表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/36

第十六章:決戦前夜

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

シンタロウたちがそれぞれの場所で孤独な戦いを始めてから、半年。

影に潜み、牙を研ぎ続けた者たち。

光の中で、情報を集め続けた少女。

彼らが雌伏の時を経て、ついに動き出します。

これは、決戦の狼煙が上がる、その前夜の物語。

第十六章『決戦前夜』、お楽しみください。


 あれから、半年が過ぎた。


 共和国の歴史の上では、ルキウス・アクィラとその軍団は、東方の荒野で名誉の戦死を遂げたことになっている。

 独裁官カエサルは、目の上のたんこぶが一つ消えたことに満足し、その関心を完全に東方部族連合ガルディアンとの戦争へと向けていた。


 その水面下で、俺たちの本当の戦いは、静かに、しかし着実に進んでいた。


 俺とルキウスが身を寄せた「影の軍団」は、共和国の辺境を転々としながら、その勢力を拡大していた。

 ルキウスは、かつての部下や、カエサルの独裁に不満を持つ者たちと密かに接触。彼のカリスマに引かれ、死んだはずの将軍の下に馳せ参じる兵士は後を絶たなかった。


 わずか十数名だった組織は、半年で三千を超える、少数精鋭の反乱軍へと成長していた。


 その間、俺はひたすらに己を鍛え上げた。


 アキラの助言を元に、魂の燃焼をコントロールする術を身につけ、もはや力に振り回されることはない。

 影の軍団の兵士たちとの模擬戦では、戦術と連携を学んだ。


 今の俺は、もはやただの怪物ではない。ルキウスが振るうことを望んだ、鋭利で、制御された「剣」そのものだった。


     * * *


 一方、その頃。帝都の中心で、ルナもまた、孤独な戦いを続けていた。


 彼女は身分を偽り、貴族の屋敷に仕える侍女として、首都に潜入していた。

 その聡明さと、奴隷時代に培われた気配を消す技術は、彼女を最高の密偵へと変えた。


 彼女は、元老院に残る数少ない良識派――マルクス・カトー議員の孫娘であるリウィアと接触。彼女たちを通じて、首都の内部情報を着実に収集し、俺たちのアジトへ送り続けていた。


 カエサルの動向、軍の配置、元老院の腐敗。

 ルナがもたらす情報は、俺たちの計画にとって、何よりも重要な生命線だった。

 彼女はもはや、守られるだけの奴隷の少女ではなかった。この反逆に、なくてはならない存在となっていた。


 そして、運命の日が訪れる。


 ルナから、一羽の鳥が、極秘の書状を運んできた。


『カエサル、動く。共和国の全主力軍を再編し、「東方報復軍」として、ガルディアンの完全殲滅のため、明日、首都を出陣する』


 その報せを読んだルキウスの目に、鋭い光が宿った。


「……ついに、この時が来たか」


 半年。俺たちが、ただひたすらに待ち続けた、最高の好機。

 カエサルの傲慢さが、自ら首都を空っぽにしてくれる。


 ルキウスは、潜伏していた全軍に召集をかけた。

 その夜、森の中の最終集結地に、三千の「亡霊」たちが集った。


 彼らの顔には、絶望も、恐怖もない。半年間、この日のためだけに牙を研いできた者たちの、静かな熱気が満ちていた。


 松明の光に照らされながら、ルキウスが兵士たちの前に立つ。


「我が同胞、『影の軍団』の兵士たちよ」


 その声は、静かだったが、森の隅々まで響き渡った。


「半年間、よく耐えた。我々は死んだものとして、日陰を歩き続けてきた。だが、それも今宵限りだ」


 ルキウスは、腰の剣を抜き放ち、高々と掲げた。


「獅子は、己の巣穴を空けた。今こそ、腐敗した心臓を抉り出す時だ! 目指すは首都! 独裁官カエサルの首、ただ一つ!」


「「「オオオオオオオオッ!!」」」


 亡霊たちの雄叫びが、夜の森を揺るがした。


 兵士たちが出撃準備を進める中、俺は一人、静かに夜空を見上げていた。

 隣に、ルキウスが音もなく立つ。


「準備はいいか、シンタロウ」

「ああ。そのために、この半年を過ごしてきた」

「そうか」


 ルキウスは、それだけ言うと、フッと珍しく笑みを浮かべた。


「鉄槌の砦で会った頃の、ただの子供はもういない。今の貴様は、一人の戦士だ」

「あんたに言われるとはな」


 短い会話。だが、そこには、確かな信頼があった。


 同じ頃、首都の小さな宿の一室で、ルナは窓の外を見つめていた。

 彼女の役目は終わった。あとは、俺たちが駆けつけるのを待つだけだ。


 彼女は、懐から取り出したお守りを、ぎゅっと握りしめた。

 それは、シンタロウが最初に召喚された時に着ていた学生服の、**第二ボタン**だった。


 やがて、進軍の合図が響く。

 三千の影が、音もなく動き出す。


 目指すは、夜の闇に浮かぶ、共和国の首都。

 俺たちの、長くて短い反逆の夜が、始まろうとしていた。


第十六章 了

第十六章、お読みいただきありがとうございました。

半年にわたる準備期間が終わり、ついに反逆の舞台は整いました。

それぞれの場所で成長を遂げたシンタロウ、ルナ、ルキウス。

三人の歯車が、今、再び噛み合います。

さて、次回……前書きも後書きも、不要かもしれません。

共和国の首都を舞台にした、たった一夜の電撃戦。

シンタロウの規格外の力が、無防備な首都防衛軍に牙を剥きます。

クーデター編、最終決戦、開幕です。

物語の最大の山場となります。ぜひ、彼らの戦いの結末を見届けてください。

ブックマークやページ下の☆での評価、感想などいただけますと、作者は天にも昇る気持ちです!

それでは、また次回の更新でお会いしましょう!


こちらの作品は『異世界に召喚された俺は「壊れた人形」と蔑まれた偽物の賢者らしい。~疲労を知らない肉体と規格外の怪力で、腐った国家の道具にされた僕は、やがて自らの存在を賭けて反逆の剣を振るう~』のダイジェスト版です、内容も微妙に違います、もしご興味が湧きましたら


本作の電子書籍版が、Kindleストアにて販売中です。


ぜひお手にお取りください


▶Kindleストアページ

https://www.amazon.co.jp/dp/B0FT1ZCH5C


今後とも応援のほど、よろしくお願いいたします


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ