、プシュケを正妃として迎える!そして、アリステオを私の長男と認める!」

「アリオン様、良いのですね、嬉しいです」

「おとーさま、よろしくおねらいいたしましゅ」

 俗に言う婚約破棄だ。しかも婚約してまだ一、二分の。

 本来だったら王や側近たちが彼を止めただろう。しかし、アリオンの相手、プシュケは精霊王の娘。会場にいた皆がプシュケのほうがアリオンに相応しく、国にとっても良いと考えた。

「我、聖オデュッセイア帝国皇帝、バルトロメオは長男、アリオンと精霊王の七女、プシュケの婚姻を認める」

 本来なら、『我、聖オデュッセイア帝国皇帝、バルトロメオは長男、アリオンとニアルコス公爵の三女、メルポルネの婚姻を認める』だったはずなのだ。しかし、会場は喜びのオーラで満たされていた。ニアルコス公爵を除いて。

 聖オデュッセイア帝国の皇室では、婚約式を、結婚式と同じくらい盛大に行う。そして、この場合、悲しみに満ちたメルポルネは退場させられ、その場を使ってアリオンとプシュケの結婚式が行われることとなった。

 

 メルポルネが婚約破棄されてしまったという記事を読み、国民は驚いたが、そのすぐ後に続いた精霊の王女、絶世の美女プシュケと我らが皇太子アリオンが結婚したというニュースに驚き喜び、メルポルネのことなど忘れてしまった。


 プシュケは、わずか四か月で懐妊し、また国民たち、そして最愛のアリオンとアリステオを喜ばせた。


 行き場を無くしたメルポルネはアリオンの側妃、皇太子のスペアを生む存在として娶られ、皇太子妃の仕事をこなす役割となった。そんな彼女も、娶られて五か月で懐妊した。


 プシュケは、美しい双子の女児を産んだ。薄い金髪で、グランディディエイトの瞳を持つ長女には月の精霊、セレーネの名を。透き通るような桜色の髪の毛で、アイオライトの瞳を持つ自分とそっくりな次女には虹の精霊、イーリスの名を。


 名付けが終わると、プシュケは儚くなってしまった。もともと体の弱かったプシュケは慣れない環境で出産し、熱を拗らせて亡くなった。アリオンは十日間部屋に引きこもり、国民も皆が悲しんだ。


 国葬が終わった頃に出産したのがメルポルネ。カリストという茶髪でくりくりの青い眼を持つ可愛らしい皇女が生まれた。彼女はアリオンに似ておらず、とても可愛らしく、そして生まれた時期のこともあってアリオンに毛嫌いされていた。宮殿ではあまり良くない扱いを受けていた。


 プシュケが亡くなり三年後、聖女姫を務めていたい爵令嬢の任期が切れた。占いによって次代の聖女姫に選ばれたのはなんとメルポルネだった。そうして彼女はカリストと引き離されて、神殿へ向かった。カリストは、彼女の身を案じた祖父、ニアルコス公爵によって引き取られていった。公爵がとても大事に育てているという。


 アリオンは后を娶ることを周りから要求され、プシュケとよく似ていて、彼女の侍女として人間界に来た穏やかな気質のヘスティアと再婚した。燃えるような恋愛ではないが、皇子と皇女が一人づつ生まれ、アリオンもプシュケ喪失の痛みから立ち直りつつあり、静かな家庭を築いていっていると言う。


 プシュケが亡くなって十年後、バルトロメオが亡くなり、アリオンは無事皇帝となった。


 そんな彼が溺愛している人、そして憎悪している人が一人づつ居た。

ありがとうございました。

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