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ボクが、歳下の君においつけなかった訳

作者: 遊月丸
掲載日:2025/12/26

鏡の中の僕は、まだ十四歳のまま止まった姿を写しだす。


声変わりも、髭も、背の伸びも、ぜんぶ訪れなかった。身体も少年体型のままだ。

カルマン症候群という名前の病が、僕の時間を途中で置き去りにした。


  

大学に通っていると、誰もが驚く!子どもが兄の代わりに来たのかと、笑われるたび、胸の奥が少しだけざらつく。

 

それでも僕は、イケメンなのが幸いしたのか、よほどの人手不足なのか、流行ショップの店員補助としてアルバイトしている。

服をたたみ、マネキンの位置を直す!

まるで世界のどこにも属していないような時間を過ごしていた。



店のガラスの扉が軽い音を立てて開いた。 夏の風といっしょに、ひとりの少女が入ってきた。


白いワンピース。

たぶん高校生くらい。

だけど、その目だけが、大人のように澄んでいた。


「これ、似合うと思う?」


彼女が手に取ったTシャツは、青い空の色をしていた。

その声を聞いた瞬間、胸の奥で何かが跳ねた。

止まっていたはずの心臓が、ゆっくりと、確かに動き出した。


僕の世界が少しだけ回りはじめた瞬間だった。


マキと出会ってから、店に来る回数が少しずつ増えた。

買い物というより、僕に会いに来ているのがわかった。

そのたびに、胸の奥がくすぐったくなる。


「今度、遊びに行こうよ」

マキがそう言ったとき、僕は息をのんだ。

中学生の彼女と、21歳の僕。

けれど、見た目は同じくらい——。

誰も、僕が大学生だなんて思わないだろう



その日、映画館に行った。

ポップコーンの甘い匂い。

薄暗い館内で、マキの肩が僕の腕にふれた。

心臓が痛いほど鳴った。

それなのに、僕は何も言えなかった。


「ねえ、しょうまくんっていくつなの?」

 映画が終わったあと、マキが小さな声で言った。



 嘘をつけば楽だった。

 でも、

「21歳。でも、病気で、身体が子供のままなんだ」

 


「なんとなく、そんな気がしてた」

マキは握った僕の手首を、引っ張った

僕の身体は、椅子の上でよろけて、隣に座るマキの両方の太ももの間に、顔を埋める格好になる


マキは、僕のシャツをめくりだす

「ぎゃーっ、やめろー」

僕は、必死でマキに掴まれた手をほどこうと抵抗したが、腕力ではかなわななかった。


マキは、僕の手首を掴んだ手をゆるめた。

僕は、急いで椅子から立ち上がった。


「僕、、こういうの、、、」

僕の視界は滲み、言葉にならなかった。



映画館を飛び出した僕が一人で歩く、帰り道

涙がこぼれてきた



あの日以来、マキが店に来ることはなかった。





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