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第十七章:首都進撃

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

クーデター編、最終決戦。

その火蓋が、ついに切られます。

半年の雌伏の時を経て、シンタロウと『影の軍団』が、独裁者の心臓部へと牙を剥く。

ただ一夜の電撃戦。

第十七章『首都進撃』、ご覧ください。

 共和国の首都が、まだ深い眠りについている夜明け前。

 地平線の向こうが、わずかに白み始めた頃。


 三千の影が、音もなくその城壁へと到達していた。


「……予定通り、主力軍出陣の二日後。油断しきっているな」


 首都を見下ろす丘の上で、ルキウスが冷たく呟いた。

 その隣で、俺は静かに息を整える。半年の雌伏の時は、俺から焦りという感情を消し去っていた。


「シンタロウ」

「ああ」

「貴様が突破口を開け。正面の第一城門を、力ずくでこじ開けろ」

「了解した」


 短い命令。俺は、ただ頷くだけだった。


 ルキウスの合図と共に、影の軍団が漆黒の津波となって、城壁へと殺到する。

 城壁の上の哨兵が、俺たちの存在に気づき、慌てて警告の鐘を鳴らし始める。


 だが、遅い。


 俺は、軍団の先頭を駆け抜け、ただ一人、巨大な第一城門へと突進した。

 分厚い木材を鉄で補強した、難攻不落のはずの城門。


 俺は、鍛え上げた全身の力を右拳に集中させ、それを真正面から殴りつけた。


 **ゴオオオオオオオオオッ!**


 轟音。

 それは、雷が落ちたかのような、凄まじい破壊の音だった。


 城門は蝶番ちょうつがいから吹き飛び、巨大な木の葉のように宙を舞い、内側で防御陣形を組もうとしていた兵士たちをまとめて薙ぎ払った。


 突然の悪夢に、首都防衛軍の兵士たちは完全に恐慌状態に陥る。

 そのぽっかりと開いた大穴から、影の軍団が雄叫びを上げて突入した。


「な、なんだ、貴様ら!」

「ば、化け物だ! 門が、門が一撃で……!」


 俺は、混乱する兵士たちには目もくれず、ただひたすらに前へ進む。

 行く手を阻む者があれば、殴り飛ばす。

 盾で壁を作れば、その壁ごと数人をまとめて吹き飛ばす。

 馬に乗った指揮官が突撃してくれば、その馬を正面から受け止め、軽々と投げ飛ばす。


 俺の戦い方は、半年前とはまるで違っていた。

 無駄な動きはなく、最小限の力で、最大限の効果を上げる。


 怒りでも、憎しみでもない。ただ、目的を遂行するための、冷徹な意志だけが俺を動かしていた。


「怯むな! 敵は少数だ! 囲んで殺せ!」


 防衛軍の指揮官が叫ぶが、その声は悲鳴に近かった。


 影の軍団は、一人一人がルキウスによって鍛え上げられた精鋭だ。数では劣っていても、練度では遥かに上回っている。

 そして何より、彼らの先頭には、神話の巨人のような俺がいた。


 兵士たちの士気は、瞬く間に砕け散った。

 鉄槌の砦で生まれた「城壁の英雄」の伝説。それは、ただの噂話ではなかった。

 本物は、噂以上に恐ろしい、破壊の化身だった。


 戦闘は、もはや蹂躙じゅうりんと呼ぶのが正しかった。

 俺たちが首都に突入してから、わずか一時間。


 首都防衛軍は完全に組織としての抵抗力を失い、残るは元老院議事堂を守る、カエサルの直属部隊である近衛兵団だけとなっていた。


 俺たちが議事堂前の広場に到達すると、そこには深紅の鎧に身を包んだ近衛兵団が、最後の防衛線を築いていた。

 彼らは、防衛軍の雑兵とは違う。カエサルに絶対の忠誠を誓う、共和国最強の兵士たちだ。


「……ようやく、骨のある奴らが出てきたか」


 ルキウスが、血に濡れた剣を構える。

 影の軍団も、最後の決戦を前に、息をのむ。


 その時、広場の片隅の闇から、一人の人影が、すっと俺たちの前に現れた。


「シンタロウ様、将軍」


 フードを取ったその顔は、半年ぶりに見る、美しく、そして力強い意志を宿したルナの顔だった。


「ルナ! 無事だったか!」

「はい。全て、計画通りに」


 彼女は、元老院議事堂を指さした。


「カエサルは、中にいます。近衛兵団の主力をここに引きつけ、我々が議事堂へ潜入する手筈も、整えました」


 ルキウスが、頷く。


「ご苦労だった、ルナ。貴様は、この反逆の一番の功労者だ」


 ルキウス、俺、そしてルナ。

 三人の視線が、交錯する。


 長かった。本当に、長かった。だが、ついに俺たちは、ここまでたどり着いた。

 ルキウスが、最後の命令を下す。

 その声は、夜明け前の首都に、静かに、しかしはっきりと響き渡った。


「行くぞ。蛇の首を、刈り取りに」


第十七章 了

第十七章、お読みいただきありがとうございました!

シンタロウと影の軍団の電撃戦、いかがでしたでしょうか。

半年の準備は、この一夜のためにありました。

ついに、独裁官カエサルの喉元に、刃が届きます。

元老院議事堂の奥で、反逆者たちを待ち受ける男、カエサル・リベリウス。

彼は、親友を失った哀しき復讐者なのか。

それとも、権力に溺れたただの暴君か。

次回、全ての元凶との、最終決戦です。

シンタロウ、ルナ、ルキウス。三人の反逆の旅が、ついに一つの終着点を迎えます。

物語は最高潮クライマックスへ!

最後まで、どうか彼らの戦いを見届けてください!

ブックマークやページ下の☆での評価、感想など、皆様の声が聞けると、本当に嬉しいです!

それでは、また次回の更新でお会いしましょう!


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